【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第29回 「欧州最大の原発ザポリージャ をロシア軍が攻撃」 という報道の怪!!

寺島隆吉

研究所2022年の「夏の宿泊セミナー」が種子島&屋久島で開かれ(8月7~11日)、そのためブログを休止せざるを得なかったのですが、やっと再開できます。

岐阜に帰ってきたらすぐにでも再開したかったのですが、屋久島登山の疲れが出たのか、身体が思うように動かず、 16日になってやっと書く意欲・体力が戻ってきました。

セミナー資料や屋久島ツアー用の靴・雨具なども持参しなければならず、そのため重いバッグやリュックを背負っての旅行だったので、なおさら疲れたのかも知れません。

今から考えると、海外旅行の時と同じく大きなトランクまたはスーツケースに必要な資料や衣類を詰め込んで、重いものは機内輸送(あるいはフェリー輸送)してもらえば、自分の持ち物は軽くて済み、軽快な旅ができたのにと悔やまれます。

海外旅行するときは、いつでもそうしていたのですが、国内旅行だからと考えて手抜きをしたのが間違いでした。ですから、いつもだったら参加者全員に配って参照してもらう書籍も最低限しか持っていけず十分な学習・研修にならなかったことを、参加者の皆さんに申し訳なく思っています。

というわけで、やっとブログを再開する意欲・気力が湧いてきたので、以前に知人から送られてきた次の資料を、やっと紹介できるようになったと喜んでいました。

(1)ウクライナのいわゆる「ブチャにおける虐殺事件」は、やはりウクライナ軍の自作自演だった証拠
(2)遺伝子組み換えワクチンはコロナ騒ぎを押さえるどころか、逆に感染者や犠牲者を増やす役割を果たしている証拠

ところが、これらを取りあげて紹介しようと思っていた矢先に、ウクライナ南部のザポリージャ原発にロシア軍が攻撃を加えているというニ ュースが飛び込んできたので、これを放置したまま上記の(1)(2)について紹介するわけにはいかないと思い始めました。

というのは、 大手メディアはもちろんのこと赤旗までも同じ論調なので、実に困った事態です。コロナ騒ぎのときも同じでしたが、このウクライナ問題、ザポリージャ原発でも左翼・リベラルは基本的には同じ体たらくなのです。

たとえば、ネットで検索してみると、 「グリーンピース・ジャパン」という、 従来であれば反体制的(リベラル・左派)だと思われていた団体ですら、 次のような記事を
載せていて驚かされたからです。

*なぜロシア軍はウクライナの原発を攻撃するの?チェルノブイリ、ザポリージャの次に標的になりうる原発は
https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2022/03/11/56074/

大手メディアは「ザポリージャ原発をロシア軍が攻撃している」という論調で一致しているのですが、 上の地図を見れば分かるように、この原発が存在する南部ザポリージャ州エネルゴダール市は、ほぼロシア軍が制圧しています。

このザポリージャ原発を守っているロシア軍(約600人と言われています)が、この原発を砲撃する意味がどこにあるのでしょうか。

また、そもそも自分たちが守っている原発を、どこから砲撃するのでしょうか。

そのうえ、この砲撃で原発が暴走し福島原発事故のようになれば、まず真っ先に被害をこうむるのは、この原発を動かしているウクライナ人技術者と、原発を守っているロシア軍そのものです。

まして、ザポリージャ原発事故は、最悪の場合、ウクライナやロシアどころか欧州全体を死の灰で覆い尽くすことになる可能性もあるのです。

このように考えれば、 「ロシア軍がザポリージャ原発を攻撃している」という考えは、余り荒
唐無稽で、常人では考えられない発想です。

ところが朝日新聞という、日本ではNYタイムズに匹敵すると言われている新聞を初めとする、大手メディアの多くが、何の疑問もなく、このような報道をしていることそのものが、日本の知性の劣化を示していないでしょうか。

ところが調べているうちに、 大手メディアとは違った記事を載せているものがあることに気づきました。『デイリー新潮』(2022/08/06)は次のようになっていました。

*ウクライナ軍が神風ドローンでザポリージャ原子力発電所を攻撃いくらなんでも危険すぎる
https://news.yahoo.co.jp/articles/481f069d4aa4f4559f99f2dee52f17e8c8a71282?page=2

ご覧のとおり『デイリー新潮』は、ザポリージャ原発を攻撃したのは「ウクライナ軍の神風ドローン」だと、はっきり断言しているのです。しかも「いくらなんでも危険すぎる」とも言っているのです。

