【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第18回 「裏切り者を一人でも減らせ」 政敵の暗殺・誘拐・拷問を指揮・監督するゼレンスキー

寺島隆吉

さて今日から「ゼレンスキーとは誰か」を書くつもりだったのですが、またもやオンライン署名を求める後掲のようなメールが飛び込んできました。そこで、再び予定を変更して、今日は、このメールを取りあげて私見を述べることにします。

というのは、この署名運動は、 「ロシア軍によるウクライナでの戦争犯罪の調査を求めます!」という形で、実質的には、 「ロシア軍が戦争犯罪を犯している」という偽情報を、日本全国に振りまくことになっているからです。

この運動の呼びかけ人が善意で行動していることは疑いありません。しかし善意で行動しているからこそ、その罪は深いとも言えます。なぜなら「地獄への道は善意のバラで敷き詰められている」という有名な箴言があるからです。

それはともかく、届いたメールは次のような内容でした。

ロシア軍によるウクライナでの戦争犯罪の調査を求めます!

ロシア軍がキーウから撤退した際、断じて許されない戦争犯罪と人道に対する罪を犯しました。何百もの一般市民の遺体が集団墓地に捨てられ、あるいは路上に放置されました。多くの遺体は手を縛られたまま銃で撃たれ、拷問や強姦を受けた形跡がありました。

たくさんの子どもや女性と老人が犠牲にあい、中には家族全員が殺害された事例もありました。 これらの犠牲者はどう考えても武装した軍隊と見間違えられるような人々ではありません。

私たちは、ウクライナの民間人の大量虐殺 〈ジェノサイド〉 の事実について、独立した国際調査が行われることを求めます!これらの戦争犯罪は調査され、責任者は処罰を受けるべきです!

上記の文面では、 「ロシア軍がキーウから撤退した際、断じて許されない戦争犯罪と人道に対する罪を犯した」ことになっています。

しかし、このいわゆる「ブチャにおける虐殺事件」は、キエフ政権による「自作自演」である可能性が極めて強いことは、 『ウクライナ問題の正体1』で詳しく書きましたので、ここでは割愛させていただきます。

アメリカが外国を侵略するときに、 「自作自演」で起こした事件を口実にしてきたことは、過去の数々の事例がそれを証拠立てています。最も有名な事例はベトナム戦争に本格的に乗りだしたときの「トンキン湾事件」でしょう。

他にも、キューバのカストロ政権を潰すため、民間旅客機を装った無人機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたように見せかける「ノースウッズ作戦」も極めて有名な事件です(米軍とCIAによる、この作戦を、 幸いにもケネディ大統領は許可しませんでしたが、それがケネディ暗殺の遠因になったと言われています )。

最近の事例では「シリアのアサド政権による化学兵器の使用」というものもあります。

このときはオバマ大統領は「アサド政権が化学兵器を使う可能性がある。それがレッドラインだ」と宣言し、その「予言」 「警告」の通り「アサド政権は化学兵器を使用したから」という理由で、米軍は攻撃を開始しました。

しかし、 「これがレッドラインだ」と言われながら、そのとおりに、むざむざ批判を受けるような行動をとる馬鹿が、この世のどこに存在するのでしょうか。

結局、最近の調査では、いわゆる「ホワイトヘルメット」という自称「医療集団」の自作自演だったことが明らかになっています。実を言うと、この集団は、常にイスラム原理主義組織ISISと一緒に行動していた集団でした。

あとで「ゼレンスキーとは誰か」で詳述する予定ですが、常に米軍とCIAの指導の下で行動しているゼレンスキー大統領が、このような「自作自演」の作戦を考えないはずはありません。

ウクライナ軍と戦えば、圧倒的な軍事力を誇るロシア軍は3日で相手を制圧できると言われていました。その証拠に、以前にも紹介したように、ポール・クレイグ・ロバーツ元財務次官も自分のブログで次のように書いていました。

 

ロシアの軍事力を持ってすれば3日で成し遂げられたことが(プーチンが民間人の殺傷を避
けるという良心的な戦術のため)今や41日目になっている。

NATOによる「ロシアの侵略」というシナリオは初めから決まっており、プーチンの善意は相手側にはロシア軍を無能なものに見せるだけで終わった。

こうして、プーチンによる撤退命令によって、キエフ側の挑発行為を迅速かつ決定的な行動で終わらせるチャンスは失われてしまった。

現在進行中の戦争はプロパガンダ戦争であり、クレムリンはこの点で完全に負けている。クレムリンの心理作戦の能力のなさは、 ロシアの軍事的優位性をほとんど無意味なものにしている。
The Kremlin Never Learns「『クレムリンは学ぶことがないのか』ウクライナ、ブチャのプロパガンダ戦争」( 『翻訳NEWS』2022/04/07)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-872.html

