【連載】横田一の直撃取材レポート マイナ保険証一本化で岸田首相の詐欺的説明を放置する河野大臣
政治マイナカード利用拡大の旗振り役・河野太郎デジタル相が7月11日夜から約1週間半も外遊。マイナカード総点検の陣頭指揮を取るはずの担当大臣の不在には「現場に丸投げで物見遊山」(日刊ゲンダイ)といった批判的報道が相次ぎ、自民党内からも「いくばくか懸念をもった」(世耕参院幹事長)と苦言が出る始末。そんな無責任ぶりは、外遊出発当日の大臣会見でも現れた。岸田首相の国民騙しの詐欺的説明(「マイナ保険証一本化の大前提は国民の不安払拭の措置の完了」)を放置することに終始したのである。
首相が「措置の完了」といえば、大多数の国民は「対策実施で十分な効果が現れること(国民のほとんどが不安払拭)」も含まれると捉えるが、驚いたことに河野大臣は措置完了時の世論調査を否定。「措置が完了すれば、不安を抱く国民が多数いてもマイナ保険証一本化を進める」という政府方針であることが明らかになった。11日の会見で、河野大臣に筆者が次のような疑問をぶつけたのはこのためだ。
──マイナ保険証一本化に対して不安を抱く人が40~50%、約半分残っていても予定通り進めるということなのか。措置完了時に世論調査などで数値目標を決めることを岸田総理に提案する考えはないのか。
河野 不安を払拭できるようにしっかりと措置を行っていきたいと思う。
──(不安が国民の)半分くらい残っていてもそのまま進めるのか。
河野 無言(司会者が別の記者を指名、私との質疑応答は終了)
岸田首相の問題発言(詐欺的説明)が飛び出たのは、国会が閉会した6月21日。「マイナ保険証一本化の大前提は国民の不安払拭の措置の完了」と会見で述べたのだが、これを朝日新聞は「措置の完了」を省いて次のように報道、政権の詐欺的説明の片棒を担いだ。
「(6月21日の会見で)首相は保険証の廃止について『国民の不安の払拭が大前提』と述べた。すでに決めていた政策に、条件をつけざるを得なくなった形だ」(『朝日新聞』7月4日付)。
しかし詐欺的説明を駆使する岸田首相がいう「不安払拭の措置の完了」と、朝日新聞が報じた「不安払拭」の意味は大きく異なる。「措置の完了」には、国民の大半が不安を払拭しているのか否かのチェック(世論調査による確認)が含まれていないからだ。このことについて筆者が質問したのが6月30日の河野大臣会見。
──「マイナ保険証一本化の前提が不安払拭の措置の完了」(岸田首相会見での発言)ということなのだが、これは国民騙しの詐欺的説明だと思うが、措置をやれば不安が払拭されなくても(マイナ保険証に)一本化するということなのか。それとも、改めて不安払拭されたのかどうかをチェックするということなのか。
河野 発言にはお気をつけいただきたいと思います。しっかりと措置をするということです。
──不安払拭したのかどうかはチェックしないのか。そうしないと、措置をして不安が残っていても(マイナ保険証に)一本化することになるではないか。
河野 無言。
司会 共同さん、お願いします(無回答なのに別の記者を指名)。
──それは詐欺的(説明)になるのではないか。
司会 恐れ入ります。ご理解ください。
──答えていないじゃないか。質問に答えてくださいよ。
河野 無言
聞かれたことに答えない河野大臣に対して筆者は、翌週の7月4日の会見でも同主旨の質問をぶつけた。
──マイナ保険証一本化の大前提である「不安払拭の措置の完了」なのだが、このなかに不安払拭効果のチェック、確認は含まれるのか。つまり措置完了時に何%以下に不安を抱いている人が下がったという確認、調査はするということなのか。
河野 現在ではそうしたことは考えていない。
──ということは不安払拭されなくても措置さえ完了すれば、マイナ保険証に一本化するという理解でいいのか。
河野 すべての人の不安が払拭されたということではない。
──何%ぐらいなのか。1%ぐらいなのか、3%ぐらいなのか。
河野 とくにメドは決めていない。
──数値目標は決めないで「措置の完了」がさも「不安払拭」であるかのような印象を与えて、今日(7月4日)の朝日新聞でも(「首相は保険証の廃止について『国民の不安の払拭が大前提』と述べた」と報道)「不安払拭の措置の完了」が抜けているではないか。「不安払拭が大前提」という記事を朝日が出しているが、まさに国民騙しの詐欺的説明が罷り通っていることにならないか。
河野 (不安)払拭するための措置を行うということです。
──その結果については気にしないと。関係ないと。基準は設けていないということか。
河野 無言(司会が別の記者を指名して質疑応答は打ち切り)
朝日新聞までが岸田首相の詐欺的説明の片棒を担いでいることを指摘しても、河野大臣は「措置を行う」と繰り返すだけ。聞かれたことにきちんと答えない不誠実な姿勢に唖然としながら、3日後の7月7日の会見でも同じ質問をぶつけた。
──マイナ保険証一本化の大前提である「不安払拭の措置完了」だが、大臣は現時点では世論調査、不安が残っている人の調査・チェックはしないということだが、これは「将来的、今後は(不安払拭の世論調査を)やるべきだ」という考えなのか。そうしないと、不安が残っている人が多数いてもマイナ保険証に一本化することになるが、これはおかしいと思わないのか。
河野 はい。不安を払拭するための措置をこれからしっかり行ってまいります。
──(不安が)残っている場合の話を聞いている。それでも一本化するのか。質問に答えてください。全然答えていないではないか。
河野 無言(司会者が別の記者を指名)
結局、河野大臣に4回の会見(6月30日・7月4日・7日・11日)で同主旨の質問をぶつけたが、岸田首相の詐欺的説明を放置する姿勢は同じだ。「マイナ保険証一本化の大前提は世論調査をして大半の国民が不安払拭すること」という解釈変更を岸田首相に提案しないまま、約1週間半の外遊に出かけてしまったのだ。「担当大臣としての職責放棄」と批判されても仕方がない。
これまでの世論調査では「次期総理候補第1位」という結果が出ていた河野大臣だが、このままではポスト岸田から脱落するのは確実。今後、岸田首相に異論を唱えるようになるか否かが注目される。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
●ISF主催公開シンポジウム:東アジアの危機と日本・沖縄の平和
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内
1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。