【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第33回 ゼレンスキーの後釜は誰か? ロシア国連大使ネベンジャの安保理における演説

寺島隆吉

ところが相変わらず「砲撃をただちにやめるよう」と訴えただけで、その砲撃が誰によっておこなわれたかを明示しないままの訴えですから、欧米のキエフ政権への援助は止むことがなく、したがってゼレンスキー大統領は、聞く耳をもちません。

しかし、ザポリージャ原発ではIAEAの職員も2名が常駐することに決まっていますから、彼らもゼレンスキーの狂気に、 内心はいたたまれない思いをしているに違いありません。

なかには「バイデン大統領はゼレンスキーの勝手な行動をいつまで許しておくつもりなのか」と考えている人がいてもおかしくありません。その証拠に、アメリカの世論も確実に変化しつつあります。

たとえば週刊新潮(2022/09/05)は、 8月10日付けの米誌ニューズウィークが次のような記事を載せたことを紹介しています。

同誌(ニューズウィーク)は 「ゼレンスキーの物語は変化しつつある」 と題する記事を掲載し、ゼレンスキー大統領が米国の最も危険な敵である中国共産党に救いを求めたことに憤懣やるかたないようだと報じている。

米国が国民の血税からウクライナに巨額の支援をしているのにもかかわらず、あろうことか、
さらに同誌はゼレンスキー氏のことを「腐敗した独裁者」と切り捨て、 「ウクライナへの支援は米国の国益に害をもたらすばかりか、ウクライナ国民の窮状を悪化させるだけだ」と結論付けている。ウクライナ危機の下でも、 分断化が進む米国は「一枚岩」になることができない。

今まで欧米のメディアはゼレンスキー大統領を「民主主義の旗手」として持てはやしてきたのに、これは何という変わり様でしょう。なにしろニューズウィーク誌はゼレンスキーを「腐敗した独裁者」と切り捨てているというのです。

しかし、ウクライナの内情を知っているものにとっては、実はこれは衆知の事実でした。

拙著 『ウクライナ問題の正体1,2』でも詳述したように、ゼレンスキー大統領は、野党の全てを禁止すると同時に自分の意見に賛成しないメディアの全ても閉鎖してきたのですから。

それどころか、 政府が半ば公認している「暗殺リスト」(正式名称は「Myrotvorets:ミロトウォレッツ」 )に載せられた人間は、 「国民の敵」として次々と暗殺 ・誘拐・拷問というかたちで消されてきました。それを画像や動画まで付けて詳細に記録したものが、 次の記事です。

“One less traitor”: Zelensky oversees campaign of assassination, kidnapping and torture of political opposition「裏切り者を一人でも減らせ:ゼレンスキーは、 政敵の暗殺・誘拐・拷問といった作戦を指揮・監督していた」( 『翻訳NEWS 』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

上の記事については、 『ウクライナ問題の正体2』 の第3章でも詳述しましたが、つい先日、英ロックバンドのピンクフロイドの元メンバーで有名ミュージシャ ンのロジャー・ウォーターズがその「ミロトウォレッツ」のリストに掲載されたことで話題になったばかりです。

このように、元々はウクライナ国内の政敵を抹殺するための暗殺者リストでした。が、今では国外の人物にまで範囲を広げつつあります。そして、その真っ先の犠牲者が、自家用車を運転していてモスクワ郊外で爆殺された、哲学者アレクサンドル・ドゥーギン(60歳)の娘ダリヤ(29歳)ではないか、とも言われています。

この彼女の死については、稿を改めて論じる予定です。

さて、このようにゼレンスキー大統領の評判は、知る人ぞ知るで、悪くなるばかりです。

かつて日本もアジア太平洋戦争では、負け戦なのに大本営発表では「勝った、勝った」の連呼ばかりでした。

それと同じように、ウクライナ国内でも欧米のメディアでも、 「キエフ軍は勝利している」の一点張りでしたが、実は負け戦で兵員は減る一方ですから、兵士を女性や受刑者たちから補填せざるを得なくなっています。それを報じたのが、先述した次の記事です。

