【特集】アメリカ社会の分断・二極化

ディープ・ステートはどのくらいディープなのか?(下) 翻訳:嶋崎史崇

ジェフリー・タッカー

著者:ジェフリー・タッカー
出典:Zerohedge(https://www.zerohedge.com/political/how-deep-deep-state
公開日:2023年9月14日

ディープ・ステートはどのくらいディープなのか?(上)はこちら

 

ローウェンタール氏は、なぜ労働省に相談しなかったのか、と素朴な疑問を口にした。私は、労働省は昔ながらの文民官僚組織であり、ハイテクに興味のない昔ながらの公務員でいっぱいだと説明した。彼らはただデータを集めるためにいるのだ。2020年3月に起こったことは、情報機関の新世代テクノ暴君らによるクーデターだった。彼らは21世紀にふさわしい独自の機関や、コントロール方法をもっている。

私がさらに彼に指摘したように、これは検閲だけの問題ではない。検閲官はもっと大きな目的のためにやっているのだ。彼らが本当に求めているのは、社会そのもの、つまり人間を完全にコントロールすることなのだ。そして、彼らは国家単位だけでなく、国際単位で動いている。だからこそ、地球上のほとんどの国がまったく同じ政策をとっていたのだ。この機構を支配している情報コミュニティーは、現時点ではまさにグローバルだ。

言い換えれば、これは単なる検閲産業複合体ではない。私たちの身体、生活、共同体を完全に支配しようとする全体主義的な支配者なのだ。検閲の目的は、一般市民による議論や抗議が行われないようにすることだ。検閲は悪いことだが、その目的は単に情報の流れをコントロールすることよりも、はるかに悪いことを指し示している。

図表の中にすらなかった支配の別の階層がある。例えば、FTXのマネーロンダリング機構である。この仮想通貨取引所が、ベンチャーキャピタリストから非営利団体や選挙の候補者への資金洗浄のために設立されたことは疑いない。それが目的だった。支配者層による虚偽情報だったのだ。このようなことが再び起こらないようにする政治的、法的プロセスが進行中、というわけでもないのだ。

このような現実を見て、ディープ・ステートの深さを実感し、落胆するのは簡単だ。まるで私たちが影響力も権力もない小さなライターや、ポッドキャスターの一団であるかのように感じることもある。しかしローウェンタール氏は、そうではない、ということを注意深く指摘した。この物語に登場する悪者たちは、非常に劣勢に立たされ、あらゆる方面から大きな圧力を受けていると感じている。彼らは今、大敗を喫しているという印象を持っている。それは、世論が自由と民主主義を支持し、中央集権的な暴君による支配と強制に反対する方向へと推移し続けているからだ。

私は、彼が正しいことを願っている。なぜなら、この闘い以上に重要な闘いを考えるのは難しいからだ。

「人間は、自分が過去において収めた最も偉大な成功の中のいくつかを、自分が社会生活をコントロールできない、という事実に負っている。このことにほとんど疑いはない」。経済学者F.A.ハイエクは、60年以上前に『自由の条件』の中で、このように書いた。

「人間の継続的な進歩は、今自分の権限の下にある統制を、意図的に行使しないことにかかっているのかもしれない」

「かつては、自生的な成長力は、いくら制限されていたとしても、国家の組織的な強制力に対しては、まだ自己主張が可能であった。現在、政府の自由になる技術的な管理手段によって、そのような自己主張がまだ可能かどうかは定かではない。いずれにせよ、そのような自己主張はもうすぐ不可能になるかもしれない。社会の意図的に組織化された力が、進歩を可能にしてきた自生的な力を破壊するかもしれないところまで、そう遠くない」

諜報コミュニティーが運営するディープ・ステートが、すべての主要な大学や企業と手を組み、私たちの生活、選挙、通信を牛耳っている状態では、自由と民主主義を手に入れることはできない。何かが崩れなければならない。そして、この問題に対する公共の理解がなければ、解決はあり得ない。

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訳者からの一言(DeepL翻訳を下訳とし、大幅に改善しました)
著者のジェフリー・A・タッカー氏は、ブラウンストーン・インスティチュートの創設者兼会長です。『エポック・タイムズ』紙のシニア経済コラムニストであり、『Liberty or Lockdown』など10冊の著書があります。学術誌、一般紙に、何千もの記事を寄稿しています。経済、テクノロジー、社会哲学、文化をテーマに幅広く講演しています。
(ブラウンストーン・インスティチュートの紹介欄に依拠しています)
https://brownstone.org/author/jeffrey-tucker/

米独立系メディア「ゼロヘッジ」から許可を得て転載しました。

文中に出てくる第5巡回区の控訴裁判所の決定は、日本ではあまり知られていないかもしれませんが、米国の一般メディアでは報道されています。
NPR: Appeals court slaps Biden administration for contact with social media companies. 2023年9月8日配信。
https://www.npr.org/2023/09/08/1197971952/biden-administration-fifth-circuit-ruling-social-media-injunction

また、文中で触れられるローウェンタール氏によるツイッター・ファイルの調査は、同氏のサブスタック記事で読むことができます。
Andrew Lowenthal: The Twitter Files and the new censorship regime. 2023年3月18日配信。
https://networkaffects.substack.com/p/the-twitter-files-and-the-new-regime

「影の政府」とも訳される「ディープ・ステート」と言うと、典型的な「陰謀論」の概念であると通常はみなされているでしょう。けれども、鳩山友紀夫元首相がディープ・ステートを、「軍産複合体の力に乗っかった人たちともいえる」と論じたこともあります(『もうひとつの日米戦後史』、詩想社、2020年、6頁)。高齢故の著しい知性と体力の衰えが指摘されるバイデン大統領の振る舞いを見ていると、表に出ている政府の動きを観察しているだけで政治の全てがわかる、と想定する方が楽天的すぎるのではないでしょうか。本記事で言及される「検閲産業複合体」も、そのようなディープ・ステートの一翼を担う背後権力の一つであり、公的・私的な権力者にとって都合の悪い言説を排除・冷遇し、民主的討論を歪めているといえるでしょう。検閲産業複合体については、『寺島メソッド翻訳NEWS』に、米議会報告書が全文掲載されています。「陰謀論」でも何でもなく、最先端の政治的課題なのです。

マイケル・シェレンバーガー「検閲産業複合体:米国政府による国内検閲と偽情報宣伝活動へのテコ入れ 2016年―2022年(第1回)」、2023年7月26日(全6回)。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1814.html

コロナワクチンの薬害問題を重視してきた私としては、軍産複合体、検閲産業複合体に加え、「医産複合体」(Medical Industrial Complex)も、ディープ・ステートの一員に加えたいところです。いずれも現代社会の権力構造の真相を理解するために欠かせない概念と思われますので、ISFの読者諸氏にも、引き続き注目していただきたいです。

嶋崎史崇

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