【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第30回 ウクライナ軍壊滅の日は近い? 「欧州最大の原発ザポリージャをロシア軍が攻撃」という報道の怪!!②

寺島隆吉

前章では、キエフの政権がウクライナ南部のザポリージャ原発を攻撃し、悪くすると、ロシアやウクライナどころか欧州全体が死の灰におおわれる可能性があることを紹介しました。

これは狂気の沙汰としか思えません。公共施設とりわけ原発を攻撃し、死の灰を自国のみならず他国にまで振りまくことになりかねない戦術は、明らかに戦争犯罪です。

国際人道法(1949年ジュネーブ条約第1追加議定書)で攻撃が禁止されている「危険な威力を内蔵する施設(原子力発電所など)」が攻撃目標になっているからです。

福島の原発事故を考えれば分かるように、その被害は計り知れません。

逆に言えば、ゼレンスキーは、そんな戦術をとらなければならないほど追い詰められているのかも知れません。その証拠の一端は、前章で日経新聞(2022/08/14)が次のように報じていることを紹介しました。

 

米紙ワシントン・ポスト電子版は12日、ロシア軍が掌握する南部ヘルソン州で、ウクライナ軍による奪還作戦が失速していると報じた。ロシア軍が戦力を南部に集中するなか、ウクライナ軍は兵器が足りず、全面的な反撃が難しくなっているとみられる。

 

今まで大手メデ ィアは、「ウクライナ軍は勝利する」「ゼレンスキーは全世界からの支援を受け、正義の戦いをしているからだ」という論調一色だったのですから、これは大きな変化です。

しかし、ゼレンスキー政権の腐敗ぶり、ウクライナ軍の士気の低下は、今やさまざまな情報から明らかになりつつあります。その一部はすでに『ウクライナ問題の正体1・2』で書きましたが、それ以後にも明らかになった事実が少なからずあります。

そこで以下では項を改めて、この点について説明したいと思います。

まず「ウクライナ軍による奪還作戦が失速している」という点ですが、「失速している」どころか、先日、知人から、「ウクライナ軍壊滅の日は近い?」という記事(Yahoo !ニュース
2022/08/08)が送られてきました。

*「ウクライナ軍壊滅の日は近い?ロシアから見える現在の戦況」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71267

それを読んでみると、矢野義昭氏(岐阜女子大学客員教授元陸将補)が、2019年3月4日付『赤星』 紙上に載った「ロシア連邦軍参謀総長のワレリー・ゲラシモフ上級大将が軍事科学アカデミー総会で行った『軍事戦略発展のベクトル』と題する演説」をもとにして、行った戦況分析でした。

その分析の要点は次のようなものでした。

戦争は、NATO側が予期していたよりも早い時期に奇襲的に始まった。当初はキーウ正面に半数以上の約10万人の兵力を集中し、主攻が北部に指向されているかのように欺騙した。

しかし10万の兵力で約300万人の人口を有するキーウを攻略するのは、5倍以上の兵力を必要とする市街戦の攻撃兵力として明らかに過少であり、軍事常識上あり得ない。

すなわち、当初から欺騙行動としてキーウ攻略が実施されたとみるべきであろう。

ロシア軍は、首都防衛にウクライナ側の戦力を拘束しつつ、キーウ攻略が頓挫し撤退したかのように見せかけながら、ウクライナ側の防御が手薄な東部と南部正面に迅速に戦力を転用、集中し、泥濘期明けまでに態勢を固め、予期よりも早く攻勢に出て、東部ドンバスでのその後
の両翼包囲戦を有利に進めた。

つまりロシア軍は首都キーウ(キエフ)を攻撃すると見せかけてウクライナ軍の兵力を分散させ、その結果、ドンバス地区への戦闘はロシアに有利に展開した。

今回のウクライナ進攻作戦を立案したとされるロシア軍参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフ(左)と国防相セルゲイ・ショイグ

 