Ukraine replenishes combat losses with convicts and women「ウクライナは兵士を女性や受刑者たちから補填」( 『翻訳NEWS』2022/07/07)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-970.html

この記事は兵士の枯渇を単に「女性や受刑者」から補っているということを述べた記事ですが、実は釈放されて戦場に送られた受刑者というのは、ふつうの犯罪者ばかりではありませんでした。それを実に詳細に述べたのが次の記事です。

These are animals, not people”: Zelensky frees convicted child rapists, torturers to reinforce depleted military「こいつらはケダモノだ、人間じゃない!! ゼレンスキーは、刑務所にいた児童レイプ犯・拷問犯を解放し、枯渇した軍隊を補強する」( 『翻訳NEWS』2022/09/01)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1005.html

トルネード大隊の指揮官ルスラン・オニシェンコ、そしてゼレンスキー夫妻
https://thegrayzone.com/2022/07/30/zelensky-militants-convicted-child-rape-torture-military/

 

ウクライナ軍で「泣く子も黙る」と言われたほど残虐性で最も名高かったのが「アゾフ大隊」でした。ところが驚いたことに、それよりも、さらに残虐性を発揮した部隊があったのです。それがルスラン・オニシェンコを指揮官とする「トルネード大隊」でした。

それが、この記事を読んでの、 私の最大の驚きでした。アゾフ大隊は残虐性で有名だったとしても牢屋に閉じ込めておかねばならないほどではありませんでした。

アゾフ大隊が残虐だったのは主としてロシア語話者に対してだったのですが、トルネード大隊
は一般のウクライナ人に対しても異常な残虐性を発揮し、結局、牢屋に閉じ込めておかねば子どもにまで危険が及ぶと考えられたのです。

その一例が無実の人の残虐な拷問ぶりと児童レイプでしたが、ゼレンスキー大統領は、このような集団でさえ牢から解放し前線に送らねばならないくらいの兵士不足に追い詰められたのです。

釈放された一員には「拷問がなければ、人生は生きているとは言えない」と嘯いている人物すらいることが、この部隊の性格を象徴しています。

この人物はアゾフ大隊と同じように全身、入れ墨だらけですが、ドンバスの戦いでいくつもの「戦争犯罪」の罪に問われ、 2015年に10年の禁固刑を受けていた人物です。その異常ぶりは前頁の写真でも、その一端が分かるはずです。この写真の右下にある身分証明カードから、彼もネオナチ集団の一員だったことも分かります。

 

もうひとつだけ、キエフ政権が兵士の間でさえ信用をなくしていることを次に紹介しておきます。

Ukraine war veterans on how Kiev plundered US aid, wasted soldiers, endangered civilians, and lost the war「ウクライナ戦争退役軍人が語る:キエフは米国支援物資を略奪している。兵士たちを無駄に死なせている。民間人を危険に晒している。そしてこの戦争には負ける」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1015.html( 『翻訳NEWS』2022/09/05)

この記事は何人ものウクライナ兵に取材したものですが、The Grayzone というオンライン誌の冒頭は次のように始まっています。

「武器は盗まれ、 人道支援物資は盗まれ、 この国に送られた10億ドルがどこに行ったのか見当
もつかない」 と、 あるウクライナ人はThe Grayzone に訴えた。

7月にFacebookのメッセンジャーで送信されたビデオでは、 イワン(Ivan)が自分の車、
2010年代初期モデルの三菱のSUVの横に立っているのが見える。リアウィンドウから煙が立ち上っている。

イワンは笑いながら、iPhoneのカメラで車の全長にわたって撮影し、弾痕を指摘した。 「俺の車のターボチャージャーが壊れたんだ。指揮官は、 修理代は自前だと言う。だから、この戦争で自分の車を使うために、自分のお金で新しいターボチャージャーを買わなければならない
んだ」と車の前部をiPhone で撮影しながら言った。

