【特集】砂川闘争の過去と現在

原告の土屋源太郎氏による意見陳述(2022年3月7日)

武内更一

原告の土屋源太郎です。

近年、米国で、核戦略についての文書・情報等が公開され始めています。その中で、米軍立川基地の拡張に関するものも出てきました。その内容について説明しますと、1954年、フランス軍が敗退したことによってアメリカ軍がベトナム戦争に本格的に参入するということで、そのために日本の本土、沖縄の米軍基地がその戦闘的前線拠点基地になると、その中で、立川の米軍基地は拠点基地として重要な基地となった。

さらに、ベトナム戦争に米軍が核兵器を使用するという計画があって、当然、核兵器を搭載するための軍用機、その軍用機を発着させるために滑走路の延長が必要になった。そのために米軍立川飛行場の延長が必要だったということが明らかになっています。

55年、56年、いわゆる砂川闘争で、地元の人たちをはじめ多くの人たちが支援して、結果として基地の拡張を中止させたということは、その意味において大変大きな意義があったというふうに思っております。また、57年、地元の地主が、基地内の土地返還を求めた訴訟、それに対して国が土地を強制収用するということであったために、支援する私どもは、その基地内に入って抗議と中止を求めるための行動を起こしました。

結果として、そのうちの7名が安保条約に基づく行政協定に伴う刑事特別法違反として、逮捕・起訴されました。いわゆる砂川事件裁判です。砂川事件裁判は、私どもは、これは憲法裁判であるというふうに受け取っていましたし、その裁判の第一審判決が、59年3月30日、東京地裁において下されました。

伊達秋雄裁判長は、被告人全員無罪、そして、米軍は明らかに戦力であって、日本側の指揮管理権がある・なしにかかわらず、米軍がことを起こした場合に日本が戦争に巻き込まれる危険がある。その意味では、憲法第9条に違反するものであって、米軍駐留の存在そのものは、許せざるべきものであるということを断言しました。

当時、日米間において、新たな軍事同盟の強化、これを進めるための安保条約改定交渉が進んでいました。ですから当然、日米両国にとっては、この判決は、大変な驚愕な事件であったわけですね。ですから早期になんとしてもこの伊達判決を破棄したいと考える。日本政府は東京高裁を飛び越えて、直接最高裁に跳躍上告をしたわけです。

そして、最高裁では大変異常ともいわれるような、短期間の審理を行って、59年12月16日に、最高裁の田中耕太郎裁判長は、一審判決を破棄し、差し戻すという決定を行いました。そして、その内容として、駐留米軍には日本は指揮権、管理権はない、外国の軍隊だと。また、安保条約のごとき高度な政治性のある問題については、司法は介入すべきではない。まったくおかしな、いわゆる最高裁が憲法判断を放棄するというような内容の判決を下したわけです。

そしてその結果、私どもとしては、やり直し裁判で、有罪、罰金2000円ということを科されました。これによって私どもの人権は踏みにじられ、そして名誉も大きく棄損されるということになったわけです。

2008年以降、ジャーナリストの新原昭治さんをはじめ3名の方によって、当時の最高裁の裁判の渦中で、アメリカ大使と田中裁判長が密談・密約をしていたという文書が発見されました。

その内容を見ますと、まず判決の下った翌日の朝、アメリカのマッカーサー大使と藤山愛一郎外相が会談して、マッカーサー大使から跳躍上告についての提案があった。それに対して藤山は閣議ですぐ決定してその方向で行きたいということを言っている。明らかに、当時の安保条約の改定交渉が進んでいる中で、政治的に介入するということがそこで明らかになったわけです。

さらに、田中裁判長は、マッカーサー大使とレンハート公使と3回にわたって会談をしています。そして、その内容はご承知のとおり、早期に判決を出したい。またいろいろ判事の意見はあるけれども、15人全員が破棄するために、田中耕太郎としてはその判決を一致させるために努力するということも、アメリカ側に約束しています。

それもいわゆる対談の場所は共通の友人宅を使っているわけですから、非常にその意味では大変な内容でもあったわけです。その結果、最高裁において、ご承知のとおり、統治行為論というおかしなものを持ち出して、本来最高裁は憲法審査権を持っているにもかかわらず、あえてそれをかなぐり捨ててまで、早期に一審の伊達判決を破棄するために、あえて統治行為論を持ち出すことによってあいまいな形での判決を下した。

明らかに、これは憲法が保障する刑事被告人が公平な裁判所の裁判を受ける権利を侵害したということであって、明らかに憲法違反であるとともに、最高裁の裁判そして判決がまさに汚染されたものであって無効であると言わざるを得ません。

私どもは、この事実を知ったために再審請求も行ったし、現在ここで国賠訴訟を行っているわけです。しかし、被告である国側は、この公文書に対して「不知」ということを重ねて言っております。

まさに、正義もなければ非常に不当な行為を続けているわけです。これに対して私どもとしては、その政府に抗議するとともに、裁判長に対して調査嘱託のお願いをしました。裁判長はその私どもがお願いした調査嘱託を受けてくださった。これには感謝をしています。と同時に、この公文書が必ずこの法廷に届くということを確信しておりますので、裁判長、ぜひそのための努力を続けていただきたい。

そしてさらに、先ほども申し上げたように、この裁判は憲法37条の意義を問い、司法の信頼性を問う憲法裁判です。その意味からいって、司法の厳正な判断、これがなければいけないと考えます。

裁判長、ぜひこの裁判にあたって、公正で公平な判決を下すことを願っております。よろしくお願いしたいと思います。

以上をもって陳述を終わります。

武内更一 武内更一

東京外環道大深度地下使用認可無効確認等訴訟の原告住民ら代理人、砂川裁判国家賠償訴訟原告ら代理人等を務める。

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