大崎事件4度目の再審請求 高裁支部も棄却
メディア批評&事件検証鹿児島県大崎町で1979年に男性(当時42)の遺体が見つかった「大崎事件」をめぐり殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(95)第4次再審請求について、福岡高裁宮崎支部(矢数昌雄裁判長)は5日、請求を棄却した鹿児島地裁決定を支持し、弁護側の即時抗告を退けた。弁護側は最高裁側に特別抗告する方針。
確定判決によると、男性は79年10月に酒によって自転車ごと道路わきの溝(深さ約1㍍)に転落。近所の住民2人が路上に倒れていた男性を軽トラックの荷台に乗せて自宅に運んだ。その後、隣家に住む原口さんや夫(故人)らが男性を絞殺し、遺体を牛小屋の堆肥(たいひ)に埋めたとされた。
第4次請求で弁護側は、救急救命医の医学鑑定と関係者の供述分析を新たな証拠として提出。男性は転落で、頚髄(けいずい)損傷を負い、さらに首を保護しない搬送で悪化して、自宅に着いた時には死亡していた可能性が高いとし、生きていたとの住民2人の供述には疑いがあると主張していた。
鹿児島地裁は昨年6月に頚髄損傷の可能性は否定できないとしつつ、確定判決の事実認定を覆すまでの証拠にはならないとして再審請求を棄却。弁護側は高裁宮崎支部に即時抗告し、住民2人の供述を信用できるなどとした地裁の判断は誤っていると訴えていた。検察側は、弁護側の鑑定に法医学の観点から反論して請求棄却を求めていた。
原口さんは、逮捕から一貫して無罪を主張してきたが、懲役10年の実刑が81年に確定。刑を終えて90年に出所した。原口さんの再審請求は、第一次で一審、第3次で一、二審が再審開始を認めたが、いずれも上級審で取り消された。第4次は2020年3月に長女が申し立てていた。
高齢で体もボロボロで何度も再審請求を棄却されようが「やっちょらん、やっちょらん」と無実を訴えるのには、理由があった。「2人の娘と、その孫たちの子どもまでもが殺人犯の母がいたことが一生ついてまわる。このままでは死んでも死にきれない」という彼女の悲痛な声だった。
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独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。