【連載】横田一の直撃取材レポート

岸田・河野の国民騙し マイナ保険証強行の詐欺策動 コンビニ業界との協定締結式に臨んだ河野太郎デジタル相/2023年6月27日(上)

横田一

国民の不安払拭の「措置の完了」
 世論調査で「次期総理候補第1位」に挙がっている河野太郎デジタル担当大臣が、マイナカード利用拡大の旗振り役となって評価がガタ落ちし、“売り”の突破力が裏目に出て政治家としての資質にも疑問符がつき始めている。

河野大臣は7月11日から12日間の外遊(北欧・中東)に出発したが、マイナカード総点検の陣頭指揮をとる立場にある担当大臣の“外遊三昧”には「現場に丸投げで物見遊山」(日刊ゲンダイ)といった批判的報道が相次ぎ、自民党内からも「いくばくか懸念を持った」(世耕弘成参院幹事長)と苦言が出る始末。

そんな当事者意識の欠落は、外遊出発当日の大臣会見でもはっきりと現れた。岸田首相の国民騙しの詐欺的説明を放置する無責任体質が露わになったのだ。

岸田首相の問題発言が飛び出したのは、国会が閉会した6月21日の記者会見。マイナ保険証一本化の大前提は「国民の不安払拭の措置の完了」と述べたのだが、これが政府に都合がいい抜け道を作る詐欺的説明だった。最高権力者が「措置の完了」と言えば、多くの人は「不安払拭対策の実施で十分な効果が現れること(世論調査で不安を抱く国民がほとんどいなくなること)」と理解するに違いない。しかし実際は「対策さえ実施すれば、多くの国民が不安を抱いていてもマイナ保健証一本化を行なう」という内容だった。尋常な精神では思い浮かばないような解釈に基づいて岸田首相は、国民に誤った印象を与えようとするペテン師紛いの言動をしていたのだ。

この問題発言を追及したのが6月30日の河野大臣会見。ここで私は、岸田首相発言を「国民騙しの詐欺的説明だと思う」と指摘したうえで、「措置をやれば不安が払拭されなくても(マイナ保険証に)一本化するということなのか。それとも、改めて不安払拭されたのかどうかをチェックするということなのか」と聞いた。これに対して河野大臣は「発言には気をつけていただきたいと思います。しっかりと措置をするということです」とやや逆切れ気味に“紋切型回答”をするだけ。

質問に答えていないので「不安払拭したのかどうかはチェックしないのか。そうしないと措置をして不安が残っていても(マイナ保険証に)一本化することになる」と確認の質問をしたが、それでも河野大臣は無言のまま。そこに助け舟を出すように司会者が「共同(通信)さん、お願いします」と別の記者を指名、私との質疑応答を打ち切ろうとしたので、「それは詐欺的(説明)になるのではないか」「質問に答えてください」と抗議したが、河野大臣からは一言も返ってこなかった。

平然と質問をスルーする河野大臣に唖然としながら私は、翌週の7月4日の会見でも同主旨の質問を、若干の説明を加えてぶつけた。まず「措置完了時に『不安を抱く人が何%以下に下がった』という調査はするのか」と切り出すと、河野大臣は「現在ではそうしたことは考えていない」と回答。そこで「不安払拭されなくても措置さえ完了すれば、マイナ保険証に一本化するという理解でいいのか」と確認すると、河野大臣は「すべての人が不安払拭されたということではない」と答えた。

ようやく質疑応答がかみ合い始めたので、さらに「(不安を抱く国民は)何%ぐらいなのか。1%ぐらいなのか、3%ぐらいなのか」と数値目標(基準)についても聞いたが、「特に目途は決めていない」と河野大臣は答えた。

この開き直りにも唖然とした。デジタル庁は民間出身者が多いことで有名だが、そのトップの河野大臣は民間企業ではあり得ない感覚の持ち主だった。具体的な数値目標の設定(実施する対策の効果確認)をしない会社経営者など見たことがないからだ。河野大臣は結局、「措置の完了」がさも「不安払拭」と印象づける岸田首相発言を受け売りして事足りるかのようだった。

会見当日の朝日新聞には「不安払拭が大前提」と、河野大臣や岸田首相の詐欺的発言を丸呑みするように書かれていた。それを指摘したうえで、「まさに国民騙しの詐欺的説明がまかり通っているのではないか」とさらに迫ったが、それでも河野大臣は「(不安)払拭するための措置を行なうということです」としか答えなかった。

お決まりの“紋切型回答”の連発に呆れながらも私は「(世論調査)結果については関係ないと。基準は設けていないということか」と畳みかけたが、ここでも河野大臣はもう一つの得意技である“ダンマリ戦術”。司会者も別の記者を指名する常套手段を駆使、私との質疑応答は打ち切られたのだった。

ペテンに乗った大新聞
 岸田首相の詐欺的説明の片棒を大新聞が担いでいることにも驚いた。前述の朝日新聞の記事は明らかな誤報だ。「(6月21日の会見で)首相は保険証の廃止について『国民の不安の払拭が大前提』と述べた。すでに決めていた政策に、条件をつけざるを得なくなった形だ」と報じたが、「不安の払拭」ではなく、岸田政権のひとりよがりの解釈が可能な「不安払拭の措置の完了」である。言葉を省いた結果、読者に誤った事実を伝えることになった。

先に述べた通り、「措置の完了」には国民の大半が不安を払拭しているのかチェック(世論調査による確認)が含まれていない。「措置が完了すれば、不安を抱く国民が多数いてもマイナ保険証一本化を行なう」というのが岸田政権の方針なのだ。対策実施だけでマイナ保健証一本化は可能で、不安の払拭自体は前提条件ではない。

騙されたのは朝日新聞だけでなく、東京新聞も「不安の払拭が大前提」と報道。だからこそ私は、岸田首相の詐欺的説明について河野大臣会見で何度も質問したが、それでも納得のいく回答が返ってくることはなかった。

7月11日の会見では少し聞き方を変えた。「マイナ保険証一本化で不安を抱く人が40~50%残っていても予定通り進めるということなのか。措置完了時に世論調査等で数値目標を決めることを岸田総理に提案する考えはないのか」と聞いたのだが、河野大臣は「はい、不安を払拭できるようにしっかりと措置を行なっていきたいと思う」とこの日も“紋切型回答”が返ってくるだけ。再質問をして確認しても、河野大臣はダンマリで、すかさず司会者が別の記者を指名する恒例のパターンで私との質疑応答は終了した。

結局、河野大臣に4回の会見(6月30日・7月4日・7日・11日)で同主旨の質問をぶつけたが、岸田首相の詐欺的説明を受け売りする姿勢は同じ。民間企業マインドを取り入れることを“売り”にするデジタル庁のトップなのに「世論調査で大半の国民が不安払拭していることを確認してからマイナ保険証一本化をするべき」という正論を無視して、岸田首相に詐欺的説明の撤回を求めないまま、外遊で日本を離れてしまったのだ。「担当大臣としての職責放棄」と批判されても仕方がないのだ。

<(下)に続く>

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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