マリー・ホーソン: なぜエスタブリッシュメントはこれほどRFKジュニアにおびえているのか?(下) 翻訳:嶋崎史崇
国際原文は↓
https://www.zerohedge.com/political/why-establishment-so-scared-rfk-jr
2023年6月10日掲載
アイキャッチの写真は原文サイトから引用しています。
大統領選の討論会では、彼は非常に印象的になるだろう。
RFK ジュニアがワクチンや子どもたちの健康について大間違いをしているのなら、罵り合うよりも、なぜ誰も彼と議論しないのだろうか?
人々がRFK ジュニアと議論することを拒否するのは、それができないからだ。彼は長年裁判に携わってきた弁護士なので、議論するのは得意だし、非常に知的でもある。彼は科学的な資料を読むのが得意で、多くの人々、たとえ大卒の人々であっても理解できないような、小児保健やワクチンをめぐる論争の多くを理解している。
例えば、『リアル・アンソニー・ファウチ』の285-286ページでは、19世紀のルイ・パスツールとアントワーヌ・ベシャンの論争について論じている。簡単に説明しよう。パスツールは細菌が病気を蔓延させることに気づいた人物である。彼は、雑菌のいない環境を保つことで、感染症を避けることができると主張した。明らかに、これには多くの真実がある。西洋の医療はこのモデルに基づいている。
しかし、パスツールとほぼ同時代に生きたベシャンは、事はそれほど単純ではないと主張した。彼は、私たちが想像しうるすべての細菌を殺すことはできないし、殺そうとするべきでもない、と考えた。その代わりにベシャンは、私たちの時間を、最適な栄養と基本的な衛生管理に費やすことで、どんな有害な細菌がやってきても、私たちの体がそれを撃退できるようにすべきだと考えたのである。私たちは、現時点で、このことにも真理が含まれていることを知っている。RFKジュニアは、ベシャンの考え方を利用して、子供たちのためには、医薬品を増やすよりも、より質の高い食品や、健康的な環境をつくることに、もっと力を入れるべきだと主張している。
実際、腸内マイクロバイオーム(微生物叢)の重要性が明らかになればなるほど、この考え方におかしなことは何もないとわかる。微生物学者カール・ウーゼの生涯の仕事を取り上げたデイヴィッド・クアンメンの著書『The Tangled Tree』では、私たちがミクロの世界を意外と理解していないことを示す最近の研究が紹介されている。ミクロの生命体を「良いもの」と「悪いもの」に単純に分類し、「悪いもの」をすべて絶滅させようとしても、種と種の境界線がかなり曖昧である以上、うまくいくはずがない。
科学的リテラシーの高い人々の多くは、程度の差こそあれ、このことを理解しており、博士号取得者がコロナワクチンを巡って最も根強い疑念を示した理由の一端はここにある。時間が経つにつれ、彼ら・彼女らの正しさが証明され、コロナワクチン接種は最善の場合でも効果はなく、最悪の場合、特定の集団にとっては危険なものであったことがわかった。
物議を醸そうが醸すまいが、彼は情報を発信する
そしてこのことは、RFK ジュニアが、ほとんどの公人が理解できないレベルで、問題を理解していることを証明している。彼の立場は確かに議論の余地があるが、決して動揺しているわけではないし、突然出てくるわけでもない。しかし、彼の見方を十分に理解し、真剣な議論を交わすには、科学と歴史の両方を理解する必要がある。そのため、ほとんどの識者は、彼をクレイジー呼ばわりし、彼を語らせることを拒否する方がはるかに簡単だと考える。
しかし、RFK ジュニアはとにかく自分のメッセージを発信し、代替手段を見つけ、ビッグガバメントとビッグビジネスの内幕を暴くことに全力を尽くしている。
そしてこれが、RFKジュニアが民主党のエスタブリッシュメントにとって厄介な存在である理由だろう。彼は、本来協調すべきとされる大口献金者のほとんどと協調しない。彼は、民主党が反戦、反大企業、言論の自由を支持する政党から、順応の党になるのを見てきた。ケネディ一族のように古い民主党を代表する一族は他にいない。彼は、民主党が20年前とはまったく違うものに変貌してしまったことを指摘できるユニークな立場にいる。
RFK ジュニアはまた、エスタブリッシュメントに属するほとんどの人物にはない方法で、メディアを利用することにも通じている。ジョーダン・ピーターソンとの最近のインタビューで、彼は1960年に初めてテレビ中継された大統領討論会に言及した。その時、若々しく男前のジョン・F・ケネディは、リチャード・ニクソンを議論でこてんぱんにしたのだった。
彼の伯父が60年前に最新のメディアを利用した方法は、明らかにRFK ジュニアに感銘を与えた。レガシーメディアがトランプの選挙キャンペーンをジョークとして扱ったにもかかわらず、彼が2016年の選挙で勝利したのは、部分的にはだが、彼がツイッターを利用したからだ、とRFKジュニアは語った。RFK ジュニアは、2024年の選挙戦はポッドキャストに大きく影響されると信じている。そして彼は、自分は他の多くの候補者とは異なり、一度に2時間も3時間も腰を据えて討論する用意があり、意欲的であることから、この点で本当に有利だと考えている。
彼は興味深い候補者だ
繰り返しになるが、私は多くの問題でRFK Jr.と意見が合わない。私はかつて石油・ガス業界で働いていたが、彼の言う “クリーン “な風力発電や太陽光発電という特徴付けは大きく外れていると思う。それについては彼と議論になりうる。
しかし、私は彼がそこにいて、エスタブリッシュメントの窓ガラスに石を投げつけ、権力者に自分たちについて説明させるか、あるいは沈黙によって彼らが何か隠していることを証明することができることを、うれしく思う。
訳:嶋崎史崇(グーグル翻訳を下訳として、大幅に修正しました)
