メールマガジン第94号:南西諸島軍事強化トピック(1月16日~1月22日)
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会メルマガ琉球・沖縄通信◇1月18日東京新聞「CSIS報告書を読み解く」「軍人、双方で数千人死亡」「民間人の犠牲触れず」
◇神奈川新聞「直面する危機説明を」「日米一体化で標的に」フリージャーナリスト布施祐仁氏
台湾有事ー日米中多大な被害
台湾有事で日米が中国軍と戦えばどうなるか。地元2紙掲載ではない2本の記事を紹介したい。一つ目は東京新聞1月18日付に掲載された軍事ジャーナリスト小西誠さんのインタビュー記事だ。同紙記者から小西さんの連絡先の問い合わせがあり、記事掲載後に新聞が送られてきた。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)による日米中戦闘のシミュレーション報告書に対する小西氏の分析だ。
小西氏は以下のように報告書を解説している。日米中の対戦により「米軍は二隻の原子力空母と最大372隻の航空機を失い、最大1万人の死傷者。自衛隊も112機の航空機と26隻の艦船を失う」。小西氏は「自衛隊にも米軍と同規模の死傷者が出かねない」と見る。中国側は「二万二千人の死傷者、三万人以上が捕虜になる」と見積もられている。
岩国、横田、三沢基地ー民間空港にもリスク分散
報告書は「日本国内の基地を戦闘に使用する必要がある」とし「台湾に近い嘉手納(沖縄)、岩国(山口)、横田(東京都福生市など)、三沢(青森)の各航空基地に言及」しているという。さらに報告書は「日本の航空機の大半が地上で失われる」とし、「沖縄や本土の米軍基地が中国軍のミサイルに攻撃される事態を想定」している。その上で「日本の民間空港を軍が使用し、戦闘機がミサイル攻撃を受けるリスクを分散する効果」を強調しているという。
つまり日米中の戦闘は南西諸島だけでなく本土の米軍基地も攻撃対象となり、日米側の戦闘機を損耗する被害を減らすために、民間空港も軍事使用することで「戦闘機がミサイル攻撃を受けるリスクを分散する」というのである。とんでもない話だ。同紙は「米軍や自衛隊の基地のみならず、民間空港も攻撃の対象となる」と警鐘を鳴らしている。
CSIS報告書は米軍、自衛隊の甚大な被害を想定しながら、「基地や民間空港の従業員や周辺住民といった民間の被害については言及していない」。
小西氏は沖縄の被害を以下のように分析する。「有事が起きたらまず宮古島や石垣島に配備されたミサイル部隊が標的になる。(ミサイルは)島中を動き回る移動式なので、民間集落を含めた広範囲に攻撃を受けかねず、被害は甚大になる」と見る。
さらに小西氏はCSIS報告は「台湾有事勃発から一カ月程度を想定したものにすぎない」とし、戦闘が「長期化し、核兵器の使用や原発への攻撃、他国の参戦など事態がエスカレートするリスクは分析していない」と批判する。南西諸島の地域限定戦争に留まらぬ「全面戦争、核兵器使用に向かう可能性は否定できない」と指摘する。
数年続く長期戦
小西氏は東京新聞の記事以外にも情報発信し、その中でCSIS報告が「戦争は初期段階を経た後も終結せず、数カ月あるいは数年間ひきずるかもしれない」と結論付けていることも紹介している。長期戦を想定しているのである。
関連して琉球新報1月3日付に掲載された防衛研究所防衛政策研究室・高橋杉雄室長のインタビューを再掲したい。高橋氏は台湾有事による日米中の戦闘が「半年から1年」さらにそれ以上の長期戦となる可能性を指摘した。その上で「長期戦のリスクはある。勝利しても地域全体が、台湾を含めウクライナのような破壊を受ける可能性が高い。だから抑止が重要だ」と述べていた。
県民、国民の被害を無視
日米の軍事シンクタンクが長期戦を想定しているのである。米CSIS報告は、民間被害に一切言及しなかった。防衛研究所の高橋室長は「中国は非常に精密な攻撃能力があるから(攻撃は米軍、自衛隊が使える飛行場や港湾に収まるので)民間の被害はほとんどない」と無責任に語っている。日米シンクタンク共に民間人被害をほとんど無視している。
