暗殺大国アメリカ―キング暗殺50周年によせて
国際☆百々峰だより(寺島隆吉)2018/04/14 http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-date-20180415.html からの転載記事
カテゴリー:アメリカ理解(2018/04/14)
タグ:キング記念日、ノースウッズ作戦、ウォーレン委員会、「キング殺し」「ケネディ殺し」、リー・ハーヴェイ・オズワルド、ジェームズ・アール・レイ
ケネディ大統領暗殺の下手人とされたオズワルド 暗殺されたマーチン・ルーサー・キング・ジュニア
アメリカは英仏と共に、東部時間13日午後9時(日本時間14日午前10時)、シリアに攻撃を加えました。その口実として使われたのが、またもや「アサド政権が化学兵器を使って民衆を殺している」というものでした。
最初は「毒ガスを使って二重スパイだった元ロシア軍諜報員を殺そうとした」という口実でロシアを悪魔化しようとしたのですが、これは嘘だったことが暴露されそうになった途端に、アメリカは「アサド政権が民衆を殺そうとしている」という口実で戦略を一変させました。
その証拠に、イギリス外務省は「ロシアが毒ガスを使った」とするサイトを削除してしまったばかりでしたし、そもそもシリア領土内で風前の灯火となっているイスラム原理主義勢力を一掃するために今さら化学兵器を使わねばならない理由は全く見当たりません。
またシリア東グータ地区ドゥーマの市民が化学兵器で深刻な被害を受けているという映像も自作自演であったことは、地元市民の証言で明らかになっています。市民によれば、そのような攻撃は一切なかったというのです。
*ドゥーマ化学兵器使用がでっち上げである無数の証拠がある【動画】
https://jp.sputniknews.com/middle_east/201804134779091/
*攻撃されたとされるドゥーマ地区で、化学兵器の痕跡なし
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-38.html (寺島メソッドメソッド翻訳NEWS)
以上の経過を考えると、アメリカが爆撃したとされる場所は「自作自演の11地区」であり、証拠隠滅の作戦ではないかという意見もあります。ところが安倍政権は何の検証もなく、「シリアの化学兵器の使用を許すまじ」と米国政府の決意に支持を表明し、相変わらずの対米従属ぶりを示しました。
いずれにしても、これまでにアメリカが国内・国外でおこなってきた数々の「業績」を見れば、自国民であれば外国の民衆であれ、暗殺・殺害はアメリカの「おはこ」ですから、今度の「アサド政権による化学兵器の使用」というのも、良識あるひとにとっては、「またか」「どれだけ人を殺せば気が済むのか」という思いを禁じ得ないでしょう。
何しろアメリカは国内でもキング牧師やケネディ大統領でさえ暗殺するのですから、まして国外の名もなき民衆は単なる虫けらにしか見えないのではないでしょうか。
それを勇気をもって暴露し証言しているのが、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者でもあったPCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)です。
そこで以下では、PCR氏の鋭い告発を翻訳して紹介します。これは元々「マーティン・ルーサー・キング」という題名だったのですが、内容は、短いながら、のキング暗殺だけでなくケネディ大統領の暗殺や民間航空機の爆殺計画など、アメリカによる謀略にもふれていましたので、「暗殺大国アメリカ」とさせていただきました。
ちなみに、キング牧師が暗殺されたのは1964年4月4日であり、今年はちょうどその50周年に当たります。その意味でも、4月のこの時期に、これを訳出し皆さんに紹介するのは、それなりの意味があるのではないかと考えています。ただしPCR氏の論旨が読者に伝わりやすいように、訳出にあたっては、原文の文順や段落順序を大幅に入れ替えました。御理解いただければ幸いです。
暗殺大国アメリカ――キング、ケネディ、ノースウッズ作戦
http://www.paulcraigroberts.org/2016/01/19/martin-luther-king-paul-craig-roberts/
Paul Craig Roberts、January 19, 2016
アメリカによる全ての偽装攻撃や暗殺と同様、1968年のマーチン・ルーサー・キングの暗殺も隠蔽された。
キングの事件では、犯人だとされたジェームズ・アール・レイは、でっち上げられた身代わりだった。ジョン・F・ケネディ大統領の場合は、オズワルドが、ロバート・ケネディの場合シーハン・シーハンがそうだったのと同様だ。
コレッタ夫人を初めとしてキング家の人々は、証拠に注意を払った他のあらゆる人々と同じく、自分たちが事実を隠蔽され、犯人とされた人物名だけを手渡されたことも気づいていた。
真実を明らかにしようとする長年の取り組みの結果、キング家の人々は、刑事訴訟では勝てないことが分かっていたので、なんとか民事訴訟で証拠を明るみに出そうとした。
その結果、本当の証拠に直面した陪審員団は、一時間しかかからずに、マーチン・ルーサー・キングが政府機関を含んだ陰謀によって殺害されたと結論づけた。
その詳細については、以下の記事に述べられているので、時間のある方は是非とも参照していただきたい。