天下の朝日新聞でさえ言わなかったことを、『デイリー新潮』が明確に述べていることに感激しました。 日本のメディアも、まだ捨てたものではないと思ったからです。

(ちなみに「神風ドローン」は、 特攻隊の「自爆」攻撃からとられた名前で、「自爆ドローン」という意味です。 )

しかし、本文の解説を読んで、がっかりしました。というのは、この原稿の執筆者(藤和彦)
は、次のように記事を締めくくっていたからです。

ロシア軍によれば、その後もウクライナ軍はザポリージャ原子力発電所への攻撃を続けてお
り、予断を許さない状況が続いている。

想像したくないことだが、万が一、ウクライナで戦闘が原因で重大な原子力事故が勃発する
ような事態となれば、その悪影響は計り知れない。

国際エネルギー機関(IEA)は6月30日『2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を達成するためには世界の原子力発電の設備容量を現在の2倍にする必要がある」との報告書を公表した。これを実現するためには原子力への投資額を3倍超に引き上げる必要があるという。

欧米諸国は一斉に「原子力シフト」に舵を切り始めており、日本政府も「今年の冬の電力を確保するため原子力発電所を最大9基稼働させる」との方針を示している。

だが、ウクライナで重大な原子力事故が発生すれば、世界の人々は「原子力発電所は深刻な放射能漏れを起こす危険性がある」 ことを改めて痛感することになり、原子力推進にとって「とてつもない逆風」となってしまう可能性が高い。

これを読んでいただければお分かりのように、この筆者は、ザポリージャ原発事故による死の灰が、ロシアやウクライナどころか欧州全体に及ぶ可能性があることを心配するよりも、この事故が「原子力推進にと って『とてつもない逆風』となってしまう可能性が高い」ことを心配しているのです。

この「締めくくり」に唖然としてしまいました。この筆者の倫理観はどうなっているのだろうと思ったからです。 「ザポリージャ原発を攻撃しているのはロシア軍ではない」とした藤和彦氏の正常な判断力と、最後の「原子力推進へのとてつもない逆風」という歪んだ倫理観に、どのような整合性があるのか、 悩んでしまいました。

藤氏は「国際エネルギー機関(IEA)は6月30日『2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を達成するためには世界の原子力発電の設備容量を現在の2倍にする必要がある』との報告書」を自分の主張のよりどころにしているようですが、IEAという機関そのものに対する疑問は、 一切もっていないようです。

なぜなら「温暖化=炭酸ガス・温暖化ガス」という説は本当に科学的根拠があるのか、という疑問が、最近、多くの科学者から提起されるようになっているからです。

そもそも「2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標」は、 「新型コロナウイルスのパンデミック宣言」と同じく、世界の一握りの支配者・超富裕層による世論操作ではなかったのかという疑問が、近年ますます強まっているからです。

IAEA(国際原子力機関)という国際機関がWHO(世界保健機構)をも支配し、放射能被害を調査させないようWHOに圧力をかけている実態も、ほとんど知られていません。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202011220000/(櫻井ジャーナル2020.11.22)

この藤氏の論考は、この「締めくくり」部分だけでなく、もっと大きな問題をかかえています。というのは、氏はこの論考の前段で次のように書いていたからです。

ウクライナ軍が「神風ドローンで原子力発電所を攻撃する」という極めて危険な行為に及んだのには理由がある。ロシア軍がザポリージャ原子力発電所にミサイルを配備し、そこから近隣地域に砲撃を激化させているからだ。

ウクライナ南部に位置するザポリージャ原子力発電所は欧州最大規模を誇る(原子炉を6基保有し、1基が稼働中だった)。3月4日にロシア軍に制圧された後、 約600人のロシア兵が配備され、 多くの重火器が持ち込まれたが、 ロシア側には 「ウクライナ軍が損傷を与えることを恐れ、反撃を控えるだろう」と考え、原子力発電所を要塞化した可能性が指摘されている。

原子力発電所を「盾」にして一方的に攻撃を仕掛けるというロシア軍の戦術に対し、業を煮やしたウクライナ軍がドローンによるピンポイント攻撃を実施したというわけだ。

要するに、ウクライナ軍がザポリージャ原発を攻撃したのは、ロシア軍が「原発を盾にした攻撃」を展開しているからだ、というわけです。

ウクライナ軍がドンバ ス地方で学校や病院などの公共施設を占拠し、 民間人を「人間の盾」にしてロシア軍の進撃を阻もうとしたこと、そこで多くの残虐行為がおこなわれていたことが、今やロシア軍によって解放された人たちによって、多くの証言がなされてきました。

このことは『ウクライナ問題の正体1,2』でも既に多くの証言を載せています。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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