第18回 「裏切り者を一人でも減らせ」 政敵の暗殺・誘拐・拷問を指揮・監督するゼレンスキー
国際ところがロシア軍の戦争の仕方は、これと真逆でした。だからこそ、 「ロシアの軍事力を持ってすれば3日で成し遂げられたことが(民間人の殺傷を避けるという良心的な戦術のため)今
や41日目になっている」という、ロバーツ博士の嘆きとなりました。
そして4月22日の現在も、マリウポリ市の製鉄所に立てこもっているアゾフ大隊を、ロシア軍は未だに殲滅せず(出来ず?)、ひたすら「銃を捨てて投降するよう」呼びかけているだけなのです。
ロバーツ博士に言わせれば、 「おまえたちはどこまでお人好しなのか」ということになります。次のブログは、そのロバーツ博士の度重なる愚痴・繰り言です(元アメリカ政府の高官が、プーチン大統領に、このような助言とも批判ともつかないようなことを、ブログで述べているのですから、驚きです。)
*Dumbshit Russians?「おまえたちはどこまでお人好しなのか(お目出たいロシア人――プーチン大統領) 」( 『翻訳NEWS』2022/03/21)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-835.html
このようなロシア軍が、どうして「ブチャにおける虐殺事件」を起こすことができるのでしょうか。なぜなら、わざわざ民間人を殺害しても何も得るところがありません。世界の世論を敵に回すだけですから。
しかも、以前のブログで指摘したように、この「ブチャにおける虐殺事件」というのは、プーチンによる撤退命令によって、ロシア軍が撤退した後に起きているのです。
そして、予想どおり、欧米と日本のメディアが「虐殺事件」を大声で騒ぎ立てることに
なりました。
だからこそ、 繰り返しになりますが、ロバーツ博士の次の声となったわけです(太字は寺島)。
こうして、プーチンによる撤退命令によって、キエフ側の挑発行為を迅速かつ決定的な行動で終わらせるチャンスは失われてしまった。
NATOによる「ロシアの侵略」というシナリオは初めから決まっており、プーチンの善意は相手側にはロシア軍を無能なものに見せるだけで終わった。
このように、 「プーチンの善意は相手側にはロシア軍を無能なものに見せるだけで終わった」からこそ、ゼレンスキー政権は、これを次のような大宣伝を繰り広げる口実として使いました。
「ロシア軍は敗北したから撤退した」
「そして敗北の腹癒せとして、去り際に住民を虐殺した」
他方、CIAは、中南米で「死の部隊」なるものを作り出し、虐殺のかぎりを尽くしました。そのことはチョムスキー『アメリカが本当に望んでいること(現代企画室、 1994)』の第2章で詳述されています。
特に、 「磔にされたエルサルバドル」 「虐殺の荒野グアテマラ」という節で書かれている虐殺の凄惨さは、思わず眼を背けたくなるほどの残酷さです。そして、このような虐殺や拷問の方法はイラクやアフガニスタンにおける拷問でも引き継がれました。
なおグアテマラだけにしぼった本として『グアテマラ、虐殺の記憶』(岩波書店、2000)があります。
20万人を超える死者・行方不明者、6,000件をこえる生の証言が暴き出すジェノサイドの真相と傷跡です。
ですから、 「ブチャにおける虐殺事件」を起こしたのは、CIAの指導を受けているウクライナ軍(とりわけ残虐さで知られているアゾフ大隊)ではないか、という疑いが出てくるのも、当然ではないでしょうか。
しかし日本の大手メデ ィアは欧米からの情報を垂れ流すだけですから、ウクライナ軍(とりわけ残虐さで知られているアゾフ大隊)が、ウクライナでどんな行動をとっているのかを知りま
せん。
とは言っても、 実を言うと私も、 次の記事を読むまではその本当の凄惨さを知らなかったのです。
*“One Less Traitor”: Zelensky Oversees Campaign of Assassination, Kidnapping and Torture of Political Opposition「裏切り者を一人でも減らせ」 :ゼレンスキーは、政敵の暗殺、誘拐、拷問といった作戦を指揮・監督していた( 『翻訳NEWS』2022/043/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html
そこで以下では、この論考をもとに、ウクライナで実際、何が進行していたのかを紹介して、この章を閉じることにしたいと思います。
上記の論考は次の7つの小節から成っています。
その小節のタイトルに和訳をつけておきましたから、これを読むだけでも、 欧米の政界では「民主主義の旗手」として持てはやされているゼレンスキー大統領の素顔が見えてくるのではないでしょうか。