このように、ウクライナでは、上記のゲラシモフが述べた軍事戦略に沿った戦争指導方針が実践されている。だから「ロシアの勝利は近い」というわけです。

しかし私は、ロシア軍が初戦で首都キエフだけでなくウクライナ全土にロシア軍を投入したのは単なる陽動作戦ではなく、全土に存在している46箇所にも及ぶ生物兵器研究所を急襲し、その証拠品を押収することが目的だったのではないかと思っています。

この目論見は成功し、ロシア軍は国際条約では禁止されている数々の研究がこれらの生物兵器研究所で行れている物証を手にしました。初戦で急速に行動しないと、これらの証拠をアメリカ=キエフ政権は破壊し消滅させてしまうからです。

その証拠に、ヌーランド国務次官は、上院でこのことが問題になったとき、「ロシア軍が物証をつかまないうちに、研究資料その他を一刻も早く廃棄処分するよう指示した」と述べています。

アジア太平洋戦争の末期、 敗戦を間近にした日本軍は、 満州における「731部隊」の細菌兵器研究所を慌てて爆破し、 実験材料にされた囚人を大量殺戮したのと同じです。彼らは「マルタ」と呼ばれ、まさに「丸太」同然の扱いで、 「人間」ではなかったのです。

それはともかく、この46にも及ぶ研究所がア メリカ政府の資金によって運営されていたことは、 重大な問題をはらんでいます。というのは、これらの研究はアメリカ国内で行うにはあまりにも危険だったからこそ、 国外の研究所に「外注」せざるを得なかったのです。

中国=武漢のウイルス研究所も、そのひとつだったのでしょう。最近、インドネシアにもアメリカの生物研究所が存在することが暴露されましたから、コロナウイルスも、アメリカ起源説が出てくるのも、当然かも知れません。

(ロシア軍がウクライナ全土を急襲して手に入れた恐るべき物証については、日を改めて詳述するつもりです。 )

US Maintains Biolabs in Indonesia「米国はインドネシアにも生物研究所を保有していた!」
( 『翻訳NEWS』2022/07/15)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-975.html

Covid-19 may have originated in US biolab – Lancet chair Jeffrey Sachs,who chairs Covid-19 commission at the prestiious medical journal, has claimed the deadly virus did not come out of nature Covid-19「『Covid-19の出処が米国の生物研究所である可能性』 を、 ランセット誌Covid-19対策委員会委員長が発表」( 『翻訳NEWS』2022/07/21)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-980.html

それはともかくとして、 右記の情報を送ってくれた知人は、 矢野氏がYouTube でも発言しているとして次のようなYouTubeの記事(2022/08/13)も紹介してくれました。

*ウクライナ戦争の現況:近づくロシアの勝利
https://www.youtube.com/watch?v=ioguiZ0zUO4

このYouTubeの記事を視聴して極めて興味深かったのは、矢野氏が「元陸上自衛隊陸将補」であり、かつ私が居住している岐阜市内の「岐阜女子大学」特別客員教授であるという点でした。

なぜ女子大学が元自衛官幹部だった人物を客員教授として迎えたのか不明ですが、もっと驚いたのは、このような人物が、私が『ウクライナ問題の正体1・2』で展開したような議論を、番組冒頭で言い始めたことでした。

というのは、いわゆる「ウクライナ危機」はアメリカが2014年に仕掛けた「一種の軍事クーデター」(いわゆる「マイダン革命」 )によって始まったと言っていたからです。それどころか「このクーデターでウクライナはアメリカの傀儡国家になってしまった。だからロシアが危機感をもったのは当然だった」とすら言っていたのです。

ふつう自衛隊幹部と言えば、自民党政権の方針に賛成の人が多いはずです。ところが、氏は、岸田政権がロシア制裁に積極的に参加しているにもかかわらず、ロシアによるウクライナ進攻に一定の理解を示していることは、極めて興味深いことです。軍人だからこそ逆に、事実を事実として認めるちからが養われたのかも知れません。

