【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/政治腐敗国家ウクライナの真実

植草一秀

ウクライナのゼレンスキー大統領が国連総会に出席して演説したが総会の反応は冷淡なものだった。
9月19日から29日まで米国・ニューヨークで国連総会が開催されている。

しかし、米ロ英仏中の国連安保理常任理事国トップで参加したのは米国のバイデン大統領のみ。

国連の機能不全が鮮明だ。
安保理常任理事国は安保理決議に対する拒否権を保持している。

したがって、米欧と対立する中ロが合意しない事項は決定できない。

米欧による世界の独善支配を防止する上では有効だが、多くの問題で世界が足並みを揃えることは困難になっている。

ゼレンスキー大統領はウクライナ戦争でウクライナが勝利しないと第三次世界大戦になると発言して冷笑を買った。
国際社会が目指すべきことは一刻も早い停戦の実現。
ウクライナにクラスター爆弾や劣化ウラン弾を供与することでない。

9月にインド・ニューデリーで開催されたG20首脳会談にも中国とロシアトップは参加しなかったが議長国インドがとりまとめた共同宣言では

「ウクライナにおける戦争が、世界の食料とエネルギーの安全保障に及ぼす人的被害と負の付加的影響」
についての言及が示されたが、ロシアに対する非難の文言はなかった。

同時に、「異なる見解と評価」の表現が付記された。
また、戦争についての表記は「ウクライナに対する戦争」でなく「ウクライナにおける戦争」とされた。

ロシアが悪でウクライナが正義との図式はウクライナの主張。
ロシアにはこれとは異なる主張が存在する。

 

ウクライナ問題を理解するには1991年のウクライナ独立以後の歴史、ならびにウクライナがソビエト連邦の一共和国であった時代にクリミアがソビエト連邦政府によってウクライナ共和国に編入された歴史等を踏まえる必要がある。

第二次世界大戦後の1954年、ソ連のフルシチョフ第一書記の時代にクリミア半島はロシアからソ連を構成する一共和国であるウクライナ共和国に移管された。

これはロシア人の多いクリミア半島をウクライナに移管させることで、ウクライナのロシア人比率を高めようとしたものである。

ウクライナでの戦乱が拡大した2022年3月の国連総会緊急特別会合で「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」が採択された際、賛成した国は193ヵ国中の141ヵ国、賛成に回らなかった国は52ヵ国だった。

しかし、これを人口比で見ると賛成国が42%、非賛成国が58%だった。

同年4月のG20財務相・中央銀行総裁会議において対ロシア経済制裁に加わった国が10ヵ国(EUを1ヵ国として)、経済制裁に加わらなかった国が10ヵ国だった。
これを人口比でみると制裁参加国19%に対して制裁非参加国81%(EUを人口最多国スペインの人口で計算)だった。

人口比ではロシア制裁に加わっていない国が8割と圧倒している。

これまでに詳述してきたが、1991年に独立したウクライナは、今日までの32年間に二度の政権転覆を経験している。

一度目が2004年、二度目が2014年である。

いずれも新ロシア政権が転覆されて親米政権が樹立されたもの。
政権転覆を主導したのは言うまでもない。

米国だ。

2004年は大統領選挙で親ロのヤヌコビッチ氏が選出されたが、不正選挙であるとのクレームがついた。
やり直し選挙が強行されて親米のユシチェンコが大統領に就任した。

一次選挙と二次選挙の間の期間にユシチェンコの顔面が毒物中毒でただれる事件が発生。
ユシチェンコサイドがこれを親ロ勢力によるしわざと主張し、同情票がユシチェンコに集まり、ユシチェンコが当選した。

しかし、真実はユシチェンコサイドによる自作自演だったと見られている。

しかし、ユシチェンコ政権の政治腐敗が深刻で2010年大統領選でヤヌコビッチが大統領に選出された。

このヤヌコビッチ政権を排除するために米国が地下工作を展開。

2014年に暴力革命が組織され、憲法の規定によらず、ウクライナ非合法政府が樹立された。

この非合法政府を直ちに国家承認したのが米国である。

ウクライナ新政府はウクライナ国内のロシア系住民支配地域に対する人権侵害、虐殺行為を繰り広げた。

その延長線上にウクライナ内戦が勃発したのである。

 

※なお、本記事は、植草一秀の『知られざる真実』2023年9月21日(木)
政治腐敗国家ウクライナの真実: 植草一秀の『知られざる真実』 (cocolog-nifty.com)からの転載であることをお断りします。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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