(1)Torture and enforced disappearances “common practices” of Ukraine’s SBU(拷問と抹殺はウクライナ保安庁(SBU)の 「常套手段」 )
(2)Kiev officially endorses assassinating Ukrainian mayors for negotiating with Russia(ロシアとの戦闘ではなく交渉を求めるウクライナの市長たちの暗殺を、キエフが公式に支持)
(3)Zelensky outlaws political opposition, authorizes arrest of rivals and war propaganda blitz(ゼレンスキーは政治的反対を非合法化し、ライバルの逮捕と戦争プロパガンダの電撃作戦を許可した)
(4)Under Zelensky’s watch, “the war is being used to kidnap, imprison and even kill opposition members”(ゼレンスキー政権下、 「戦争は、野党勢力の誘拐・投獄・殺害にまで利用されている」 )
(5)Ukraine’s SBU studies torture and assassination from the CIA(ウクライナの保安庁SBUはCIAから拷問と暗殺を学んでいる)
(6)“We will never take Russian soldiers prisoner”: Ukraine’s military flaunts its war crimes( 「ロシア兵を捕虜にすることはない」 。ウクライナ軍、戦争犯罪を誇示)
(7)Ukrainian officials present woman tortured and killed by Azov as victim of Russia(ウクライナ政府、アゾフに拷問され殺された女性をロシアの被害者として紹介)
しかし、ここではそのすべての内容を紹介するゆとりがないので、ゼレンスキー大統領の本性が浮き彫りになるような映像や動画のみに限定して紹介することにします。
ウクライナでは、ロシアとの交渉を求めるウクライナの市長が次々と暗殺されているという実態があります。3月1日、3月3日、3月7日、3月24日と連日、次々と殺され、それは政府黙認の行為なのです。そして現在11人の市長が行方不明です。
そういえば、ロシアとの休戦交渉に臨んだ代表団のうちのひとりデニス・キリーエフが、第1回目の交渉の後、保安庁(SBU)のひとりに、白昼に堂々と射殺されるという事件がありました。
そのときも「ロシアによる暗殺だ」という噂が、まことしやかにささやかれていました。
が、今から考えると、それは停戦を望まないアメリカが、裏でゼレンスキー政権に指導した結果ではなかったのかと、やっと納得できました。
というのは、射殺されたキリーエフは、少しでもロシアの要求を受け入れて交渉を前進させようとしていた人物で、 「ロシア寄り」と見られからだと、あとで分かったからです。
つまり、アメリカもゼレンスキー大統領も、交渉を成立させるよりも、交渉を引き延ばし破棄させることだけを考えていたということです。
かつてソ連を10年間、アフガニスタンという泥沼に引きずり込んで、疲弊させ崩壊させたのと同じ戦略です。だから少しでもロシア寄りと見られた人物は﹁消される﹂運命にあったということです。
というわけで次の事例に移ります。次頁の写真は、3月1日に暗殺されたルガンスク共和国クレミンナ市長の写真です。拷問されたあとに殺されたことが分かります。
この写真を自分のTelegramで公開したウクライナ内務省顧問は、驚いたことに、この暗殺を賞賛して次のように述べているのです。
「ルガンスク州クレミンナ市長、ルガンスク議会の元副議長が殺害されているのが発見された。かくして、ウクライナの裏切り者が1人減った。奴は『人民裁判の法廷』で裁かれたのだ」まさに、 「虐殺の荒野グアテマラ」の言葉をもじっていえば、 「虐殺の荒野ウクライナ」と言うべきかも知れません。
次の写真は逮捕された野党第一党の党首メドベチュク氏の写真です。その顔には殴打された傷
跡がハッキリと見えます。
ゼレンスキーは3月19日の大統領令で、戒厳令を発動し、11の野党を禁止しました。禁止され
た政党は、ウクライナの左翼、社会主義、反NATO勢力のすべてでした。
しかし、アゾフ民族軍団のような公然たるファシスト・ネオナチ政党は、大統領令によって手つかずのままでした。
