3年を超えて戦われた新型コロナ2類作戦が遂に終わる、今日から5類へ/もう言っていいだろう 国の作戦は基本的に間違っていた
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新型コロナウイルスの話がこんがらがってきた遠因を探っていくと、この人の話に行き着かざるを得ない。
その証拠がここに残っているのでこれを検証してみたい。
2020年3月30日付け朝日新聞の「テーマ特集:新型コロナウイルス」「医療サイト 朝日新聞アピタル」面の記事だ。正確を期すためそのまま引用したい。
https://foimg.com/00190/ghZsYP
見出しが日本のコロナ対策の混迷を示唆していることに皆さんは気づくだろうか?その見出しがこうだ。
「行動制限なしなら42万人死亡クラスター班の教授試算」
記事の日付は
「2020/4/15 11:03」
西浦博北大教授の写真説明の日付は
「2020年3月30日」
になっているので、これは推察だが、取材は写真説明にある通り、2020年3月30日で、記事化されたのが、2020年4月15日だということかもしれない。
まあ、しかし、3月30日だろうと、4月15日だろうと大勢に影響はない。
まだ日本人は新型コロナとの遭遇にさしかかったばかり。
日本国民はまだ新型コロナのことは何も分からず、この厚生労働省が率いる「クラスター対策班」の意見を拝聴していた。
42万人が死亡!
2009年の新型インフルエンザでも死亡者198人。いくら日本人に馴染みのあるインフルエンザでも死亡者の数字はこのくらいだったから、西浦教授の弾き出した新型コロナの死亡者総数のインパクトは半端ではなかった。
この数字だけではないが、日本の新型コロナ対策は感染者数と死亡者数を抑えるため、欧米流の「with コロナ」政策を遠ざけ、コロナからは遠ざかるマスク、三密政策、黙食、アクリル板など徹底した「コロナからの逃亡」を図った。ここはまだこのくらいにして、ここでは数理学者が弾き出した数字が一人歩きをし始めたことを明記するに止めよう。
実は日本のコロナ対策の将来を見据えると、この「クラスター班」の存在をきちんと把握しておいた方がいいので、少し周り道になるが、クラスター班の経緯から入りたい。
日付は令和2年2月25日(火)
厚生労働省健康局結核感染症課
課長補佐 上戸 賢
の名で報道関係者各位に当てて次のような発表分が残っている。
「新型コロナウイルス クラスター対策班の設置について」
「新型コロナウイルス感染症について今後、感染の流行を早期に終息させるためには、患者クラスター(集団)が次のクラスター(集団)を生み出すことを防止することが極めて重要であることが、本日策定された『新型コロナウイルス感染症対策の基本方針』においても示されたところです。
このため、本日、クラスターが発生した自治体と連携して、クラスター発生の早期探知、専門家チームの派遣、データの収集分析と対応策の検討などを行っていくため、国内の感染症の専門家の方々で構成される『クラスター対策班』を別添の通り立ち上げました」
このくだりを読むと「集団免疫」のことを意識しているのかな、と思わせるのだが、次に登場する人物の手によって方向が変わるのだ。
別添の資料には「西浦博」という具体な名前は出ていないが、クラスター対策班の見取り図の中に「データ解析チーム(北海道大学)」という名前が出ているので、これが当時北海道大学の教授をしていた西浦博教授(現京大教授)のことを示していると見ていいだろう。
コロナ対策の動向を見ていく上で、それほど重要なポジションにいた学者の発言 であることをまずしっかりと頭に入れ冒頭に掲げた記事に戻りたい。
もう一度見出しから見てみよう。
「行動制限なしなら42万人死亡クラスター班の教授試算」
「新型コロナウイルスについて、厚生労働省のクラスター対策班に参加する北海道大学の西浦博教授(理論疫学)は15日、不要不急の外出自粛などの行動制限を全くとらなかった場合は、流行収束までに国内で約42万人が感染によって死亡するとの見方を示した。現在、緊急事態宣言が出ている地域などを中心にとられている行動制限によって、どの程度死者数を減らせるか試算中という。
対策班をまとめる西浦さんは、人と人との接触を8割減らすことで感染者数を急速に減らせ、結果として重篤者や死者の数も減らせるとしている。西浦さんは『1〜2メートル程度の距離の会話を一つの接触と考えると、これまで1日十人と接触していた人は二人に減らせないか、リモートワークの実施などを通して工夫してほしい』と訴えている」
この人と人の接触を8割減らす!
この一言で西浦教授は ”8割おじさん”の異名を取ったが、その後の日本の新型コロナ対策を見ていくと、全てがここから出ていることがわかる。
その中で「人流」なる奇妙な言葉も生まれた。これまで1〜2メートルの距離の会話を1日10人から2人に減らせ。人と会わない主義、会ってもマスクで互いに口からの飛沫を防御する。食事や会議でどうしても向き合わねばならない場合はアクリル板という武器も現れた。
小池百合子東京都知事は小技の冴を見せた。
「三密」「五つの小」「かえる」これも8割おじさんから生み出された日本人の超小技で恐れ入る。
一応説明しておこう。
まず「三密」。
これは本当は官僚サイドから出た話で、小池さんの特許権はないという話もあるが、そんなことはどうでもいい。
「三密」の意味だ。
密閉
密集
密接
この三密が人と人との接触が生まれコロナの感染が拡大するのを止めるという考え方。
次に「五つの小」とは何だろうか?
