【特集】ウクライナ危機の本質と背景

『コンソーシアム・ニュース』より:元米海兵隊将校・国連大量破壊兵器査察官スコット・リター氏の記事翻訳(1)軍備管理かウクライナか?

乗松聡子スコット・リッター(Scott.Ritter)

『コンソーシアム・ニュース』より:元米海兵隊将校・国連大量破壊兵器査察官スコット・リター氏の記事3本連続翻訳
(1)軍備管理かウクライナか?
Scott Ritter: Arms Control or Ukraine? From Consortium News (Japanese Translation with permission)

コンソーシアム・ニュース』は、1980年代「イラン・コントラ」事件を暴くなどで活躍したジャーナリスト、故ロバート・パリー氏が1995 年に設立したインターネット初の調査報道サイトです。『コンソーシアム・ニュース』のAbout ページにある、パリー氏の文から一部を抜粋します。

私が若い記者だった頃、ストーリーにはほとんど常に2つの側面があり、実際はそれ以上であることが多いと教えられた。そして、記者として、そのような別の意見を否定したり、存在しないふりをするのではなく、別の意見を探し出すことが期待されていた。また、真実を知るためには、都合の良い説明をそのまま受け取るのではなく、表面から掘り下げることが必要な場合も多いということも学んだ。 しかし次第に、欧米の主要な報道機関は、ジャーナリズムを違った角度からとらえるようになった。公式見解への疑問を封じることがジャーナリストの奇妙な義務になったのだ。たとえ公式見解に大きな欠陥があり、ほとんど意味をなさない場合でも。たとえ異なる証拠を示す証拠があって、まともなアナリストたちが集団思考に異議を唱えている場合でも。

この20年間を振り返ると、1990年代半ばに感知したこのようなメディアの傾向が逆転したと言いたいところだが、どちらかといえば、悪化している。欧米の主要な報道機関は、でっち上げの「フェイクニュース」や根拠のない「陰謀論」による個別の困難と、公式見解に反対する責任ある分析を混同するようになっている。どちらも同じ釜に入れられ、軽蔑と嘲笑の対象になっている。 例えば、伝説的な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは、2013年のシリア・サリン事件に関するオバマ政権の主張を否定する重要な記事を、米国内の通常の出版社では掲載されないため、London Review of Booksに掲載しなければならなかったという茶番を目の当たりにしています。 今、西側とロシアの冷戦的緊張が再燃し、世界の運命がより繊細になっているにもかかわらず、西側メディアは自ら盲目となり、西側市民も盲目となっています。このジレンマ、すなわち民主主義の危機が、1995年当時よりも今日、コンソーシアム・ニュースの役割をより一層重要なものにしている。

2018年に惜しまれながら亡くなったパリー氏が警告したように、ウクライナ戦争が進行中の今、米国・西側主導の言説に異を唱えるだけで「ロシアのプロパガンダだ」「習近平の手先だ」と政治的左右を問わずレッテルを貼られるようになりました。どれだけ客観的なデータや西側の信頼できるソースを使ったとしてもです。

今回、パリー氏の遺志を受け継ぐ『コンソーシアムニュース』から、元米海兵隊将校・国連の大量破壊兵器査察官のスコット・リター氏の最近の記事3本を、許可を得て翻訳掲載します。リター氏の欧州・ロシアの歴史や政治への深い造詣、軍人としての体験、大量破壊兵器査察官としての専門的知識をふまえたウクライナ戦争の分析は大変貴重なものです。リター氏も、昨年2月以来、西側プラットフォームから排除されてきた数多くの優秀な西側のアナリストの一人です。主要メディアからは排除されていますが、映像サイトやSNSでの活躍ぶりから、彼が代替メディアから引っ張りだこであることがよくわかります。ウクライナ戦争は今こそ外交交渉によって停戦させなければいけません。日本でも識者グループによる停戦交渉を求める声明が出されました。核軍縮の専門家であるリター氏の2本の翻訳記事「軍備管理かウクライナか?」「ウクライナ後の軍備管理」を読めば、西側で言われている「ロシアの核の脅威」というナラティブの背景には米国による約束違反の歴史と欧州での核・ミサイル配備という文脈を捉えることの重要さが浮き彫りになると思います。ウクライナ戦争がこれ以上続くことで核戦争で世界が終末を迎える可能性がますます高まります。3本目の記事「米国の核戦略の行方」では、新START条約が失効する2026年に大統領である人を決める来年の大統領選についてリター氏は「2024年11月にアメリカ国民が誰に投票するかに、人類の未来がかかっている」と言っています。まずは一本目の記事です。(注:翻訳はアップ後に変更することがあります。無断転載は禁止です。)

SCOTT RITTER: Arms Control or Ukraine?
スコット・リター: 軍備管理かウクライナか?

https://consortiumnews.com/2023/02/22/scott-ritter-arms-control-or-ukraine/

2023年2月22日

ロシアがNew STARTを中断する中、ウクライナ戦争が早く終われば、米ロは究極の災厄を回避するために軍備管理の維持に努めることができる。

スコット・リター
コンソーシアムニュース特別寄稿

翻訳:乗松聡子

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乗松聡子 乗松聡子

東京出身、1997年以来カナダ・バンクーバー在住。戦争記憶・歴史的正義・脱植 民地化・反レイシズム等の分野で執筆・講演・教育活動をする「ピース・フィロ ソフィーセンター」(peacephilosophy.com)主宰。「アジア太平洋ジャーナル :ジャパンフォーカス」(apjjf.com)エディター、「平和のための博物館国際ネッ トワーク」(museumsforpeace.org)共同代表。編著書は『沖縄は孤立していない  世界から沖縄への声、声、声』(金曜日、2018年)、Resistant Islands: Okinawa Confronts Japan and the United States (Rowman & Littlefield, 2012/2018)など。

スコット・リッター(Scott.Ritter) スコット・リッター(Scott.Ritter)

元米海兵隊の情報将校で、旧ソビエト連邦で軍備管理条約の実施、ペルシャ湾での砂漠の嵐作戦、イラクでの大量破壊兵器の武装解除の監督に従事した。近著に『Disarmament in the Time of Perestroika』(クラリティ・プレス刊)がある。

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