イワンはiPhoneを自分の顔の方に向けた。そして「このクソ国会議員どもよ、お互いにファックし合え。悪魔どもめ。お前らが俺たちと代わればいいんだ」と言った。

 

この記事は、イワンという兵士(仮名)がキエフ政権や国会議員たちの腐敗ぶりに嘆きかつ怒っている様子を、次のよう描いています。

 

先月、 ウクライナの国会議員たちは自分たちの給料を70%アップさせることを投票で決めた。アメリカやヨーロッパから何百億ドル、何十億ユーロという援助があったからこそ、 このような昇給が可能になり、昇給されたことが資料で示されている。

「私たちウクライナ兵は何も持っていません」とイワンは言う。 「兵士たちが戦争で使うために与えられているものは、 ボランティアから直接来たものです。政府に行く援助は、決して私たちには届かないのです」

さらに、この記事は、イワンが語った次のような驚くべき事実も暴露しています。

「私は指揮官のもとへ行き、状況を説明しました。私は、この陣地を保持するのは困難であると伝えました。ここは戦略的に重要なポイントであることは理解しているが、我々の部隊は壊滅状態であり、救援は来ない、と伝えました。

10日間で15人の兵士がここで死んだが、 すべて砲撃と榴散弾が原因です。 私は指揮官に、 もっとましな塹壕を掘るために重機を持って来られないかと頼んだが、 ロシアの砲撃で重機が損傷
する恐れがあると言って断られました。彼はここで15人の兵士が死んだことを気にしていないのだろうか」

「ウクライナ兵が直面している状況をアメリカ兵に説明しようものなら、正気ではないと思われるでしょう」とイワンは言う。

「 『俺たちは戦争で自家用車を使い、 修理代や燃料代も自分たちで負担しているんだ』 とアメリカ兵に言うことを想像してみてください。防弾チョッキもヘルメットも自分たちで買っている。監視道具もカメラもないから、兵士は頭を出して何が来るか見なければならない。つまり、いつロケットや戦車に頭を切り裂かれるかわからないのです」

 

この記事では他の兵士が語るさらに驚くべき事実や、アメリカからやってきた医師が目撃し体験した事実も、次々と紹介されています。

しかし、またもやじゅうぶん長くなりすぎていますので、今回もここで止めさせていただきます。ぜひ左記のURLにクリックして、その全文を読んでいただきたいと思います。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1015.html( 『翻訳NEWS』2022/09/05)

それにしても、こんな状態ではキエフがモスクワに勝利できるはずはないのです。だからこそ原発攻撃という「狂人理論」 「狂犬戦術」に訴えねばならないのでしょう。

そのためには自分の意見に逆らうものは次々と解雇し、 自分の言うことだけを聞く人物を次のポストに据えねばなりません。まさにヒトラー並みの「独裁者」です。

しかし、このような人物にそろそろ見切りをつけるべきだという世論も出始めています。

それが先に紹介した8月10日付けの米誌ニューズウィークでした。

ところが9月7日付けのRT記事では、ゼレンスキー大統領を次に誰とすげ替えるか、その人選がすでに始まっているというのです。たとえば、ドイツの新聞Bild では、その固有名詞すらもあげられているのです。

ですから、本当はその内容もここで紹介したいのですが、今朝1時から起きてこれを書き始めたので私の気力体力もここで力尽きました。今度こそ「翻訳グループ」の皆さんにお願いしたいと思います。

いずれにしても、ゼレンスキー大統領に黄昏の時が近づいていることだけは確かなようです。とはいえ、 権力欲も人一倍強い彼が、そんなに簡単に自分の地位を明け渡すとも思
えません。

しかしその時を少しでも早めることが、ウクライナに住むひとたちだけでなく、東欧や欧州を「核の冬」から救う最善の方法ではないでしょうか。

誰が次のウクライナ大統領か、すげ替えはいつか?ドイツ紙Bildが推す将軍ヴァレリー・ザルツィニー(Valery Zaluzhny)

 

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体3—8年後にやっと叶えられたドンバス住民の願い—』の第7章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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