第29回 「欧州最大の原発ザポリージャ をロシア軍が攻撃」 という報道の怪!!
国際ところが興味深いことに、最近では、アメリカ寄りと言われてきた人権団体「アムネスティ・インターナシ ョナル」ですら、そのことを明言するようになってきています。次の記事は、そのことをよく示しています。
(Ukrainian forces ‘put civilians at risk’–Amnesty 1)(ウクライナ軍は一般市民を危険にさらしている-アムネスティ報告)
(副題)Kiev is routinely using schools and hospitals as military bases, the rights group says(キエフは日常的に学校や病院を軍事基地として利用している―と人権団体が指摘)
https://www.rt.com/russia/560193-amnesty-ukraine-humanitarian-law/Aug 4, 2022
(Amnesty fully ‘stands by’ report on Ukraine 2)(アムネスティはウクライナに関する報告を完全に支持している)
(副題)The report on Ukraine’s violations of humanitarian law was based on an “extensive investigation,” the NGO maintains(ウクライナが国際人権法を犯しているという報告は「広範な調査」に基づいているとNGOは主張)
https://www.rt.com/russia/560333-amnesty-stand-by-report-ukraine/Aug 5, 2022
上記のアムネスティ報告 (1)に対して、ゼレンスキー大統領は「ウクライナに対する極めて悪質な攻撃だ」と口を極めて反論しました。
が、翌日の記事 (2)は、「この報告は『広範な調査』に基づくもの」と、アムネスティがこれに反論したことを示しています。
このようなウクライナ側の劣勢を立て直す手段として新たに考え出されたのが「原発を砲撃の対象にする」という戦術でしょう。
そして「ロシア軍は『人間を盾にする』のではなく『原発を盾にする』という戦術に出た」という大宣伝を始めたというわけです。これはアメリカのブリンケン国務長官の入れ知恵だとも言われていますが、今や欧米のメディアは、これ一色になっています。
しかし、ロシア軍は着実に前進を重ねてきていますから、今さら、わざわざ「原発を盾にする」必要はないのです。
日経新聞(2022/08/14)でさえ、ゼレンスキーの主張に疑問を呈することなく、「ウクライナ大統領、原発攻撃のロシア兵は『特別な標的』」という記事を載せながら、その記事で次のように書いていました。
ウクライナでの交戦は、足元で戦線の中心が同国東部から南部へと移っている。英国防省は14日、「ロシアが過去数週間、ウクライナ南部への部隊再配置を優先している」との分析を公表した。
米紙ワシントン・ポスト電子版は12日、ロシア軍が掌握する南部ヘルソン州で、ウクライナ軍による奪還作戦が失速していると報じた。ロシア軍が戦力を南部に集中するなか、ウクライナ軍は兵器が足りず、全面的な反撃が難しくなっているとみられる。
ご覧のとおり、ウクライナ軍は「ロシア軍が掌握する南部ヘルソン州で、ウクライナ軍による奪還作戦が失速している」 「ロシア軍が戦力を南部に集中するなか、ウクライナ軍は兵器が足りず、全面的な反撃が難しくなっている」のが、現在の実状なのです。
ロシア軍の強さは、アサド大統領の要請によってシリアに派遣され、イスラム原理主義勢力をあっという間に一掃した軍事力によっても示されています。また、イスラエルからシリアに打ち込まれたミサイルの多くを撃ち落としたことで、ロシア製の兵器は世界を驚かせました。
しかし、ロシア軍は学校や病院に立てこもったウクライナ軍を簡単に一掃できる軍事力をもちながら、マリウポリ市のアゾフスタル製鉄所を全面解放するのに何週間もかかったのは、人質にされた民間人を安全に解放するために、 一挙にアゾフスタル製鉄所を攻撃することを控えたからでした。これらのことも前著 『ウクライナ問題の正体2』で詳述しました。
ですから、ウクライナ大統領ゼレンスキーが、「原発攻撃のロシア兵は『特別な標的』」だと言っているのは、ザポリージャ原発を守っている600人の兵士を「神風ドローンで暗殺する」と言っているに等しいのです。
なぜならア メリカの宇宙衛星は、ひとりひとりの行動を監視し標的にできる情報を提供する優れた能力をもっているからです。ルガンスク軍のオルガ・カチュラ大佐(107頁参照)が殺されたのも、その葬式が攻撃されたのも、 同じ手段によるものだと考えてよいでしょう。
そもそも葬式までも攻撃することは「戦争犯罪」なのですが、残念ながらアムネスティ報告には、この葬式への攻撃で多くの民間人が殺されたことは、含まれていないようです。
いずれにしても、ゼレンスキー大統領が言っていることは、ほとんどがプロパガンダであり真実性は乏しいのですが、このことも『ウクライナ問題の正体2—ゼレンスキーの闇を撃つ』で詳述したので割愛させていただきます。
とはいえ、まだまだ語り残したことも少なくないので、機会を見つけて、紹介する予定です。
しかし、今日は昼飯抜きで早朝から頑張ったにもかかわらず時計を見たら、もう18時44分ですから、この続きは次回にします。
(追記)
先にアムネスティ事務局長が「ウクライナ軍が国際人権法に違反して学校や病院などを軍事拠点にして『人間の盾』を利用しながらドンバスを攻撃しているという報告は、綿密で広範な調査にもとづくものだ」と、キエフ政権による批判に全面的反論をしたことを紹介しました。
ところが、つい先日、 「ロシア軍も民間施設を攻撃している」として、自分の主張をトーンダウンさせました。次の記事はそのことを示しています。外部からよほどの強い圧力がかかったということでしょう。
*Amnesty further backtracks on Ukraine human rights report (アムネスティは、ウクライナ軍による人権侵害の報告に、更なる修正・撤回)
Amnesty further backtracks on Ukraine human rights report — RT Russia & Former Soviet Union 14 Aug, 2022
このことについて櫻井ジャーナ ル(2022.08.16)は次のようにコメントしています。
しかし、その報告書は西側の支配層を怒らせるような内容だった。そこでアムネスティへは強い圧力がかかったと言われている。
言うまでもなくアムネスティは巨大な組織であり、それなりの資金を集める必要がある。イギリスの国際開発省、欧州委員会、アメリカ国務省などの各国政府機関、から資金を得ている。
アメリカのアムネスティはロックフェラー財団やフォード財団からも資金を得ている。
つまり、民主主義や人権を掲げる団体のスポンサーとして適切とは思えない組織、投機家で体制転覆家でもあるジョージ・ソロスと緊密な関係にあるNGO団体が、財源として名を連ねている。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」に比べるとマシだとは言われているが、問題は小さくない。
有力メディアでも言えることだが、大口の資金源はそれなりの影響力を持っている。組織へ圧力を加えてくる。
直接及ぼす影響だけでなく、その組織に圧力を加えることができる外部の組織などを通じても
アムネスティはこうした圧力に屈したようで、 自分たちが発表した報告書を外部の「専門家」に検証させるという。有り体に言うなら「検閲」に回したのである。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20220816/
(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体3—8年後にやっと叶えられたドンバス住民の願い—』の第3章から転載)
〇ISF主催トーク茶話会:鳥集徹さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
※ウクライナ問題関連の注目サイトのご紹介です。
https://isfweb.org/recommended/page-4879/
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国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授