【連載】川内博史の部屋

【横田一インタビュー】「自公内閣に新型コロナウイルス対策はできない。すぐに政権交代を」立憲民主党・川内博史衆院議員(前)

横田一

感染拡大の防止と社会経済活動の両立はできない

 ――立憲民主党と国民民主党の合流の狙いについてうかがいます。

 川内博史氏(以下、川内) 新型コロナウイルスという未知の感染症は、安倍内閣あるいは自公政権では対応できないことがこの半年の間にはっきりした。これは、多くの国民の皆さまに「そうだね」とおっしゃっていただけると思う。意味のない布マスクの配布とか、国民感情を逆なでするネット動画とか、この感染拡大をしているなかでGOTOキャンペーンをゴリ押しする感覚。経済が大事であれば、感染を抑えなければならない。おそらく、ご自分たちでもどうしたらいいのかわからない状況だったのではないか。だから私たちが代わりにやりますからと。私たちが直接行政権を掌握して、この新型コロナ感染症に向かい合っていくしかない。そのためには受け皿をしっかりとつくらないといけない。その受け皿として、野党がいっぱいあったのならわかりにくいので、1つにしましょうということです。本当にこの緊急事態に対応するために、私どもも動いていたということです。

 ――PCR検査も不十分なままですし、抜本的な対策が自公政権では打てないのでは。

立憲民主党・川内博史衆院議員

 川内 要するに行政は、継続性とか今までやってきたことの正しさにしがみついてしまうので、たとえば政府の骨太方針のなかには感染拡大の防止と社会経済活動の両立が政府方針として掲げられているわけですが、感染拡大の防止と社会経済活動の両立はできないことなのです。社会経済活動というのは、人と人が接触しないと社会経済活動にならない。一方で接触すると(感染)拡大します。二律背反のことを両立させるとなると、それは不可能なことです。その象徴がGOTOキャンペーンなのです。できるわけがないことを無理矢理、国民に押し付けている。

本来なら、感染状況を正確に把握する「徹底した検査をすること」と「社会経済活動」の両立と言うべきです。行政としてできることは何かというと、感染状況を正確に把握するための徹底検査と医療体制の充実と社会経済活動の両立、そして感染対策をします。これが政府の方針として掲げる言葉でなければならない。できないことを掲げたため、後戻りできない。だけど一度言ったことを変えられない。そうすると、政権交代をするしかない。人心を一新するために、受け皿をつくる義務があったのです。

 ――ニューヨークをお手本にした(PCR検査の)世田谷モデルも、政権交代すれば全国規模で実行できる、と。

 川内 すぐにできます。政権交代をしたのだから、今までの方針をまったく違う方針にしますというのは当然なのです。新型コロナウイルスは忖度が効かないのです。これまで霞が関は安倍首相に従順に従い、忖度させてきた。今まで、隠蔽・改竄・嘘、あらゆることを霞ヶ関にさせながら政権をつないできたわけですが、ウイルスは忖度してくれないのです。安倍首相の言うことを聞かないのだから、安倍内閣では無理なのです。そういう意味でも人心を一新する必要があるのです。

「議論するな」と言われても議論をすればいい

 ――今回の合流については、大賛成、と。

 川内 今回の合流で終わることなく、日本共産党まで含めた1つの党にしたいぐらいに思っているのです。本当に危機的状況を変えていくためには、「私たち野党全体で力を合わせますから、こっちに票を入れてください」という構えをつくらないといけない。そのためには、立憲と国民と社・保と無所属の会との合流は第一歩であって、社民とれいわ新選組と共産まで含めて1つの党にして、政権交代を国民の皆さまに問うというくらいの覚悟が我々に求められている。それくらいの緊急事態だと思うのです。

ウイルスは世界の歴史を変えてきました。甘く見てはならないし、この新型コロナウイルスにどう対応するのか、本当に民族の英知を結集して乗り越えていく必要があります。そのためには、平時の政治構造や政党間の違いを乗り越えなければならない。ありとあらゆる違いを乗り越えて、1つになり、この局面は任せてくださいという構えをつくるべきだと思います。

 ――一方、玉木新党がどうなるのかということがあって、玉木代表は「未定」としながらも、「資金的に厳しいため、党本部に居続けることは難しいだろう」と話していて、地方組織については「玉木新党と合流組で棲み分けをしていくだろう」と言っていました。

 川内 結党まで時間もありますし、玉木代表も仲間であり、玉木新党に集う皆さまも仲間ですから、一緒に政権交代を実現しなければならないと思っています。合流しない場合でも会派をともにしたい。玉木新党には選挙に強い方々が残られるでしょうから、そういう意味では党としてどうこうというよりも合流新党と一緒にやっていくという腹を固めていただければ、と思っています。

