なぜ「九条は世界の宝」と主張するのか?
その他はじめに
ビジネス一辺倒(学者でも、政治家でも、ジャーナリストでもない)の私がなぜ「憲法九条の理念で地球憲章を」と主張するのか?
それは、石油担当元商社マンとして中東(イスラム圏)に駐在し、情報産業に転職して米国(NYC・ニューヨークシティ)移住。その間、イラク・イラン戦争や、9・11WTCテロなど、十指に及ぶテロ・紛争に遭遇、直接体験し、そこから「武力による平和構築は不可能」と確信するからです。
「九条は世界の宝」。中東をはじめ、付き合った各国の人々は我々日本(人)を「平和的」と見てほぼ例外なく友好的です。経済力もありましょうが、直接、憲法九条の存在を知らずとも、「戦争をしない人々」として理解されています。
仕事柄(教育ビジネス)も、何故言葉(英語)を勉強するのか? ⇒異文化・宗教理解。即ち、「『自分とは異なる』ということを理解する」ことが肝要と力説しております。
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1)アメリカの軍事政策追従の危険
何よりも、米国の対外軍事政策の、武力行使の間違い。
2003年、イラク侵略時の「カーブ・ボールの愚」を忘れてはなりません。
この「愚」を熟知しているのが誰あろう、当時官房副長官や自民党幹事長を務めた安倍晋三現内閣総理大臣です。
ベトナム戦争についても、米国防省のトップであったマクナマラ長官は「大きな間違いだった」と回顧録に記しています。
そして現在、PC (Politically Correctness政治的・社会的に公正・中立)に欠けるトランプ米大統領。それを支持支援する「平和でないほうが儲かる人々」。それに「個人的信頼関係」を基に追随する現下の安倍政治の「地球儀俯瞰外交」を見ていると世界の平和が崩れる気配を痛感します。
トランプ大統領は2017年5月イスラエルを訪問、キッパ(ユダヤ人の小さな黒いキャップ)をかぶり、エルサレム(三大宗教の聖地)の嘆きの壁で祈った。その意味(危険)を理解せねばなりません。
エルサレムをイスラエルの首都と宣言したことを受け、2018年5月、米大使館を移動。本年3月、中東のゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認める文書に署名しました。
他方、本年6 月、安倍晋三首相はイランを訪問。トランプ大統領の命を受け、最高指導者ハメネイ師と面談。そこで、「(メッセンジャーとしての)誠意は理解した。が、トランプとは話しあわない」と断言されたことの深刻さ。
2)ノーベル平和賞
こんな強い思いで実行してきたのが「ノーベル平和賞(九条の会と日本被団協を)」の推進です(裏方。ボランティア)。
法学館憲法研究所HP『憲法Voice』
他方、トランプ大統領は「安倍首相がノーベル平和賞に推薦してくれた」と暴露しました。
これを国会で追及された(2月18日、玉木雄一郎衆議院議員)安倍首相は「ノーベル委員会は50年間封印」としてコメントを拒絶しました。
しかし、これは事実ではありません。
確かに、委員会は審査の過程は50年間封印します。
が、推薦者nominatorが内容を明かすことを禁じてはおらず、事実、PRIO※は知り得た推薦情報を公表しています。
この「美しい5枚の手紙(推薦状)」は公文書であり、国民の前に隠匿することは許されません。これを糺せば、安倍政策のトランプ追従の神髄が明らかになり、今後の行方に決定的な影響を与えましょう。
私は昨年5月、NYCでの「(地球終末まで)あと二分(PDF)」会議で、N.チョムスキー教授はじめ錚々たる平和主義者と一日話しあう機会を得ました。
なぜ、素人の私を受け入れてくれたのでしょう?