*MLK ASSASSINATED BY US GOVT: King Family civil trial verdict 「キングはアメリカ政府によって暗殺された:キング家の訴えによる民事裁判の判決」
*Court Decision, U.S. “Government Agencies” Found Guilty in Martin Luther King’s Assassination 「判決、キング暗殺でアメリカの『政府機関員』が有罪だと認められた」
マーチン・ルーサー・キングは、ジョン・F・ケネディ同様、ワシントンの支配者=国家安保体制の被害妄想による犠牲者だった。
キングは当時わずか39歳で、公民権指導者としての立場を確立していた。だがFBIは確信していた。キングは共産主義者とつながっており、彼が率いていた運動は国家安全保障の脅威に発展しかねないと。
当時のアメリカでは、公民権を強調することはアメリカ批判を意味していた。多くの人々が、アメリカ批判と共産主義者の主張を混同していた。アメリカを批判するのは主として共産主義者たちだったからだ。
そしてここに、アメリカの欠点を指摘する日の出の勢いの指導者がいた。キング牧師である。そしてベトナム戦争に対しても反対の声をあげはじめていた。
マーチン・ルーサー・キングの殺害に対するワシントンの対応は、彼の名を冠した国民の祝日「キング牧師記念日」(1月の第3月曜日)を創設することだった。ちなみに、キング牧師の誕生日は1月15日である。
自分の機関員によって殺害された人物を、政府が讃えるということは、誰がキングを殺したかという議論を終わらせ、厄介な問題を処分するのに賢明な方法だった。
ではケネディ大統領の場合は、どうだったのか。暗殺されるに至ったケネディの「罪状」は次のとおりだ。
ケネディは、ライマン・レムニッツァー大将の作成したキューバ政権転覆計画「ノースウッズ作戦」を拒否し、CIAのキューバ侵略計画に反対し、キューバ・ミサイル危機をめぐってソ連と紛争を起こすためのレムニッツァーの計画を拒絶し、統合参謀本部議長としてのレムニッツァーを排除した。そして冷戦を和らげるべくフルシチョフとこっそり交渉した。
こうした結果、「軍安保複合体」の連中はケネディに恨みもち、かつ確信した。ケネディは共産主義に対して甘く、米国にとって安全保障上の脅威になったと。
ここで「ノースウッド・プロジェクト」とい作戦に着目してほしい。この作戦は、アメリカの旅客機を撃墜することだったのだ。その目的は、カストロに責任転嫁してキューバ政府を転覆することだった。搭乗しているアメリカ国民を殺戮しても彼らは平気だったのだ。これがアメリカなのだ。
この最高機密とされていた「ノースウッズ作戦」は、1997年に公表された。ウォーレン委員会によるジョン・F・ケネディ暗殺の調査およびその後の委員会調査が不十分だとして、そのはるか後に設置された「暗殺記録審査委員会」によるものだった。
この作戦計画は、1962年に、統合参謀本部によってケネディ大統領に提出されたもので、ペンタゴンの計画は、アメリカの旅客機を撃墜し、アメリカ国民を殺戮することだった。
その目的は、カストロに責任転嫁して、キューバに政権転覆を実現する侵略のために国民の支持を作り出すことだった。
ケネディ大統領はその報告書を拒否した。
その決断は、「ケネディはいったい共産主義に対して立ち上がる力と信念をもっているのか」という国家安保体制、CIAやペンタゴンのケネディに対する疑念を強めた。
https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Northwoods
ところで、ケネディ暗殺では、シークレット・サービス自体が策謀に引き込まれていた。暗殺場面のフィルムを見ると、警備をするシークレット・サービスの要員が、致命的な銃撃の直前に、大統領の自動車から離れるよう命じられていたことが分かるからだ。
ジョン・F・ケネディを殺害した政府工作員が誰だったのかを、司法長官だった弟のロバート・ケネディは知っていた。だからロバート・ケネディは、次期大統領に立候補して、殺害された兄の計画を暴露し、その犯人を処罰する途上にあった。
もしロバート・ケネディが大統領になってれば、国家安保体制の機関員が告訴され有罪判決を受けていただろう。そして“CIAをバラバラに解体する”という彼の願いは達成されていたであろう。だが彼も暗殺された。
ケネディ大統領の暗殺を調査するウォーレン委員会は、犯人とされたオズワルドが単なる身代わりだったことを理解していた。
しかし委員会はまた次のことも理解していた。冷戦の真っただ中で暗殺の真実をアメリカ国民に話してしまうことは、国家の安全保障に対する国民の信頼を破壊してしまうだろうと。だから委員会は隠蔽以外の代案はないと考えたのだ。
こうしてウォーレン委員会にたいする不満が第2の調査につながった。今回はアメリカ下院の暗殺に関する特別委員会によるものだった。この報告は、JFK暗殺から16年後の1979年に公開されたが、やはり多くが隠蔽されたままだった。
しかし、この特別委員会は認めざるを得なかった。陰謀が現に存在し、狙撃犯は1人以上だったということを。そして「陰謀の可能性に関するウォーレン委員会とFBIの調査には重大な欠陥があった」ということを。
http://www.archives.gov/research/jfk/select-committee-report/part-1c.html
