ラサール石井、サミット反戦デモ参加者への過剰警備を問題視
安保・基地問題政治広島サミット最終日の5月21日、警察(機動隊)が反戦デモの参加者に暴行を加えた動画がツイッターで発信された。翌22日にはイギリスの公共放送局「BBC」が「広島でデモ隊と警察が衝突、地面に押さえつけられる参加者も」と銘打って紹介。しかし、警察は暴行自体を問題することなく、デモ主催者を「極左」とレッテルを貼って事足れりとした。
これに反論したのがタレントのラサール石井氏である。23日のツイッターに動画を貼り付け、「デモ隊はただ行進しているだけに見える。その行く手を間隔を狭め妨害しているのが機動隊。歩行困難で進もうとして接触した者を大勢で押さえつける」「むしろ警察が過激派だ」と批判。そのうえで、「(デモ参加者を)左翼過激派だというが何も過激なことはしていない」「市民ではない活動家だというが、活動家も市民だろう」と述べた。一連の発信は東スポが取り上げ、同日、「サミット反対デモに理解『むしろ警察が過激派だ』」という見出しのネット記事で配信された。
現場にいた私の実感も石井氏と同じである。直前まで横断幕を掲げてデモ行進していたのに、突然、機動隊員が参加者に襲いかかり、乱闘状態になったからだ。このとき逮捕された人の容疑は、警察官の肩を手で殴ったとする公務執行妨害だが、デモ参加者が屈強な警察官(機動隊員)を殴るなど、よほど激しい挑発を受けない限り考えられないのだ。
BBCの動画(その場で撮影した市民が提供、42秒~1分1秒の箇所)には、逮捕されなかったものの、暴行を受けた主催者・赤嶺知晃氏が抗議する姿がある。
地面に押さえつけられた赤嶺氏が「暴力を止めろ!」と叫んだ後、ようやく立ち上がって再び「暴力を止めろ!」と抗議すると、警察官は「暴れるな!」と威圧。これに対し、赤嶺氏は機動隊員の膝で押さえつけられた手を指し示した。
デモ終了後のミニ集会で赤嶺氏は、機動隊員2人に抑え込まれたうえに手の平を開けさせられて膝パットを押し付けられた暴行の様子を報告した。すると、集会解散後に海外メディアが赤嶺氏にインタビュー。私にも同じ話をしてもらった(5月22日配信の「横田一の現場直撃」の冒頭動画で一部紹介)。
――「ゼレンスキーさん帰れ!」と(デモで)訴えられていましたが。
赤嶺 そうですね。岸田首相なんかはサミットを「平和の会議」「核廃絶に向かう」などと言っていましたが、ゼレンスキーが広島に来る目的はまったく違いますよね。それどころか、さらなるウクライナへの武器支援、軍事支援を要求する。しかも、欧州各国やアメリカにF16 という戦闘機の供与を認めさせるという。もう本当に、ここ広島で、まさに被曝地でさらなる軍拡の話を、さらなる軍事費の話をするなんて、広島の被曝者の思いをこの上なく踏みにじる行為だと、私たちは訴えていたんです。この広島で、これ以上の軍拡とか戦争を継続する議論をやるなど、「ふざけるな!」と。広島を戦争を宣言する場に、軍拡の場にするなということで、「ゼレンスキー帰れ!」と声を挙げました。
――F16 が供与されれば、さらに戦争が激化して犠牲者が増えると。
赤嶺 本当、そうですよね。戦車の供与だけでも地上戦になるというのに、F16 が配備されたら本当に全面戦争になっていきます。これはウクライナ戦争の停戦というものとはまったく違いますよね。(停戦に)つながらない。それで止めようと思って(デモで訴えました)。
――さっき(デモ終了後のミニ集会で挨拶をした参加者の)フランス人の方も同じようなことを訴えていて、プーチンとゼレンスキー両方を呼ぶのが筋ではないかと。鈴木宗男さんも同じようなことを言っていました。それがあるべき姿なのに、片一方だけを呼んで武器供与を約束すれば、さらに分断を深めて。
赤嶺 しかも、G7外相の共同声明では、「無条件降伏・即時撤退」というのはほとんど相手が全面降伏するまで戦争を続けろということですよね。
――非現実的な提案だと。停戦なんてやる気はないということだと。戦争を長引かせようと。
赤嶺 そうです。朝鮮半島で同じことを言ったら、また朝鮮戦争が始まってしまう。それと一緒ですよね。
――台湾有事でも同じことになりかねないと。それを防ぐためにも集会やデモをなさったと。
赤嶺 そうですね。
――機動隊からの暴力については。
赤嶺 暴力は許しがたいことです。(機動隊員)2人で押さえつけて、人の指を踏みつけたり膝をつねってきたりと、本当に卑劣で、みみっちい暴力をふるってくる。性根から腐っている連中だなと思いました。
反戦デモの参加者に暴行を加え逮捕もした警察(機動隊)こそ、“過激派警察”や”極右暴力集団”などと呼ばれても仕方がないだろう。今回の警察の暴力的行為については、石井氏のツイッターを紹介した東スポに加えて、日刊ゲンダイも「広島で警察がデモ参加市民を『公務執行妨害』でフルボッコ…なぜメディアは報じない?」と銘打った5月22日付け記事で日本の報道機関の姿勢を疑問視した。「極左」とレッテルを貼って事足れりとしたBBCと同様、日本の大メディアも、「過激派」「中核派」主催のデモにおいて公務執行妨害で逮捕者が出たと、警察情報を垂れ流すだけにとどまっている。
このたびのG7会場となった広島では、戦争反対を訴えたデモ参加者を警察が逮捕するという無法行為が罷り通った。今後、BBCが発信した動画に記録された暴行行為を国内外のメディアがどこまで報じるのか、注目される。
※なお、本稿は「NetIB-NEWS」2023年5月25日に掲載された横田一さんの記事https://www.data-max.co.jp/article/64064からの転載であることをお断りします。
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1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。