 ――玉木代表がこだわっていたのが、党首会談で消費税減税と憲法改正に関する議論ができなかったということです。そこがハッキリしないと合流新党で掲げる目玉政策がなく、選挙を戦えないのではないかという主旨のことを言っていましたが。

 川内 新しい合流新党のなかで、消費税減税のことをまとめるための旧国民玉木派のリーダーになっていただきたいと期待しています。

 ――立憲側にも「消費税減税すべきだ」と言う方も少なくない、と。

 川内 いっぱいいますよ。政治的には枝野代表を支持するが、消費税については減税を支持するという議員が立憲側にもたくさんいるわけですから、玉木代表の主張が通る可能性はあるのです。玉木代表の周りにいる方たちが「立憲と合流してもダメだ」というふうに言っているのかもしれないし、そのへんはよくわかりません。ただ、政治は言葉であり、言葉は議論なわけですから、ご自分の信じるところを主張されればいいし、それが多数になれば、その政策は実現するでしょう。それだけのことではないかと私は思いますが。

 ――消費税減税の議論がないことを理由に合流拒否の理由にするのではなく、「合流新党で議論する」という言質を取るくらいで十分だったのではないですか。

 川内 そういうふうに思いますし、枝野代表の言質がなくても党内議論は自由ですから、「議論するな」と言われても議論をすればいいわけです。そんなことは当たり前です。党内で提起をすればいいのです。無冠の帝王ほど強いものはない。玉木代表は合流に向けてリーダーシップを発揮したことで、政治的なポジションを確固とすることができると思います。

 ――「消費税減税を議論すべきだ」という問題提起をしたし、報道でも合流話に関連して消費税減税が注目されたと話題になったことだけを見ても、世論喚起に貢献したことになります。合流して新党でこの議論を進めていけば、玉木代表の株はもっと上がることになりますね。

 川内 私は10年前。当時与党であった旧民主党の時から、「消費税は日本の経済にとってマイナスの税制である。したがって消費税は廃止すべきである」と主張してきました。百歩譲っても「増税はとんでもない」と言って、社会保障と税の一体改革法案、すなわち消費税増税法案に反対して党員資格停止処分を受けました。ようやく皆さんにも主張をしていただけるようになって、そういう意味では玉木代表のようなリーダーに主張していただけるというのは心強いことであり、一緒にやりたいと思っています。

 ――「合流しない方がいい」と言っている側近の人がいるのではないですか。玉木代表と枝野代表が連合事務局長立ち会いの下で面談をしているわけですから、「党首会談をしないから合流しない」というのは理由になりません。党首同士が会った場で「消費税減税の議論をやりましょう」というやりとりをしたと説明をすれば、すんなり合流ができるのではないでしょうか。

 川内 玉木代表の政治行動について評価できる立場にはいませんが、党内で消費税減税を主張すれば、賛同者は増えると思います。繰り返しになりますが、私は政治的には枝野代表を支持するという立場は明確ですが、消費税については減税すべきという立場なのです。

(つづく)

【特別取材班】

☆【横田一インタビュー】「自公内閣に新型コロナウイルス対策はできない。すぐに政権交代を」立憲民主党・川内博史衆院議員(前半)NetIB-NEWS(2020年9月2日)からの転載 https://www.data-max.co.jp/article/37411

 

★Home – 川内博史オフィシャルサイト★
https://www.kawauchi-hiroshi.net/
川内 博史(かわうち ひろし、1961年11月2日  )立憲民主党所属の元衆議院議員(6期)。
鹿児島市出身。ラ・サール中学校・高等学校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。大学在学中は雄弁会に所属。1993年の第40回衆議院議員総選挙に旧鹿児島1区から日本新党公認で出馬したが、当選ラインには遠く及ばず落選となった。その後、新党さきがけを経て、1996年の第41回衆議院議員総選挙では民主党公認で鹿児島1区から出馬。選挙区では落選となったが、比例九州ブロックでは重複立候補を活用して復活、初当選した。
衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員長、衆議院国土交通委員長、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長、衆議院文部科学委員長、ガソリン値下げ隊隊長、民主党本部常任幹事、旧立憲民主党常任幹事会議長などを歴任。
「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」を結成し、会長に就任。普天間飛行場を将来的に国外・県外に移設することを実現するため、テ二アン島を訪問し、連立与党・政府の基本方針の策定を求めて、与党内議員182人の署名を集め当時の鳩山首相に提出した。「原子力発電への依存度について今後どうするべきか」との問題提起に対し、「ゼロにすべき」と回答。福島第一原発1号原子炉建屋に事故後に2回入り、自分自身で視察した状況を撮影して公式ホームページで公開した。安倍内閣による森友学園問題・加計学園問題への対応について、2017年のアンケートで「評価しない」と回答。森友学園問題では2022年9月21日に赤木雅子氏、辻恵弁護士などとともに東京地検特捜部に佐川元局長らの刑事処分を求める告発状を提出した。

横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