BRICS+の登場と前途に待ち受ける危機
国際冒頭の写真:8月のBRICS首脳会議に参加した、加盟5ヵ国の首脳。ロシアだけはプーチン大統領の代わりにラブロフ外相を送った。
8月22日から3日間、南アフリカのヨハネスブルクで開催された第15回BRICS首脳会議は、それまで注目度の割にはさほど実態が伴わなかったこの機構が、2009年の初の首脳会議(注=南アフリカは2011年に加わり、それまではBRICという呼称)以来、最も関心を集める結果となった。言うまでもなく新たに6ヵ国(アラブ首長国連邦、アルゼンチン、イラン、エジプト、エチオピア、サウジアラビア)が加盟し、一挙に拡大を遂げたからだ。
しかも今回加盟を申請したのは23ヵ国を数え、加盟に関心があるとされるのは44ヵ国にものぼり、今後もBRICSが拡大を続けるのは疑いない。だが、拡大したBRICS(以下、BRICS+と表記)へは、米国の一極支配や集団的西側の覇権に批判的な論者から「期待」が表明される一方で、欧米の主流派メディア(MSM)を中心に否定的な論調が目立つ。
BRICS+を積極的に評価する側は、「欧米による残忍な抑圧と植民地主義にさらされた世界」の「搾取システムの解体を加速」することで、「米国主導の西側にとっては完全な災難」(注1)になるだろうと見なす。のみならず、その経済力は「世界基軸通貨としての米ドルの座を奪い、世界秩序に対する重大な変化を実現可能にする」(注2)という。
これとは対照的に米国のBRICS+への反応は否定的で、余裕すらも感じさせた。国家安全保障問題担当大統領補佐官のジェイク・サリバンは、8月22日にホワイトハウスで開かれた記者会見で「我々は、BRICSが米国や他の誰かに対する地政学的ライバルに進化するとは考えていない」と断言。「現在のバージョンでは、ブラジル、インド、南アフリカの民主主義国家など、非常に多様な国のコレクションが含まれている。独裁国家としてのロシアと中国は、インド太平洋、ウクライナ戦争などの重要な問題や、その他さまざまな点で(他の3カ国と)見解の相違がある」(注3) として、「不一致」を強調した。
こうした主張は、欧米の言論空間においても共通している。AFPは8月29日付の配信記事で「ワシントンでは中国が支援するクラブが差し迫った脅威だと考える人はほとんどいない」(注4)と指摘しながら、2人の識者の以下のようなコメントを引用している。
「米国平和研究所のエコノミスト、ヘンリー・トゥゲンドハット氏は、中国がBRICSの拡大を推進したことで、BRICSの結束力が不注意にも弱まってしまったと指摘する。『印象的なのは、BRICSが一致しない問題がたくさんあるということだ』」
「元CIAのアナリストで、現在は大西洋評議会に所属するコリーン・コトル氏は、中国にとってBRICSの拡大は、具体的な協力計画というよりも、発展途上国が自国の側に結集していることを示す『レトリックのため』だと述べた」
「不一致」を超えたメリットを追求
こうした言説とは裏腹に、米国が内心で抱えている不快感を想像するのは困難ではない。その最たるものは現在、米国がNATOと共にウクライナを支援して軍事的打倒を目指すロシアと、前大統領ドナルド・トランプが開始した半導体輸出規制をさらに強化しながら、将来の武力衝突を想定してその周辺の軍事力を強化している中国に対する「二重の封じ込め」(double containment)が事実上無視された。その中露が主導しているのは明白であるにもかかわらず加盟希望国が相次いでBRICS+へと発展し、さらに今後の拡大も確実視されているというのだから。
のみならず、新加盟国にイスラエルを除く中東有数の同盟国で、米軍の基地や施設を受け入れ、軍隊も米国製兵器に多くを頼っているサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)、エジプトの3ヵ国がそろって顔をそろえた。しかも中東最大の敵国で、これもトランプ時代から徹底した孤立化政策と格段の経済制裁の対象にしているイランと手をたずさえてだ。それでも米国が同盟関係にある3ヵ国に正面切っての抗議もできず、他の加盟希望国に対して格別睨みも利かせられない。「対テロ戦争」時のように他国へ「我々の側か、それとも敵の側か」と正面から迫る恫喝じみた対応は、もはや影をひそめてしまったかのようだ。