なぜなら事実を事実として認める力がなければ、戦況を正しく分析できず、結局は戦争に負けてしまうからです。

あるいは、今の自民党政権下では、日本はウクライナと同じように「アメリカの傀儡国家」になっていると考え、定年を待たずに退官したのかもしれません。1950年生まれの氏は、2006年に陸上自衛隊小平学校副校長を最後に退官しているからです。

ここまで書いてきて、ふとアメリカ国防総省(ペンタゴン)の元高官も「ロシア軍は勝利する、ウクライナ南部のオデッサを制圧する日も近い」と発言していることを思い出しました。次の記事がそれです。

Ukraine failed to mount counteroffensive–ex-Pentagon adviser(ウクライナは反撃の開始に失敗した-元ペ ンタゴ ン顧問)15 Aug, 2022
https://www.rt.com/russia/560893-former-pentagon-adviser-russian-offensive/ 

この元ペンタゴン(国防総省)顧問ダグラス・マクレガー大佐は次の副題でも分かるように、ロシア第一革命で革命運動の一拠点となった港湾都市オデッサを制圧する日も近いと言っているのです。

*Colonel Douglas Macgregor thinks that Russian forces could soon go on to seize the port city of Odessa in Southern Ukraine (ダグラス・マクレガー大佐は、ロシア軍が間もなくウクライナ南部の港湾都市オデッサを占領する可能性があると見ている)

この8月15日配信の記事は、湾岸戦争の経験もあるマクレガー大佐が次のように述べた、と報じています。

国防総省の元顧問マクレガー氏は、前線の現状についてコメントを求められた際、ロシア軍の大半は8月の攻勢を再開するために休息を与えられ、 「再整備、再編成」されていると述べた。

その兆候はすでに「特に南部」に現れているという。ウクライナ東部のハリコフ以南でのロシア軍の活動は、後に大規模な攻勢をかけるための予備的な「成形作戦(shaping operations)」 のように見えるという。

そして、「まず南部での作戦があり、その後ハリコフでの作戦がある」と結論づけ、「ウクライナ軍はどちらも阻止できないだろう」と改めて指摘した。

マクレガー氏は、これらの攻勢は「8月末から9月初めには終わるだろう」と予想している。そして、ロシア軍が重要な港湾都市オデッサを占領し、ウクライナは「内陸国」になると予言した。

元国防総省顧問ダグラス・マクレガー大佐。ロシア軍によるオデッサ制圧の日も近い、 と語る

 

このマクレガー大佐の予想 ・予言が当たるかどうかは分かりません。それが正しいことを祈るのみです。

ちなみに、 1905年6月に水兵による反乱が起きた戦艦ポチョムキン号が入港したことで有名になったオデッサは、キエフでのクーデターに抗議して集まった多くの住民が、2014年5月にネオナチ(ステパン・バンデラ派)のグループに大量虐殺されたことで、 再び有名になりました。

大量殺戮の舞台になったのは労働組合会館で、この会館前で抗議集会をしていた民衆をネオナチの武装集団が襲いかかり、会館に逃げ込んだ多くの民衆は、投げ込まれた火炎瓶その他で、生きたまま焼き殺されました。会館の窓から飛び降りて逃げようとした民衆も殴打されて、生存者はほとんど皆無になりました。

この詳細も『ウクライナ問題の正体1・2』に紹介しましたし、オリバー・ストーン監督のドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイヤー』でも、その惨劇の生々しい映像を観ることができます。ですから、オデッサの住民は、ロシア軍による解放をどんなに待ち焦がれていることでしょうか。

日本の大手メディアは「ウクライナ軍は勝利する」と連呼し続けてきたのですが、先述のとおり、日本の元自衛隊高官からもアメリカの元軍人高官からも、それと逆の発言をする人物が現れ始めたことは、実に興味深いことです。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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