まっとうな批判を国家反逆罪と混同することはよくあることだ。そう遠くない昔、オバマが任命したキャサリン・サンステイーンはこう述べた。
「アメリカ国民が騙されていたと知る前に、9/11真実運動はFBIによる潜入捜査をうけ、信用を落とされた。そして国民は戦争と、市民的自由の喪失を受け入れた」
国土安全保障省長官ジャネット・ナポリタノはこう述べた。
「国土安全保障省の焦点はテロリストから“国内過激派”に変わった」
彼女が長官としての職を辞任し、カリフォルニア大学の学長になる前のことだ。彼女の言う「国内過激派」とは、戦争に反対する人々、環境保護主義者、そして政府を批判する人々を含んでいた。
歴史を通して、思慮に富んだ人々は、真実が政府の敵であること、政府の大半は私物化されていることを理解している。
私的権益のために政府を利用する小さな集団によって政府は支配されているのだ。政府が公共の利益のために働いているという考え方は、アメリカの大変な欺瞞の一つだ。
こうした権益の邪魔をする人々は、決して優しく扱われない。だからこそ、ジョン・F・ケネディ とマーチン・ルーサー・キングは殺害されたのだ。こうしてケネディの弟、ロバート・ケネディも殺害された。
<註1> キング暗殺の民事裁判の判決が出された後におこなわれた記者会見のようすを下記資料から知ることができます。とりわけ興味深いのコレッタ夫人の挨拶です。
*Assassination Trial – Full Transcript.pdf「民事裁判の全体像」
http://www.thekingcenter.org/sites/default/files/KING%20FAMILY%20TRIAL%20TRANSCRIPT.pdf
*Assassination Trial – Family Press Conference.pdf「キング一家の記者会見」
http://www.thekingcenter.org/sites/default/files/Assassination%20Trial%20-%20Family%20Press%20Conference.pdf
<註2> 櫻井ジャーナル(2018/04/06)はキング暗殺に関して、次のような興味ある事実を紹介しています。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804060000/
<ロン・ポール元下院議員によると、当時、キング牧師の顧問たちは牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視したのである。
大統領の意思には関係なく、戦争に反対し、平和を望む人々をアメリカの支配システムは危険視している。例えば、FBIが1950年代にスタートさせた国民監視プロジェクトのCOINTELPRO、CIAが1967年8月に始めたMHケイアスも、ターゲットはそうした人々だった。
MHケイアスによる監視が開始された1967年はキング牧師がリバーサイド教会でベトナム戦争に反対すると宣言、またマクナマラ国防長官の指示で「ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年-1968年」が作成された年でもある。
この報告書の要旨、つまり好戦派にとって都合の悪い部分を削除したものをニューヨーク・タイムズ紙は1971年6月に公表した。いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」である。
この報告書を有力メディアへ渡した人物はダニエル・エルズバーグだが、エルズバーグはその後、宣誓供述書の中でキング牧師を暗殺したのは非番、あるいは引退したFBI捜査官で編成されたJ・エドガー・フーバー長官直属のグループだと聞いたことを明らかにしている。>
<註3> 国内の蓄積された矛盾、支持率の低下をみれば、英米仏の現政権が戦争をしたがっていることは、よくわかります。やはり「戦争は国家の健康法」なのです。
*「戦争は国家の健康法である」上・中・下
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-295.html
日本の安倍政権も森友学園など問題を抱えていますから、それを一気に吹き飛ばすために戦争の勃発を待ち望んでいる可能性があります。
また、シリア情勢が、一歩でも間違えれば、核戦争・第3次世界大戦に突き進む緊迫した状況にあることを次のブログがよく伝えています。
*「世界の終わりまで、あと十日」
Paul Craig Roberts 2018年4月12日
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-b7f8.html
*「OPCWのチームが調査を始める直前、米英仏はシリアをミサイル攻撃」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804140001/
☆百々峰だより(寺島隆吉)2018/04/14 http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-date-20180415.html からの転載記事
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