【特集】終わらない占領との決別

米製兵器爆買いの果てに─米中新冷戦に組み込まれる日本─(前)

望月衣塑子

4.優先すべき支出

高額な米製兵器の購入が政治的バーターだとすると、気になるのが「これらは本当に国防に必要な装備なのか」「ちゃんと使えるのか」という、そもそも論だ。

例えば、陸自が2013~18年にかけて導入した米国製の水陸両用車「AAV7」は1両約7億円。取得費だけで52両、計350億円を超えるが、これは1998年型の時代遅れの代物だ。陸自幹部は「米本国で古くなっているのに、どうしてこれを買うのか」と首をかしげる。防衛省幹部は理由について「共同開発や自前で開発する方がより高くつくから」と釈明するが、この古い機種は実戦で役立つのだろうか。

むしろ、防衛省関係者から聞こえてくるのは「装備の購入よりも優先すべき支出がある」という声だ。ある海上自衛隊幹部は「船や飛行機があったとしても、大事なのは結局、それを動かす人材だ」と話す。

また、陸自隊員たちからは「老朽化している隊舎をまずは改善してほしい」「トイレットペーパーさえ、自前で買わされることもある」などといった嘆きも漏れ伝わる。

防衛省は19年度補正予算で、災害派遣時の簡易ベッドなどに8億円を計上するなど、勤務環境の改善に乗り出したが、米国の歓心を得るため、高額で旧式の兵器を買うことが安全保障につながるのだろうか。日本の自衛隊員のために優先すべきことがあるのではないか、という根本的な疑問が浮かぶ。

20年8月、安倍首相は潰瘍性大腸炎を再発し、任期途中で再び辞任した。「安倍路線の継承」を打ち出して権力を把握した菅政権は、「対米従属&上得意様」路線も継承した。

21年度の概算要求では、自衛隊と米軍の一体化を象徴するいずも型護衛艦の事実上の「空母化改修費」を計上した。いずも型護衛艦を改修すれば、米軍のF35Bも離着艦が可能となる。日本政府が「重要影響事態」と認定すれば、艦上で給油や整備を受けた米軍機がいつでも戦闘に向かえる。実際、防衛省は21年10月、「いずも」を用いて米軍のF35Bを使った発着試験を行った。

※「米製兵器爆買いの果てに─米中新冷戦に組み込まれる日本─(後)」は5月18日に掲載します。

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望月衣塑子 望月衣塑子

東京新聞社会部記者。経済部時代、武器輸出、軍学共同をテーマに取材。モリカケ疑惑では菅義偉官房長官会見で質問し続けた。現在、入管法や外国人、ジェンダー格差などを取材。17年、平和・協同ジャーナリスト奨励賞。

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