【連載】横田一の直撃取材レポート

岸田・河野の国民騙し マイナ保険証強行の詐欺策動 コンビニ業界との協定締結式に臨んだ河野太郎デジタル相/2023年6月27日(下)

横田一

河野大臣は問題を理解していない
そもそも河野大臣は、マイナカードの根本的問題(ボタンのかけ違い)を理解しているとは言い難い。利便性が乏しいマイナカードを、巨額の税金投入と現行の紙の保健証廃止(マイナ保健証一本化)で強行する致命的問題(欠陥)から目を背けているともいえる。

このことをいち早く指摘していたのが、ソフトウェア開発の「サイボウズ」の青野慶久社長。昨年12月10日の第4回「武蔵野政治塾」で、菅義偉前首相と河野大臣への失望感を口にしながら、非効率なマイナカードの抜本的見直しを次のように訴えていたのだ。

「『マイナンバーはいいから、マイナンバーカードは止めませんか』と言っているのですが、いったん走り出すと、止まらない感じですね。菅さんが総理になったとき、マイナカード見直しの改革をやってくれるのかなと思ったのですがダメでした。デジタル庁ができて、改革派の河野さんが大臣になったのでまた期待したけど、河野さんはさらにアクセルを踏んで、投入される税金がどんどん増えていく。『非効率なものは止めようよ』と言っているのです」

「(マイナカードは)利便性が低くて使いにくいから、みんな作らないわけでしょう。解決すべきはそちらなのに(マイナ)ポイントをあげるとかやっている。利便性の低いカードを無理やり配るのはなぜなのか。それでお金を儲けている方がいるのか」

マイナカード関連事業(利権)に群がるITゼネコンの存在を示唆した青野社長はマイナ保健証一本化にも反対していた。

「健康保険証とか運転免許証とか、日本には割合と普及しているものがすでにあるのですから、そこをバージョンアップすればいいのに、新しいカードをゼロから作って全員に配ろうとしている。穴を掘って埋める感じです」

まさに正論だ。河野大臣が青野社長と意見交換をしてマイナカードの抜本的見直しをすれば、再び総理大臣候補として浮上する可能性もありそうだが、現時点ではその兆しは全くない。それどころか、かつては税金の無駄撲滅が“売り”だった河野大臣が、いまでは血税浪費の代表選手のような存在となっている。マイナポイント付与で1兆円以上の血税を注ぎ込んでマイナカード普及を進めたのに、問題噴出で返納運動が活発化しているからだ。しかも返納してもマイナポイントは使える。岸田政権を挙げて国民の税金をドブに捨てるような政策を進め、その先頭に立っているのが河野大臣という体制であるためだ。

しかし河野大臣からは血税浪費に対する後ろめたさはほとんど伝わって来ない。6月9日の会見で、「『マイナカード返納運動』怒れる国民が動き出した」と銘打った「週刊ポスト」の記事について聞いても、河野大臣は「記事を読んでいない」としか答えない。そこで、「マイナポイントを使った後でも返納運動ができる」という記事のポイントを伝えたうえで、「こういう運動が起きていることへの受止めを」と再質問をしたが、それでも河野大臣は「特にない」としか答えなかった。

この後も河野大臣は、7月8日に静岡市内で「返納が増えているというが、本当に微々たる数だ」と発言すると、翌9日にも兵庫県洲本市で「返納についてはほとんど数がないと聞いている。問題ではない」と強調するなど、マイナカード利用拡大の牽引車役をしてきたことへの反省も謝罪もなかった。

 

マイナ問題が岸田政権を追い込む
マイナ保健証一本化への不安の声に耳を傾ける姿勢も皆無だった。5月30日の会見で、「消える健康保険証」と銘打った5月29日の毎日新聞の記事を挙げ、「健康保険証廃止の発端が河野大臣で、しかも経済ジャーナリストの声として『手続きが難しい弱者置いてきぼりの社会保障』と(記事の中で)批判しているが、介護現場や弱者から疑問や不安の声が出る中でも(健康保険証)廃止法案をこのまま押し通す考えなのか。見直す考えはないのか」と聞いたが、河野大臣からは否定的な回答しか返ってこなかった。