そもそも欧米が揶揄するBRICS+の内部的「不一致」は、元加盟国や新加盟国にとって百も承知だ。元加盟国ですら事実上米国とNATOを丸ごと相手に戦争中のロシアと、米国や欧州との交易のウェイトが高い他の4ヵ国がすべての面で「一致」できるはずもない。11ヵ国の内部では生起する問題への対応やスタンスをめぐって少なくない不協和を抱えており、安易に乗り越えられそうもない対立すら存在する。それでも「多様性」という理念を掲げながら、個々の加盟国の計算で獲得できるだろうメリットに賭けているのだ。
拡大が、「拡大前に(5ヵ国の)グループが持っていたわずかな結束を損なうだけだ」(注5)というリスクを抱えているのは確かだろうが、重要なのはなぜこの時期に米国の同盟国を含むBRICS+が登場したのかという点だ。
その理由の第一は、米国主導の対ロシア経済制裁に加わっているのはG7を中心に国連加盟国193のうち40数ヵ国に過ぎない事実が示すように、欧米が支配的な世界秩序に不満・反感を持つ勢力が、グローバルサウスを筆頭に厳然と存在するからだ。そこでは「IMFや世界銀行等の金融機関が、米国と帝国主義勢力が他国の資源管理を通じ、経済的優位性を維持するために利用する手段となっているという、まったく正確な認識」(注6)が共有されている。そのためIMFと比べて貸出量は現時点で及ばないが、新開発銀行(NDB)という新たな金融機関を有し、「公正・公平な国際的機構」を目指す欧米以外の多国籍機構としてBRICSに期待が集まらなかったら、むしろ不自然だろう。
「ドルの兵器化」に対する共通の恐怖
第二に、BRICS+は加盟国の同床異夢の現状は否定できないが、総意としてNATO(EU)やG7に対抗するような地政学的ゲーム上の「反西側」のブロック化を志向しているわけではない。むしろ大国間の争いに巻き込まれるのを避けながら、「反西側」というより「非西側」のスタンスで新たな国際金融システムの確立に最大の努力を注入している。それが加盟にあたり、各国の余計な「政治的配慮」を必要としなくしているといえる。そこで大まかなコンセンサスと認識されているのは、①ドルの過度の支配是正②すべての国々の「共通の繁栄」③国連中心主義④外部からの干渉の拒否であり、集団的西側(The Collective West)以外は歓迎するはずだ。
第三に、上記と関連するが米国による経済制裁を回避するという必要性だ。米国は昨年2月にロシアがウクライナに侵攻した直後、ロシアの6400億ドルの金・外貨準備のほぼ半分を違法にも差し押さえた。だがこの措置は、ロシア以外の国々を脅かす結果となる。
「バイデンチームはロシアの海外準備金を不法に差し押さえ、金融決済システムであるSWIFTからロシアを追放し、その効果でプーチン大統領の引きずり下ろしが期待されるほどに完全な貿易封鎖を実施した。それが間違いだった。世界の他の国々も、次は自分たちの番だと理解した。西側の金融略奪に抵抗する組織が必要となった」(注7)
冷戦時代からの「非同盟路線」から米国との同盟強化路線に大きく切り替え、米英とオーストラリア、日本から成る事実上の反中国連合である「4ヵ国戦略対話」(QUAD)への参加にも踏み切ったインドの首相ナレンドラ・モディにとってすら、「ドルの兵器化」と呼ばれる経済制裁は恐怖だ。「将来、(ロシアのように)これほどの規模の外貨準備高が凍結されるような事態を避けるために、必要なことは何でもしなければならない」(注8)と考えているとされ、BRICS+という存在が経済制裁という「ドルの兵器化」に対処する上で重要視されるようになった。
ただ当面、BRICS+がどこまでドル支配の重圧を回避できるかについては、未知というしかない。BRICS+は今後、加盟国内の温度差を抱えながらもNDBを利用し、すでに始まっている加盟国間の貿易決済におけるドルから各国通貨への切り替え拡大や、新たな加盟国間の取引に使用される「共通通貨」の創設を柱とする開発途上国のニーズにも適した「国際金融・通貨制度の改革」を目指す。成功すれば「脱ドル化」(De-dollarization)に弾みがかかるが、それがいつになるのかは予測困難だ。
またBRICS+が、米国の世界支配の手段として猛威を振るう恣意的な経済制裁を回避する手段を生み出せるのかについても、現時点では不確かだ。BRICS+で経済危機にあえぐアルゼンチンやエチオピアらが、BRICS+でいかなる効果を享受できるかについても同様だろう。
BRICSが経済力でG7を追い抜くことを示すグラフ。
(https://www.silkroadbriefing.com/news/2023/03/27/the-brics-has-overtaken-the-g7-in-global-gdp/)より転用。
メガトレンドではBRICS+がG7より有利