小人数
小一時間
小声
小皿
小まめ
人が集まってもこの五つの「小」を守っていれば感染は防がれる。
次はもうお笑いの世界だが、東京都知事としてはいささか涙ぐましい話だ。
ここは一番真面目に考えてみよう。
小池知事の手には大きなボードが握られていて、そのボードには五匹の蛙の絵が書かれている。
メインタイトルは
「夜の人の流れを抑えるために」
「8時にはみんなかえる」
4つのケースが蛙の絵と共に描かれている。
職場からかえる。
お店からかえる。
寄り道せずにかえる。
ウチで気分をかえる。
一番下のコーナーには
「テレワーク・ステイホームの徹底もご協力お願いします」
この一連の国と東京都などの目的は「8割おじさん」の意向に沿ってただただ目標は新型コロナウイルスと人との引き離し、隔離作戦と呼んでもいいだろう。
今日(5月8日)から感染症法5類になってマスクどうする?というのは国民の頭を悩ます問題だ。
マスクは保菌者(患者)が口から飛沫を飛ばすのを抑える効果があるとして、結核全盛時代にはマスク=患者を意味した。
飛沫がマスクで止められる効果があるとの衆知で使われてきたが、予防にも効果があるとして人々がつけるということになるとどうなるか?
これは国民全員がマスク着用する=今の日本の状態になってしまうのだ。
しかし、医学的にはマスクの予防効果について10数%ぐらいしか効果がないと言われているので、ここから国民がどれだけ自覚的にマスク問題を考え切るかが勝負になるだろう。
確かに国民が100%マスク状態でも東京都だけでも毎日数万人の感染者は出ていたので、マスクは「8割おじさん」の意に必ずしも叶うものではなかった可能性が高いな。
5月6日現在の新型コロナウイルスの感染による死亡者総数は
74645人だ。
8割おじさんが掲げた最悪の死亡者数
42万人
には幸いにしてはるか届かなかった。
感染者総数も上げておくと
33778993人(5月6日現在)
平たく言い換えると
3377万人だ。
感染率は26・8%
以上が私たちの新型コロナとの戦いの結果だ、この結果を得て日本人は感染症法2類という厳しい縛りから5類というインフルエンザ並みの付き合いでよくなった。
だが実は問題は残る。
今日の私の一番言いたいところはこれからなのだ。
日本は徹底したコロナからの
「逃避作戦」
「隔離作戦」
を採用した。
これは8割おじさんらコロナと戦った司令部の大方針─人とコロナとの接触を回避することだった。
その結果死亡者は42万にならずに7万4千人で済んだという見方もできるが、逆に言えばあれだけ硬く隔離作戦をとりながら、3300万人の感染者を出し、7万4千人もの死亡者を出したな!
という見方もできるので、8割接触を断つという作戦が成功だったとも言えない。
そしてこの8割作戦の最大の問題が最後に浮上する。
それが「集団免疫」という問題だ。
人類は長い長い感染症との付き合いの中から、一定の犠牲者出すにしても最終的にウイルスと折り合いをつけるには、この「集団免疫」獲得の道しかないことを知っている。
欧米の国々は早い段階で「withコロナ」に戻り、感染者や死亡者を出しながらも自然な形で感染の終息を目指している。
日本は感染を避けてきたので当然ながら人口に対する感染者の比率=感染率は先の計算によれば26・8%だ。これではとても日本がコロナと程よい関係になるために、人口の半数を超える「抗体」を持つことはできない。
感染症法上は5類なのでインフルエンザ並の扱いだがまだまだ感染は続きそうだ。
ただ、ここに一つピンチヒッターがいた。このピンチヒッターも日本では登場が遅れた。
ワクチン接種で「抗体」を獲得する道だ。
4月13日号の「週刊文春」のワクチン特集にはこういうくだりがある。
「3月23日、厚労省のアドバイザリーボードで公表された資料によれば、前月の調査で日本人の抗体保有率は42・3%でした。
過去に感染していない人が多いほど感染が拡大しますが、抗体保有率が50%を超えれば、感染爆発が起こることは考えにくい」(公立陶生病院感染症内科主任部長・武藤義和氏)
これまで見てきたように日本は人と人との接触を8割避けて感染者の数を抑えてきた。
そのため感染者の数は未だ3千3白万人、人口比率で言うと26・8%。
つまり結論的に言うと8割おじさんを中心とする日本の感染症対策の司令部は完全に道を間違えていたのだ。
ドイツでビオンテック(バイオテック)と言う中小のベンチャー企業、この薬品メーカーが「mRNA」(メッセンジャーRNA)という手法でコロナウイルスのワクチンを開発していなければ日本は大ピンチだった。
日本はこのワクチンにも乗り遅れそうになっていた。
日本の「三密」や「五つの小」、「かえる」作戦など全てコロナから逃げようという、感染症との人類の付き合い方から外れたものだった。
全ての始まりは42万人死亡と8割おじさんの存在にあったのだ。
最後に、感染症に対する間違った対応はあったにしろ次々に発生する患者と真剣に対応した全ての医師には心からの拍手を送りたい。
(2023/5/8 記)
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1940年3月13日生まれ。福岡県出身。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て、同社を退職。1989年より活動の場をテレビに移し、「ザ・スクープ」キャスターやコメンテーターとして活躍。山あり谷ありの取材生活を経て辿りついた肩書は“ニュースの職人”。2005年、大腸がん4期発覚。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、4度の手術を受ける。以来、がん患者やその家族を対象とした講演活動を積極的に行っている。2010年よりスポーツジムにも通うなど、新境地を開拓中。