こうして反対派を一掃すると同時に、ゼレンスキーは前代未聞の国内宣伝活動を命じました。テレビのニュース放送をすべて国営化し、すべてのチャンネルを「United News」という24時間のチャンネルに統合して、 「戦争の真実を伝える」ことにしたのです。
次にゼレンスキーは4月12日、先述のように、主要な政敵であるヴィクトル・メドベチュク氏をウクライナの保安庁(SBU)によって逮捕したことを発表しました。
ウクライナは南東部がロシア語系住民、北西部がウクライナ語系住民と、地域が大きく二分されているのですが、ウクライナ第2の政党「生活のため」の創設者であるメドベチュク氏は、ロシア系住民の事実上の代表者だったのです。
氏は、逮捕される以前の2019年にもアゾフ大隊によって、 「裏切り者」という名で、自宅が襲撃されたり、 2020年には氏の政党「生活のため」の党員が乗ったバスが、やはりアゾフ大隊によって襲撃され、ゴム被覆鋼弾で数人が負傷するという事件がありました。
しかし、このような事件を起こしてもアゾフ大隊は何ら処罰されることがなく、ゼレンスキー大統領はメドベチュク氏が経営する放送局を禁止し、さらに氏自身を逮捕・投獄するという挙に出たわけです。
このような事態を考えると、ゼレンスキー大統領はアゾフ大隊を指揮・監督できず、むしろネオナチの武装集団の言いなりになっているとしか考えられません。
それはともかく、このような弾圧は、かつてのナチスドイツや軍国主義日本を思い出させるものです。にもかかわらず、欧米メディアもバイデン大統領も、ゼレンスキーを「民主主義の旗手」として賞賛しているのです。
現在の時点(4月22日)では、マリウポリ市の製鉄所に立てこもっているアゾフ大隊は、いまだに投降していません。他方、ロシア軍は人道的配慮をして、砲撃すればあっという間に制圧できるはずの相手に、 「3回目の投降チャンス」を与えるとしています。
しかし、このような人道的配慮が通じる相手なのか、考える必要があるかも知れません。
なぜならそのような配慮は相手に時間稼ぎする時間を与え、気が付いたらロシア軍は外国人傭兵によって回りを包囲されていた、ということもありえるからです。
また、このような配慮はロシア軍兵士の士気を削ぐことになりかねません。
ウクライナ軍は「人間の盾」を利用してロシア軍と闘うという戦術をとってきましたから、米軍のようにロケットやミサイルを撃ち込めば済む戦いに(民間人、の被害を防ぐという意味で)ロシア兵に地上戦を強いることになるからです。
こうして必然的にロシア兵からも捕虜や死者が出ることになります。
ロシア軍の方は、 国際法の「戦争法規」に従って捕虜を丁重に扱いますが、キエフ側はそんな
配慮はしません。同じウクライナ人であっても、少しでも「ロシア寄り」だと見れば平気で拷問したり暗殺したりするのですから、ロシア兵捕虜を丁重に扱うはずがありません。
事実、ロシア兵捕虜に対するキエフ側の扱いは実に冷酷・残酷なものです。その典型例
が、「拷問で目玉をくりぬかれたあと、殺された」ロシア人捕虜です。この兵士は、拷問とて
右目をくり抜かれたあと殺されています。しかも、それを誇示するかのように、その映像
をTelegramで皆に配信するという冷酷さなのです。
ですからプーチン大統領は、キエフ側に人道的配慮をするあまりロシア軍兵士に対する人道的配慮を欠く、ということになりかねません。
その結果、ロシア軍兵士の士気が落ちていけば、結果として戦争は長期化し、ソ連がアフガンの泥沼にひきづり込まれて失敗したと同じ道をたどるのではないか。私はそんな心配をしています。
では、そんな状況を打ち破るための何か良い方策はあるかと尋ねられると、私にも妙案があるわけではないのですが、国際世論に次のように訴えることは可能ではないかと思うのです。
「これから*日の*時に製鉄所を砲撃する。もし中に民間人がいて死者が出た場合の人道的責任は、降伏を認めないゼレンスキー大統領にある」
「もし世界が今回のマリウポリ攻撃に人道的配慮を求めるのであれば、それはゼレンスキー大統領に『武器を捨てて投降することを認めろ』という圧力をかけるべきである」
「かつて日本の天皇制軍国主義国家が自分たちの兵士に投降を認めず、 『玉砕』を強制したのと同じ間違いを、キエフ側は犯すべきではない。これは自国民にたいする一種の『戦争犯罪』だとも言えるからである」
(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体2—ゼレンスキーの闇を撃つ—』の第3章から転載)
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国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授