短期的には、BRICS+の「国際金融・通貨制度の改革」が軌道に乗ったとしても、世界が目撃するのは「相対的多極化」に過ぎず、「米国の影響力の衰退」という認識もある程度まで定着しようが、欧米と非欧米の力関係が逆転するような事態は望めまい。それでもメガトレンドに視点を移すなら、時間はNATOやG7に象徴される集団的西側ではなく、BRICS+に味方するように思える。
購買力平価(PPP)で換算したGDPでは、2023年にBRICSの5ヵ国で56兆ドルに達し、G7合計の52.4兆ドルを抜く見込みだ。さらにIMFの予測では5年後の28年に、世界経済で占めるPPP換算のGDPの割合でこの5ヵ国は33.7%となり、G7は27.8%と両者の差は拡大していく。(注9)これがBRICS+との比較になれば、さらに差がつくだろう。
こうした長期展望でのBRICS+の優位をさらに裏付けているのは、ゴールドマン・サックスが2022年12月6日に刊行した未来予測である『The Path to 2075 — Slower Global Growth, But Convergence Remains Intact』(注10)だ。それによると、中華人民共和国が建国100年を迎える2049年の翌年の2050年には、GDP比較で1位が中国で米国は2位に落ちる。3位以下インド、インドネシア、ドイツ、日本、英国、ブラジル、フランス、ロシア、メキシコ、エジプト、サウジアラビア、カナダ、ナイジェリアがベスト15入りしている。インドネシアは現時点でBRICS+への加盟が確実視されているが、グローバルサウスを含めると9ヵ国を占め、G7の6ヵ国に差を付けている。
さらに2075年になると、中国とインドが1位、2位を占め、以下米国、インドネシア、ナイジェリアがベスト5に入り、続いてパキスタン、エジプト、ブラジル、ドイツ、英国、メキシコ、日本、ロシア、フィリピン、フランスの順で、さらにBRICS+とグローバルサウスの優位が際立っていく。あくまで長期予測ではあるが、少なくとも確実に経済力の拡大が政治的影響力に転嫁し、集団的西側が徐々に圧倒されていく傾向は不可逆的のようだ。
BRICS+、特に中露がG7への対抗意識を格別燃やさなくとも、「国際金融・通貨制度の改革」を成し遂げ、陣容を崩さない限り、長期的には地政学的パワーバランスの巨大な変化が十分予測される。出現する新たな世界秩序の具体像は予測し難いが、少なくとも現在のようなドル(あるいは米国の軍事力)の卓越性は継続しない。この意味でこれからの歴史は、BRICS+とグローバルサウスに有利な方向で動くだろう。
しかしながら、問題はここで終わらない。おそらく米国は経済競争を続けた末に、中国やインドにその優越した地位をいさぎよく譲り渡す気など毛頭ない。なぜならそれに伴って価値を喪失しかねないドルこそ、米国の覇権を究極的に担保する手段だからだ。
「ドルが基軸通貨という地位のおかげで、米国は少なくともこれまでは、自国の財政安定や返済を心配することなく32兆ドルを超える連邦債務を積み上げることができた。……この『無制限の借金』によって、米国はほぼ『無制限の軍事支出』を可能にし、政治的な目的に応じて、世界中でさまざまな恣意的な制裁を加えている」(注11)
一極支配への固執と「第三次世界大戦」
世界中に800以上もの基地を配備し、唯一短時間で地球のいかなる場所にも軍事力を投入できる米国の突出したパワーは、突き詰めればドルによる「無制限の軍事支出」が生み出している。そのドルの地位をBRICS+が脅かす事態となれば、米国が容赦するはずがない。経済競争の結果として自国の覇権が終わる前に、経済外の手段、つまり軍事力によってその地位を死守する以外、米国に選択の余地は存在しない。
米国はBRICS+の中軸がPPP換算のGDPで世界一の経済大国となった中国、及び米国と唯一戦略核で均衡を確保し、世界最大の面積を誇るロシアであるのを知っている。ユーラシア大陸の二大強国の中露さえ軍事力で屈服させることができれば、BRICS+自体を相手にすることもない。だが、特に中国を念頭に経済競争の劣後を軍事力で覆すなどということは国際常識のみならず、米国自身が口癖にしている「ルールに基づく世界秩序」(Rules-based World Order)からして許されるはずもない。グローバル経済のもとで交戦状態になれば、相手国のみならず米国自身の経済も膨大な損失を被る。だが今やBRICS+が否応なく直面しているのは、経済的利害・経済的損得勘定よりも「国家安全保障」を優先する米国の一種の狂気にも似た衝動に他ならない。