アメリカ政府の元高官が、このようにプーチン大統領を皮肉っていることは、極めて興味深いことですが、いずれにしても次のような事実だけは間違いないようです。

「ロシアの軍事力を持ってすれば3日で成し遂げられたことが(プーチンの民間人の殺傷を避
けるという良心的な戦術のため)今や41日目になっている」。

だからマリウポリ市における戦いでも、 「民間人の殺傷を避けるという良心的な戦術のため」、いまだに製鉄所に立てこもったウクライナ軍の制圧にすら踏み切れないでいるのです。

以前にも書きましたが、 「武器を捨てて降伏すれば命の保証をする」という条件をロシア軍は相手に提示しているのです。が、キエフ政権は「玉砕しろ」の一点張りです。これがアメリカ軍だったら、どう行動していたでしょうか。

それをロバーツ元財務次官(経済学博士)は先のブログで次のように書いています。

 

ワシントンの戦争は冷酷に遂行される。結婚式、葬式、子どものサッカーの試合など、あらゆるものが爆撃され、粉々に吹き飛ばされる。

西側諸国は、すべてを吹き飛ばさない戦争を知らないのだ(彼らにとっては、戦争とはすべてを吹き飛ばす行為なのだ) 。

ロシアの軍事力を持ってすれば3日で成し遂げられたことが(プーチンが民間人の殺傷を避けるという良心的な戦術のため)今や41日目になっている。

上でロバーツ博士は「ワシントンの戦争は冷酷に遂行される」と書いています。これはアフガンやイラクでの戦争の仕方を見ればすぐ分かります。

葬式であれ結婚式であれ、いわゆる「テロリスト」が1人でもいるという疑いがあれば、丸ごと吹き飛ばしてもよいのです。それがアメリカ流の戦争の仕方でした。

ベトナム戦争では「ソンミ村」が丸ごと焼かれ、村民の中にはいわゆる「ベトコン」はひとりもいなくて、いたのは女や子ども・老人ばかりでした。しかも、これは氷山の一角で、似た事件は他にいくつもありました。

米軍による虐殺の現場となったベトナム「ソンミ村」虐殺事件

 

また、機上から枯れ葉剤を散布して、多くのベトナム人を死傷させたことはあまりにも有名です。枯れ葉剤を浴びた女性から次々と奇形児が生まれ、その典型例として、下半身がつながった結合双生児「ベトちゃん・ドクちゃん」が日本でもよく知られています。

私はベトナムを訪ねたとき、ホーチミン市のツーズー病院でドクちゃんに会ったことがあります。奇形児ばかりを集めて世話をする病棟でボランティア活動をしていたグエン・ミー・チャウ女史が案内をしてくれたからです(彼女。は後に私が教えていた教育学部の研究生とし
て訪日することになり、その後、 私の下で修士号をとることになりました )。

先述のように、ロバーツ博士は「西側諸国は、すべてを吹き飛ばさない戦争を知らないのだ」と書いています。その例として先にベトナム戦争をあげましたが、これはイラク戦争でも同じでした。

一番分かりやすい例は、米軍がヘリコプターから地上にいるイラクの民間人を機関銃で狙撃して、その多くを「吹き飛ばした」事件でしょう。この殺された民間人の中には新聞記者も含まれていましたが、後に暴露された動画によれば、米軍兵士らは半ば楽しみながら狙撃していました。

その生々しい動画は、この残酷な事件の隠蔽に我慢できなくなったマニング上等兵によってウィキリークスへと流され、広く世に知られることになりました。が、 何とアメリカは殺した側を罰するのではなく、この映像を流したマニング上等兵を獄に入れたのでした。

そのうえ、内部告発サイト「ウィキリークス」を通じて、この蛮行を世界に知らしめたジュリアン・アサンジは、いまアメリカの意向を受けた英国政府によって、 「イギリスのグアンタナモ」と言われているベルマーシュ刑務所の独房にいます。

これがアメリカ流の戦争の仕方なのです。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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