【特集】ウクライナ危機の本質と背景

中国を大切な友とし、「東アジアを平和のセンターに」=青山学院大・羽場久美子名誉教授

羽場久美子

日本の浜田防衛大臣は、今月初めにシンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」で、中国を念頭に「同盟国そして同志国等と地域の抑止力を高める」とする意図を改めて表明しました。これに対し、日本の民間では、政府が反撃能力の保有を認め、専守防衛を形骸化させた動きに強い警戒感を示しています。

青山学院大学名誉教授、世界国際関係学会アジア太平洋会長の羽場久美子氏が6日に中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)のインタビューに対し、陣営対立への加担行為に反対する意を示し、中国を敵視せず大切な友とし、「東アジアを平和のセンターにする必要がある」と呼びかけました。

羽場氏は、中国やグローバルサウスなど新興国の経済成長を背景に、「G7唯一のアジアの国である日本は、G7からG20への先進国の移行を橋渡しし、対立ではなく協調をリードする責任がある」と主張しました。米欧の急激な軍事化については、「中国、インド、BRICSの成長への脅威と対抗心の表れ」と分析しました。ウクライナで起きた戦争は、その本質は「代理人戦争」だと指摘し、米国によるF16戦闘機の供与と訓練や、英国の劣化ウラン弾の供与に代表されるように、G7諸国のウクライナへの武器の大量供与が、ウクライナの人々やロシア人の犠牲を増やしている、武器輸出を止め直ぐに停戦をするべきだと主張しました。

羽場氏は、「日本が今後を考えるとき、貿易の最大相手国中国を敵と定めてミサイル配備するのではなく、中国・インド・東南アジア諸国連合(ASEAN)と結び、平和と安定、繁栄の道を選ぶべきだ」と一連の動きに警戒し、共同を強化するよう呼びかけています。

また、「今日のウクライナは明日の東アジア」という日本のメディアなどで踊る言説を横目に、羽場氏は「ウクライナ戦争が長引くほど、東アジアで台湾問題に関連して中国封じ込めの機運が高まり、米国が日本や韓国、台湾に大量の武器輸出を行うのを有利にしてしまう」と切り込みました。そして、「軍事的緊張はお互いのためにならない、話し合いと友好発展を基調とし、東アジアが世界の経済を助け牽引していくのを使命とすることが重要だ」と訴えています。

羽場氏はさらに「日中韓の市民レベル、若者レベルでの友好と連携の深化」、両国の経済界の間で平和・経済協力関係を発展させる声明の発表などを提案しました。中でも、ボーダー地域にある沖縄を平和のハブとして、欧州のように東アジアの国連組織を作り、平和、発展に貢献することに大きな期待を寄せ、経済、文化、信頼醸成で中国との友好関係の発展や、若者や大学間交流の発展を訴えました。(取材:王小燕)

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羽場久美子 羽場久美子

博士(国際関係学)、青山学院大学名誉教授、神奈川大学教授、世界国際関係学会アジア太平洋会長、グローバル国際関係研究所 所長、世界国際関係学会 元副会長(2016-17)。

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