今や米国主流派の外交・経済政策に対する最も鋭い批判者を代表する一人で、ミズーリ大学カンザスシティ校教授であるマルクス経済学者のマイケル・ハドソンは、「米国の行く末を評価する際に難しいのは、国家や階級は経済的な自己利益のために行動する、という伝統的な前提が、役に立たないことにある」と述べる。そこでは、「ビジネスと金融の利益がほとんどすべての国の政治を動かす」という「地政学的分析の伝統的な論理」が、もはや通用しない。「焦点は『国家安全保障』に移り、米国中心の一極支配秩序を確保」するのが至上命題となった。
経済競争によって「国家安全保障」が脅かされるのであれば、米国は経済外の論理で「一極支配秩序を確保」しようとする。さらにハドソンは「ウクライナ戦線におけるロシアとの戦いは、第三次世界大戦の開戦である」と規定するが、それは「究極の戦略的敵としての中国」を「最終的に孤立化させ、解体する」ため、「まず中国の軍事同盟国で貿易相手国のロシアを切り崩す」ことから米国が着手したという意味においてだ。(注12)
おそらくBRICS+のメガトレンドにおける優位性も、その「国際金融・通貨制度の改革」がグローバルサウスにもたらす貢献度も、議論する前提が危うくなりつつある。極力経済や交易、金融に特化して進もうとしているBRICS+に立ちはだかっているのは、破壊以外何も生まない軍事を躊躇なく目的達成の手段とする米国の「国家安全保障」の論理なのだ。これへの対抗策を、非軍事的な経済のみを結集軸とするBRICS+は持ちようがない。換言すれば、BRICS+の今後の運命は、中露の「解体」を目指す米国の「第三次世界大戦」の帰趨によって決定されるだろう。
米国はウクライナ戦争でまず対ロシア経済制裁が大失敗に終わり、支援を強化した6月以降のウクライナ軍の「反攻作戦」も壊滅的な打撃を受けて頓挫した現在、秋以降の展開が見えにくくなっている。来年10月にロシアのカザンでBRICS+首脳会議が開催されるまで戦争の趨勢は見極め難いが、米国は「ロシアの勝利」をあらゆる手段を投じても阻止するため、何らかの形で戦争をエスカレーションさせる可能性が極めて高い。
自国の利害すら放り投げて、米国追随だけしか頭に及ばない西側のメンバー。(写真は5月に広島で開催された先進国首脳会議)
真に問われるべきは集団的西側の対米従属
さらに中国に関しても、事態は刻々と緊張の一途をたどっている。米国は「自由主義経済」の建前もWTOの「ルール」も無視し、「国家安全保障」を前面に押し立てて、前述の中国への半導体輸出規制を昨年10月から開始。この8月には半導体や人工知能(AI)、量子技術に関連する投資規制に踏み切った。だがこれもロシアへの経済制裁と同様、成功する見込みは薄いように思われる。
例えば今月になって、上海を拠点とする「中芯国際集成電路製造有限公司」(SMIC)が、8月に華為(ファーウェイ)が発売した新型携帯電話に、アップルのiPhoneと同等の速度で動作させるまでに技術的飛躍を遂げた中央演算処理装置(CPU)を供与していたことが判明。早くも『ワシントン・ポスト』紙は「米国の制裁が中国の重要な技術的進歩を妨げることに失敗したのではないかという、ワシントンの密かな懸念を呼び起こした。このような進展は、米国の半導体メーカーが警告した通り、制裁は中国を止めることはできず、米国の技術に代わるものを作る努力を倍加させるだろう」(注13)と報じている。
だが成功するかどうか別にして、米国の中国に対する意図は経済制裁だけに留まらない。米国の対アジア太平洋政策に詳しい米ジャーナリストのピーター・リーは、「米国の中国に対する攻撃は、事実上全面的なものであり、今のところ直接的な軍事行動には至っていないが、中国の軍事的、経済的、国際的な安全保障と国内の社会的・政治的安定を、あらゆる面で低下させようとしている」と言う。
そしてリーは、中国について「米国と直接対決する代わりにBRICSを通じ、IMFや欧米の商業金融業者に対する債務奴隷という現在のモデルに代わる最も妥当な国際貿易、金融として人民元の国際化に取り組んで」おり、そうした「経済的関与による多国間主義」が「新たな世界を生み出そうとしている」と分析する。だが、最大の障害は米国だ。
「中国共産党が成功すれば、言い換えれば米国による経済的攻撃から中国を守ることができれば、米国は中国を本当に壊滅させることができるのを実証するため、熱い戦争を始めるだろう。失敗への米国の唯一の対応は、エスカレーションだからだ」(注14)
一方でBRICS+の登場により、これまで「IMFや欧米の商業金融業者」に対するグローバルサウスの恨みにも似た不満にスポットライトが当たったのは間違いない。だがより注目すべきは、「地政学的分析の伝統的な論理」すら通じなくなっている超大国に、夢遊病のように追従するしか術がないEUや日本といった集団的西側の惨状だろう。
