東アジアで連携をー米戦略に巻き込まれない為に
琉球・沖縄通信琉球弧軍事要塞化が与那国・石垣・宮古・沖縄島・奄美・馬毛島等で、猛スピードで押し寄せている。島々をミサイル発射台にし、のどかな風景を一変させる勢いだ。
「中国が攻めてきたらどうするか」論を根底に安保3文書に基づき5年間で防衛費43兆円を使う。3文書が出て早速、国は与那国町のミサイル配備に関連する駐屯地拡張の予算を計上した。町は国民保護などの観点から、与那国空港の2000m滑走路を500m延長することや、新たに比川に港を造ることを政府与党に要請し、前向きな返答があったという。住民は大反対である。
米国と日本は国家安全保障戦略をはじめとする一連の戦略文書を出した。日米は、「中国は(略)国際秩序を作り変え(略)、伸張する同国の政治力、経済力、軍事力及び技術力」の向上を「深刻な懸念」とし、中国を封じ込める米国の意図を論じている。中国の成長はけしからんというのだ。
米国で「台湾有事」が発言されたのは、前インド太平洋司令官が2021年3月9日に米上院議会の軍事委員会で、「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性」があると述べ、現司令官も同様の発言を行ったことに始まる。両者とも「6年以内」の根拠を示していない。日本では安倍元首相が「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と述べ、国防政策になり、琉球列島住民を苦しめている。
中国は今や経済大国だ。「侵攻」という経済大国の地位を危うくする米の挑発には乗らないだろう。習近平氏の戦略目標の第1位は平和的な国際環境作り、第2位は4つの近代化、第3位は祖国統一だ。統一の課題は後回しである。台湾も現状維持が主流だ。
G7(主要7か国)広島サミットが終わった。かつて7カ国は世界のGDP(国内総生産)の6割以上を占めていた。現在、4割程度まで低下した。そのような中でグローバルサウスを取り込む働きかけが見られたが彼らはG7の手に乗らなかった。特にインドのモディ首相やブラジルのルラ大統領には米中対決に距離を置く独自性が見える。5月2日の琉球新報は「米軍巻き添え『認めず』 比大統領、台湾めぐり距離」と報道した。日本との違いは鮮明だ。
フィリピンは米国戦略に懐疑的だ。大橋成子氏(ピープルズ・プラン研究所運営委員)は、「『米中の大国の対立に巻き込まれたくない!』とフィリピン各地で昨年以来、学生や市民が抗議している。(略)全国学生連盟は『大国の利害に振り回されずに、中立の立場を取るべき』との声明を出した。(略)労働者団体や弁護士団体、米軍が巡回・駐留する地域の県知事・政治家たちも同様の訴えをしている」とPP研ウェブマガジンで報告している。
フィリピンでは1992年に米国のクラーク、スービックの2大基地が撤去されたが、98年に「訪問米軍に関する地位協定」を米比で締結された。米軍は2001年には軍事訓練でフィリピン国内5カ所の基地を使用したし、今年1月には米国防長官が訪問して、フィリピン基地9か所で米軍が「巡回し、駐留する」合意を取り付けた。
大橋氏は「米軍がフィリピン国内での軍事拠点を拡大することと並行して、日本はODAとは別に『同志国』の軍事活動に防衛装備品を提供する新制度を作った。自衛隊が米軍の指揮の下、最前線で戦う体制が整えられた」とし、「自衛隊の共同訓練も強化されようとしている」と述べている。
沖縄では、フィリピンからウォールデン・ベロー氏を招いて講演会を行う。今後フィリピンとの連帯活動もすすめていきたい。ベロー氏はニューヨーク州立大学教授で元フィリピン大学教授、元フィリピン下院議員である。現大統領の父親マルコス独裁体制との闘争に参加、弾圧を受けた。世界銀行等の国際金融機関が「南」の諸国の貧困や政治的抑圧に深く関わっていることを批判してきた。シンクタンク「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」の代表として、理論・運動の両面で中心的な役割を果たしている。世界の展望など、広範に鋭い発言で注目されている。
「ノーモア沖縄戦の会」のダグラス・ラミス氏は、ベロー氏の「基本的に米の戦争は全部外地で行った。それが現在も継続されている。(略)準主権国家で中国を囲い込む米国の戦略がある」という論を紹介している。ベロー氏は米軍によって他国の軍が指揮されることなどを指して「準主権国家」と表現している。その例として、ベロー氏は韓国軍隊の最高司令官は米軍であるから、韓国は準主権国家と述べているという。ということは日本もまた準主権国家であろう。理由は自衛隊が有事の際に米軍を最高指令官の下に活動することが、「密約」で取り決められているからだ。
米国は戦争を起こし、戦争を全てアジアで済ませ、自国の領土と自国民の命は守る。それが米戦略だ。講演では広い視野から沖縄が見えるだろう。私たちはフィリピンの再軍事化に反対する人々と連帯し、東アジアの一員として、アジアでアジア人の血を流さない仕組みを共に作っていかねばならないと考える。
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独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。