高橋氏が述べた「勝利しても」の言葉に注目したい。台湾有事で日米が中国と戦い「勝利する」とはどういうことか。「台湾防衛戦に勝利する」ということであろう。「台湾防衛」が目的化し、半年から1年、それ以上の戦闘で失われる自衛隊、米兵の命、巻き込まれる沖縄、日本の国民の命は度外視していると思えてならない。
「台湾を守る」国民に説明なし
ジャーナリストの布施祐仁さんのインタビュー記事が神奈川新聞に載った。布施さんは「『たとえ日本に大量のミサイルが降り注ぎ、国民が戦火に追われようとも、米国と共に台湾を守るのだ』という説明を政府はしていない。国民との合意もない。」と書いている。まったくその通りだと思う。
昨年末の軍事(安保)3文書で政府は「敵基地攻撃能力保有」を閣議決定した。引き続く年初の日米2プラス2、及び日米首脳会談は「反撃能力(敵基地攻撃)で日米協力」を取り決めた。台湾有事に日米で共同対処しようというのである。中国が台湾に侵攻しようとするのを米軍、自衛隊が武力で阻止しようとすれば、当然、中国との交戦になる。「台湾を守るために日米が中国と交戦し、日本にミサイルが降り注いでいいのか。そのことを政府は国民に説明したのか。説明していない」と布施氏は異議を申し立てているのだ。
中国の軍備増強を背景に日米政府は「中国脅威論」を宣伝し、世論調査で国民も多くが「防衛強化」「敵基地攻撃能力保有」を是認する風潮を誘導している。防衛省、防衛大臣、岸田首相は防衛強化、日米による「台湾有事」抑止をアピールするが、日米のシンクタンクが想定する日米軍の甚大な被害、県民、国民が巻き込まれて犠牲になるリスクについて説明していない。きょうから始まる国会論戦で丁寧に説明してもらいたい。
沖縄戦では4月~6月の3カ月の戦闘で20万人余、県民の4人に一人が犠牲になった。
防衛研究所が「半年から1年、それ以上」、米シンクタンクが「数年間」の長期戦を想定する「台湾有事」の日米中戦争で県民、国民の犠牲はどれほどの数に上るか。それでも「台湾を守る」ために中国との戦争も辞さないのか。政府は説明する責任がある。
◇ミサイル訓練 反対訴え 那覇で集会 市民「不安あおるな」(沖縄タイムス 2023.1.18)
◇那覇避難訓練「中止を」 ミサイル想定 市民抗議、市と面談(琉球新報 2023.1.19)
◇ミサイル避難の訓練中止求める あす実施、市民団体(琉球新報 2023.1.20)
◇那覇市の「国民保護訓練」に抗議 きょう・あす、緊急市民集会(琉球新報 2023.1.20)
◇社説 それで住民守れるか ミサイル避難訓練(沖縄タイムス 2023.1.22)
◇ミサイル避難訓練に83人 那覇で初 周辺で抗議も(沖縄タイムス 2023..1.22)
◇有事想定 住民戸惑い ミサイル避難訓練 / 響く警報物々しく「やりたくない」怖がる子も(琉球新報 2023.1.22)
◇週末の新都心にサイレン 那覇でミサイル避難訓練 市民「慣れておく」 戦争体験者「隠れるところない」(沖縄タイムス 2023.1.22)
◇駐車場で命守れるか 「恐怖あおるな」 市民ら会場外で抗議集会 / 識者談話 訓練、◇実効性に疑問 佐藤学沖国大教授(琉球新報 2023.1.22)
◇避難訓練 自治体拡大も 那覇で有事避難訓練 / 識者「軍備増強へ機運」(琉球新報 2023.1.22)
那覇新都心でミサイル避難
那覇市の新都心地区で1月21日、国・県によるミサイル飛来避難訓練が実施された。実施前に市民が市役所前で連日、スタンディングで抗議し質問状を突き付けた。市からの回答で分かったのは、政府は全国市町村に避難訓練を公募し、那覇市が応募したということだ。県内から与那国町と宮古島市、那覇市が応募したが、宮古島市はその後、辞退したことも報道された。那覇市としては「万が一に備えて市民の被害をできるだけ少なくするため」ということだが、浅はかだったことは否めない。市民、県民の批判は「戦争準備に加担することになる」。ミサイルが飛んで来れば建物もろとも木っ端みじん。「避難訓練は役立たない」の声が上がった。担当課長は、母親から「あんたこんな訓練するの。何考えているの」と怒られたことを抗議の市民に吐露し、タイムス社説に引用された。
沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」に「親ぬゆしぐとぅや肝に染みり」の一節がある。「親の言葉は心に染めなさい」という意味だ。親の言葉が染みたのだろう、担当課長は当日の抗議行動で説明を求められてマイクを握り、「戦争を起こしてはならないという心は一緒」と釈明した。
遺骨の眠る場所
当日の抗議集会で心に染みたのは、戦争体験者の「沖縄戦で大勢が亡くなり遺骨が眠っている場所。ここで戦争を想定する訓練をしてほしくない」という言葉だ。近くにシュガーローフと米軍が呼んだ激戦地がある。多数の日米軍人、民間人が犠牲になり戦闘の過酷さで多くの米兵がPTSDを負った。戦争の記憶は新たな戦争準備のミサイル避難訓練で恐怖を呼び醒まし市民を苦しめている。訓練に参加した市民は施設の地下駐車場にうずくまり頭を覆った。参加した児童(六つ)は「怖かった。こんなことやりたくない」と口にした。
政府の軍事(安保)3文書は継戦能力を重視、長期戦を想定し大量のミサイル生産と沖縄配備を計画している。ミサイルが飛び交う長期戦争を県民が生き残れるはずはない。政府は無益な避難訓練、避難シェルターでなく「戦争の選択肢はない」ことを肝に染めて戦争回避に努力すべきだ。
南西諸島軍事強化トピック(1月16日~22日)
1月16日(月)http://nomore-okinawasen.org/5108/
論壇 与那覇恵子 戦争を防ぐ日中平和友好条約順守 県議会の迅速な可決を(琉球新報 2023.1.16)
自衛隊南西シフトを問う 7 安保「最前線」の現場から(琉球新報 2023.1.16)
社説 懸念深まる軍事一体化 - 日米首脳会談(沖縄タイムス 2023.1.16)
1月17日(火)http://nomore-okinawasen.org/5128/
論壇 宮城恵美子 日本の国防政策 米に従属 排除される国民主権(沖縄タイムス 2023.1.17)
社説 阪神大震災から28年 有事の前に災害に備えよ(琉球新報 2023.1.17)
自衛隊南西シフトを問う 8 CSIS「台湾有事」の想定 被害甚大、秩序保てず(琉球新報 2023.1.17)
小野寺氏 報酬を未報告 元防衛相 辺野古関連業者の財団 事務所「記載は不要」(琉球新報 2023.1.17)
問われる関係妥当性 小野寺氏 辺野古業者の財団評議員 防衛政策に影響力 設立の業者 過去に監視委運営(琉球新報 2023.1.17)
1月18日(水)http://nomore-okinawasen.org/5150/
ミサイル訓練 反対訴え 那覇で集会 市民「不安あおるな」(沖縄タイムス 2023.1.18)
米軍、下地島訓練を通告 日米2+2翌日に 「屋良覚書」守らず 恒常化の恐れ 県は自粛要請へ(琉球新報 2023.1.18)
「民間機限定」国と確認 屋良覚書 県、米軍にも順守要求(琉球新報 2023.1.18)
下地島軍事利用へ布石か 県、訓練計画を警戒 海兵隊が空港使用届 米軍使用位置づけ曖昧(沖縄タイムス 2023.1.18)
追う南西防衛強化 既成事実化 県に警戒感 下地島空港使用通告 「有事想定ルート確認か」(琉球新報 2023.1.18)
1月19日(木)http://nomore-okinawasen.org/5169/
ミサイル配備に反対 県、参院沖北委と意見交換(琉球新報 2023.1.19)
宮古島、ミサイル訓練辞退 反対の市民「那覇も中止を」(沖縄タイムス 2023.1.19)
追う 南西防衛強化 下地島空港の訓練中止 米軍一転「県が認めず」(琉球新報 2023.1.19)
米軍 下地島訓練を否定 空港使用撤回 明言せず(沖縄タイムス 2023.1.19)
追う南西防衛強化 訓練通告 1日で転換 下地島空港使用中止 「米軍、地元反応に驚きか」(琉球新報 2023.1.19)