唯一の被爆国である日本の一市民が「九条を地球憲章に」と自己紹介したことが受け入れられたのです。
更に、同年7月にはオスロとストックホルムを訪問、ノーベル(平和)賞関係者に種々学びました。
3)憲法9条の理念を軸として東アジア共同体構想
更に、本年5月、プラハ、ウイーンに「リヒャルト・クーデンホーフ伯」の足跡を訪ねました。
同伯は、平和思想である「友愛Fraternity」主義から「PanEuropa汎ヨーロッパ」を掲げ、EU欧州共同体の父と呼ばれています。
ウイーンの汎ヨーロッパ事務所にて
同伯(日本名:栄次郎、1894~1972)の「友愛」主義は、鳩山一郎翁、鹿島守之助翁らに大きな感動を与えました。
リヒャルト N. クーデンホーフ=カレルギー、『実践的理想主義: 貴族 – 技術 平和主義』 (翻訳: 鹿島守之助) 1963年、鹿島研究所出版会。
(この大部な論文に大いに感動したのが当時高校生だった寺島実郎氏。現在ある寺島文庫の原点と伺っています)
その友愛思想を引き継ぐ孫である鳩山由紀夫元総理は「東アジア共同体構想」の理事長。
東アジア共同体研究所
ここより、汎ヨーロッパ主義を範として、東アジア共同体構想との提携に注力したいところ。記録によると前述クーデンホーフ伯はベルリンにおいて鹿島守之助翁に「僕は欧州をまとめる。君にはアジアをやってほしい」と示唆したよし(わが回想録1965)。
昨年9月28日、国連総会(NYC)での演説の後の記者会見で、マハティール(マレーシア)首相は日本の平和憲法第九条を称賛。日本の憲法改正の動きに触れて「戦争に参加できるようにする改正なら、大きな後退だと思う」と語りました。共同通信(2018年9月29日)
5月2日、報道ステーションでのマハティール首相のインタビュー。
かくしてその50年後の現在、マハティール首相はじめ、国連のメンバーから「九条の理念で、地球憲章を」という動議を挙げてもらうべく、活動を開始しています。
「九条地球憲章の会」、私は世話人。
SA9運動(毎日新聞2019年5月23日)、私は顧問。
4)「核兵器廃絶」と「九条は世界の宝」は一体
因みに2017年ノーベル平和賞受賞のICAN(PB)の川崎哲共同代表は「憲法九条を護り、世界に広げること。これは核兵器廃絶運動と一体である(PDF)」と言明しました。
昨年9月24日、国際デー記念イベント「核兵器廃絶日本NGO連絡会」において、同氏と対談した女優吉永小百合さんは「(地球滅亡まで)あと二分」と、ことの核心を言明。
吉永さんの平和主義は、下記の青山ミツコの役をして以来の筋金入りと推察します。
NHK『国境のない伝記 ~ クーデンホーフ家の人びと』
リヒャルト・クーデンホーフ伯に平和への想いを伝えてた母ミツコの人間ドラマは胸を打ちます。
この日本で最初の国際結婚。グローバル時代における日本の若者の「明日」に向けての一つの指標ではありましょう。本稿末尾に付記しました。
まとめと提言
私は何であれ「穏健、中庸、公正」でありたいと考えております。
従い、現下の危機にあっていたずらに「アベは辞めろ」と叫んでいるわけではありません。
が、そのトランプ追従の「地球儀俯瞰外交」が如何にも脆く、危険であるかに注意を喚起したく。
本稿出稿の段階では参議院選挙の結果は出ていませんが、トランプ追従の非を糺す候補者はほぼ皆無。「外交は票にならない」という時代ではありません。
まさか選挙後に、トランプ大統領提案の「有志連合」への参画(ホルムズ海峡に自衛隊を派遣)という愚挙はすまいと祈念する次第です。
選挙の結果にかかわらず、「九条は世界の宝」「核兵器廃絶」を堅持せねばなりません。グローバル時代にあってこれは「市民生活に直結する」重要課題です。
※ PRIO 「平和学の父」ガルトウング教授が1959年に設立したオスロ平和研究所
付記:
EU欧州共同体の父、リヒャルト・クーデンホーフ伯の母は光子〔青山みつ〕(1874~1941)。オーストリア・ハンガリー帝国代理公使のハインリッヒ・クーデンホーフ・カレルギーと知り合い国際結婚し、明治29年(1896)渡欧。終生オーストリアで過ごしました。
小説『暗い血の旋舞』
松本清張
東京タワーと紅葉館とクーデンホーフ光子
長田 達治
*尚、本稿は、浜地個人の見解です。
出所「2019.07.22法学館憲法研究所」
https://www.jicl.jp/articles/opinion_20190722.html
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国際ビジネスコンサルタント。1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、(一財)グローバル人材開発顧問。「月刊グルーバル経営」誌にGlobal Business English Fileを長期連載中。