***訳者から一言***
一般のメディアでは、RFKジュニア氏といえば「陰謀論者」もしくは「反ワクチン」の「変人」、つまりトランプ元大統領のような“際物”として扱われることが常のようです。しかし、このような別の見方もある、ということを日本の読者に知っていただくため、米国の著名な独立系メディアである『ゼロヘッジ』から許可を得て、この記事を訳出しました。
著者のマリー・ホーソン氏は、米国のオルタナティヴ・メディアの一つであるThe Organic Prepperの寄稿者であり、主に食料・健康問題や米国政治について執筆しています。
記事中に出てくる2021年刊行の著書『リアル・アンソニー・ファウチ』は緻密に構成され、主張の根拠となる出典情報も大変しっかりしています。米国ではベストセラーになりましたが、邦訳はまだありません。実力のある翻訳者と、志ある出版社が出て来てくれることを願ってやみません。ISFには、貴重な書評が掲載されています。
ISF読書子「ロバート・ケネディ・ジュニア著『“アメリカの国医”・アンソニー・ファウチの真相―ビル・ゲイツ~大手製薬会社~民主主義と公衆衛生に対する地球規模の戦争』」、2022年9月6日。https://isfweb.org/post-7815/
記事中には「デプラットフォーム」という言葉が出てきます。実際に、私がRFKジュニア氏が代表を務めたワクチンに批判的なNPOであるChildren’s Health Defenseをヤフージャパンで検索すると、その公式サイト自体は表示されず、代わりにそれを貶める“ファクトチェック”記事ばかりが出てくる、という異常な状況です。情報操作を行わないことで知られる検索エンジンDuck Duck Goを使うと、Children’s Health Defenseのサイト自体が上の方に表示されます。インターネットの世界では、異端とされる見解を直接することが、極めてできにくくされているということです。権力者にとって都合が悪いが、本当のことを言う人が、中傷され、排除されているのではないか、という可能性を少なくとも検討すべきでしょう。
父と伯父が暗殺されたという悲劇的経験をしてきたRFKジュニア氏ですが、自身の演説中に、武装した人物が逮捕されるといった事件も2023年9月に発生したと報道されました。
NBC:Armed man detained outside RFK Jr. event in Los Angeles
2023年9月17日配信。
https://www.nbcnews.com/politics/2024-election/armed-man-detained-rfk-jr-event-los-angeles-rcna105419
RFKジュニア氏がウクライナでの戦争についても、米国・NATOの責任を厳しく問う卓見を示していることは、既にISFで塩原俊彦氏も言及していました。
「私たちは第35代大統領ジョン・F・ケネディの甥の主張に耳を傾けなければならない」、
2023年6月1日配信。https://isfweb.org/post-21838/
2023年4月の大統領選での出馬表明では、RFKジュニア氏は、「戦争機械の縮小」すなわち軍縮と、荒廃した米国内のインフラ整備への注力、(ネット上の)検閲をやめさせることを訴えていました。
Ballotpedia:Robert F. Kennedy Jr. presidential campaign, 2024
https://ballotpedia.org/Robert_F._Kennedy_Jr._presidential_campaign,_2024
「国外にある800の米軍基地を閉鎖し、直ちに米軍を帰還」させると宣言しているRFKジュニア氏。この発言からは、自分はワクチン問題活動家として、「医産複合体」(Medical Industrial Complex)と闘ってきただけでなく、軍産複合体の利権も解体していく、という意図が読み取れます。
堀田佳男:「当選したら世界中から米軍を撤退させる、ケネディ候補が衝撃の発言
米大統領選は意外な展開になる可能性も」、『JBpress』、2023年5月12日。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75144
ウェブメディア・IWJは、RFKジュニア氏について、高野孟氏による貴重なインタビュー動画を公開しています。
「【ハイライト】大統領候補ロバート・ケネディJr.は、軍事帝国としての米国を終わらせる!?米中覇権争いの枠に留まらない「世界的構造変動」が始まりつつある!」、2023年7月3日配信。
https://www.youtube.com/watch?v=isL5urFS9qM
IWJは全4回に分けて、RFKジュニア氏の大統領選立候補表明後の重要な演説も、訳出しています。
「【IWJ号外】ロバート・ケネディ・ジュニア氏が大統領予備選立候補発表後に行った、歴史的なボストン・スピーチをIWJが全文仮訳!(第1回)米国最良の精神は、アメリカ独立戦争の精神だった!」、2023年5月26日配信。
https://iwj.co.jp/wj/member/archives/516183
フォックスニュースによる2023年9月の世論調査では、民主党の大統領候補の中でRFKジュニア氏は17%の支持を得ていると報道されています。現職のバイデン氏の71%はまだ遠いとはいえ、2位につけていることは見逃せません。
Fox News Poll: Trump expands lead in GOP primary race. 2023年9月14日配信。
https://www.foxnews.com/official-polls/fox-news-poll-trump-expands-lead-gop-primary-race
毀誉褒貶があるとはいえ、まさに命懸けで大統領選に挑戦し、米国を本気で変えようとしていると考えられるRFKジュニア氏の言動は、今後も注目していくに値するでしょう。
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