昨年9月のロシアの天然ガスを輸送するためのパイプラインであるノルド・ストリームの爆破事件で、実行犯が米国であるのを知りながら抗議の声も上げず、まともな調査もしない直接の被害当事者のドイツやEU加盟国の反応は、もはや彼らにとって「国家安全保障」が「対米配慮」の下位概念に堕ちている現状をまざまざと示した。しかもウクライナ戦争での米国主導の対ロシア経済制裁が、真っ先に欧州の経済基盤と生活水準の悪化としてはね返っているにもかかわらず、再考を求める政治勢力はごく一部に過ぎない。
このままウクライナ戦争が米国によって「第三次世界大戦」にエスカレートすれば、欧州は無事で済まなくなる。同じことは、日本についても言える。米国が蔡英文一派を利用して台湾との緊張を煽るだけ煽り、中国を引きずり込もうとしている戦争の最前線に立たされるのは、沖縄・南西諸島を始めとした日本だ。日本の輸出入の最大相手国と武力衝突を起こして何のメリットがあるかという利害計算すら、すでにこの国では不在状態となっている。
真の世界平和を求める側にとって、米国のただならぬ策動を考慮するなら、こちらは時間が味方してはいないかもしれない。その照準が合わせられたBRICS+の登場で浮き彫りにされたのは、実はウィン・ウィンの経済関係すら放り投げ、ひたすら無思考のまま対米追随に走るだけの集団的西側の、集団催眠状態ではないのか。
(注1) August 29, 2023 「How BRICS+ Ensures Global Peace」(注2)(注1)と同。
(注3)https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2023/08/22/press-gaggle-by-national-security-advisor-jake-sullivan-2/
(注4)「US sees wake-up call, if not threat, as BRICS bloc expands」
(注5)August 29, 2023「BRICS Expansion Is No Triumph for China」
(注6)August 26, 2023「Brics expansion is positive – but not a coherent challenge to US power」
(注7)August 28, 2023「A Second Geo-Strategic Shoe (Other Than Ukraine) Is Dropping」
(注8)August 29,2023「BRICS to expand to counter US dollar dependence」
(注9)July 27, 2023「GDP Animated Chart: G7 vs. BRICS by GDP (PPP)」
(注10) https://www.goldmansachs.com/intelligence/pages/gs-research/the-path-to-2075-slower-global-growth-but-convergence-remains-intact/report.pdf
(注11)August 28, 2023「BRICS Summit – its importance and aftermath」
(注12)July 23, 2023 「The Looming War Against China」
(注13)September 2, 2023 「New phone sparks worry China has found a way around U.S. tech limits」
(注14)8月30日「Traveler’s Tales: My August 2023 Trip to China [Unlocked!]」
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1953年7月生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。政党機紙記者を経て、パリでジャーナリスト活動。帰国後、経済誌の副編集長等を歴任。著書に『統一協会の犯罪』(八月書館)、『ミッテランとロカール』(社会新報ブックレット)、『9・11の謎』(金曜日)、『オバマの危険』(同)など。共著に『見えざる日本の支配者フリーメーソン』(徳間書店)、『終わらない占領』(法律文化社)、『日本会議と神社本庁』(同)など多数。