那覇避難訓練「中止を」 ミサイル想定 市民抗議、市と面談(琉球新報 2023.1.19)
社説 軍事目的は許されない 米軍、下地島訓練否定(沖縄タイムス 2023.1.19)
社説 なし崩しの軍事拠点化だ 米軍の下地島訓練申請(琉球新報 2023.1.19)
1月20日(金)http://nomore-okinawasen.org/5192/
ミサイル避難の訓練中止求める あす実施、市民団体(琉球新報 2023.1.20)
那覇市の「国民保護訓練」に抗議 きょう・あす、緊急市民集会(琉球新報 2023.1.20)
米軍一転 下地島使用せず 「断念」の報道否定▶県に見送り伝達 利用拡大にくぎ刺す県 / 「柔軟な利用必要」 空幕長(沖縄タイムス 2023.1.20)
追う 南西防衛強化 「調整で空自使用可能」 空幕長 災害訓練の実績強調(琉球新報 2023.1.20)
基地のない生活実現へ 第4次嘉手納爆音訴訟 親子2代で被害訴え(沖縄タイムス 2023.1.20)
1月21日(土)http://nomore-okinawasen.org/5214/
島の戦場化に危機感 命どぅ宝の会 来月26日抗議集会(琉球新報 2023.1.21)
反戦千人集会へ 全県組織準備委、来月に(沖縄タイムス 2023.1.21)
空港使用「下地島も」 自衛隊訓練で防衛相(沖縄タイムス 2023.1.21)
民間専用 狭まる包囲網 軍事利用の「解禁」狙う 防衛相 下地島空港発言(沖縄タイムス 2023.1.21)
下地島空港 対象「含む」 自衛隊利用 防衛相明言 平素から(琉球新報 2023.1.21)
ミサイル避難訓練で那覇市議会 市長に申し入れ 自民会派 あらゆる事態想定必要 共産会派 反戦平和の取り組みを(沖縄タイムス 2023.1.21)
追う 南西防衛強化 宮古島、避難訓練を辞退 ミサイル訓練 那覇きょう実施(琉球新報 2023.1.21)
1月22日(日)http://nomore-okinawasen.org/5251/
社説 それで住民守れるか ミサイル避難訓練(沖縄タイムス 2023.1.22)
ミサイル避難訓練に83人 那覇で初 周辺で抗議も(沖縄タイムス 2023..1.22)
有事想定 住民戸惑い ミサイル避難訓練 / 響く警報物々しく「やりたくない」怖がる子も(琉球新報 2023.1.22)
週末の新都心にサイレン 那覇でミサイル避難訓練 市民「慣れておく」 戦争体験者「隠れるところない」(沖縄タイムス 2023.1.22)
駐車場で命守れるか 「恐怖あおるな」 市民ら会場外で抗議集会 / 識者談話 訓練、実効性に疑問 佐藤学沖国大教授(琉球新報 2023.1.22)
避難訓練 自治体拡大も 那覇で有事避難訓練 / 識者「軍備増強へ機運」(琉球新報 2023.1.22)
情報伝達の精度向上必要 稲垣暁さん(琉球新報 2023.1.22)
意外と知らない「有事」の話 飛び交う説 あおる脅威 台湾有事本当に起きる?(沖縄タイムス 2023.1.22)
中国 侵攻より国内優先 抑止の議論 冷静さ必要(沖縄タイムス 2023.1.22)
国防へ「決意」要求焦点に 安保戦略 国会論議へ 政府 世論説得の構え(沖縄タイムス 2023.1.22)
透ける挙国一致の発想(沖縄タイムス 2023.1.22)
自衛隊南西シフトを問う 安保最前線の現場から ⑨ 県の逡巡 上 知事容認巡り 支持層反発も(琉球新報 2023.1.22)
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)
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●ISF主催公開シンポジウム:東アジアの危機と日本・沖縄の平和
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内
「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。