「いまマイナンバーカードを保険証として活用することは、多くの国民の皆様にたくさんのメリットを享受していただくことができる。不安を持たれている方にはしっかりと説明をし、また問題が起きないような対応をしながら進めていきたいと思う」

そこで「まだ介護現場でも不安や疑問や反対の声が残っている。それでも(マイナ保健証一本化)法案を強行採決するつもりなのか」とも質問したが、河野大臣は「法案の審議はいま国会で、議会で行なわせている。施行までにそうした不安が取り除けるように努めていきたいと思う」と答えるのみ。

6月2日の大臣会見でも「介護現場が納得不十分だと指摘し続けた場合は、保険証を廃止しない、一本化を先送りしていくという理解でいいのか」「介護現場の反対、疑問の声はいまだに非常に強いと思うが、その団体を納得させられなくても、ゴリ押しするのか」とも聞いたが、ここでも河野大臣は「そうしたことにしっかりと対応できるように、厚生労働省でやってくれると思っている」と答えるだけだった。

マイナカード利用拡大の方針を変えない岸田政権に対して、立憲民主党などの野党は対決姿勢を強めていた。医療現場の関係者からのヒアリングを実施、次期総選挙での大きな争点の一つになると位置づけているのだ。

しかし立民のヒアリング内容(6月15日)について河野大臣に聞いても、強行姿勢に変わりはなかった。大臣会見で「1年では不安は解消しない。長期間にわたって(紙の保健証との)併用を検討するべきだ」「今の制度については一時運用停止、一度立ち止まって抜本的に考え直してほしい」という声が医療現場から出ていることを紹介し、「こうした声を無視するのか」と質問しても河野大臣は「すでに800万件以上、1カ月で使われている。しっかりと国民の皆様の不安解消が出来るように努力していく」とメリットを強調しながら見直しを否定したのだ。

岸田首相が解散をうかがっていた通常国会の終盤、マイナカード問題に関する立民ヒアリングを終えた柚木道義衆院議員は「内閣不信任案が出て解散・総選挙に岸田総理が逃げ込む場合は、まさに『マイナ問題隠し解散』に私はなると思う」と語った。「マイナカード問題は大きな争点になるのか」と聞くと、柚木氏から次のような答えが返ってきた。

「大きな争点になる。国民の76%が『マイナンバーカードは不安』と答えているが、おそらく『マイナ保健証だけではなくて今の保健証も併用で使えるようにしてくれ』という声とも思っている。これがまさに『令和の消えた年金問題』だと思う」

「これは政府の面子ではない。国民の生活を優先してほしいと。『(過ちは)改めて憚ることなかれ』と思う」

通常国会での解散が見送られた今、永田町の最大関心事は「岸田首相が秋の臨時国会で解散に踏み切るか」となったが、6月の場合と同様、マイナ問題が一大争点になるのは確実だ。

6月30日に立民の長妻昭政調会長は、現行の紙の健康保険証廃止(マイナ保健証一本化)を延期する法案を臨時国会に提出する考えを表明、秋に向けて与野党激突の気運が強まっている。ただしマイナ保健証一本化に賛成した維新と国民民主党は「第2自民党(ゆ党)」と呼ぶのがぴったりの政権補完勢力化しており、永田町では「自公+ゆ党(維新と国民民主)vs野党連合(立民・共産・れいわ・社民)」という対決の構図が鮮明になりつつあるのだ。

マイナ問題が最大の政治課題となる中、ウルトラCの解散戦略が永田町で囁かれている。内閣支持率下落から脱するために岸田首相が内閣改造で河野大臣を更迭、マイナ保健証一本化の延期(紙の保健証との併用)を打ち出して臨時国会で解散・総選挙に打って出るというものだ。

立民の延期法案を先取りして反転攻勢に出る奇策だが、追い込まれた岸田政権がどう動いても不思議ではない緊迫した状況になりつつある。9月召集の臨時国会に向けて、永田町から目が離せない。

(月刊『紙の爆弾』2023年9月号より)

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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