【連載】知られざる真実/戦争に加担する現方針の誤り
社会・経済国際戦争に対して私たちはどう向き合うのか。
日本は敗戦後に制定した憲法で戦争を放棄した。
国際紛争を解決する手段として、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄することを憲法で定めた。
この基本を忘れてはならない。
ウクライナで戦争が発生した。
中東のイスラエル、パレスチナの地でも戦争が遂行されている。
戦争勃発には背景がある。
相互に主張が存在する。
一方が絶対善で一方が絶対悪であることは少ない。
そのようななかで不幸にも戦争が勃発したとき、私たちは何を主張するべきか。
答えは明白だ。
一刻も早い戦争の終結を目指すべきだ。
ウクライナで戦争が勃発した。
日本は世界に対して一刻も早い停戦の実現を訴えるべきだ。
ウクライナを支援してウクライナ戦争に加担する道を選ぶべきでない。
ウクライナで戦争が発生したのは、2014年に暴力革命で樹立されたウクライナ非合法政府がロシア系住民支配地域に対する人権侵害と虐殺行為を展開したからである。
この経緯を踏まえずにウクライナが正義でロシアが悪と決めつけることは間違っている。
ウクライナ内戦を収束させるミンスク合意が制定された。
ウクライナ東部2地域に高度の自治権を付与することが決定された。
この合意が履行されていれば内戦は終結したはずである。
ところが、ウクライナのゼレンスキー政権はミンスク合意を一方的に破棄してロシアに対する軍事挑発を続けた。
その結果としてロシアが特別軍事作戦を始動させた。
過去の経緯を踏まえて妥協点を見出そうとする努力なしに戦乱を収束させることはできない。
日本は国際社会に対してウクライナ停戦実現に向けての提案を発するべきだ。
ところが、日本政府は米国の命令に服従してウクライナに対する支援を実施。
ウクライナ戦争拡大に加担し続けてきた。
米国は軍産複合体の利潤動機によりウクライナ戦争を必要としてきたし、ウクライナ戦争の拡大・長期化を求めてきた。
その戦争遂行によって犠牲になるのはウクライナの市民と前線に送り込まれる末端の兵士だけだ。
米国軍産複合体もウクライナ・ゼレンスキー大統領も我が身を安全な場に置いて、後方から命令を発するだけなのだ。
パレスチナの地にはアラブ人が居住していた。
その地にイスラエルが1947年、新たに国を創設した。
パレスチナの地の53%をイスラエルが奪い、新しい国を創設した。
背景に第1次世界大戦の時代に英国が実行した三枚舌外交がある。
英国は戦費調達のためユダヤ人コミュニティに協力を仰ぎ、「パレスチナの地におけるユダヤ国家建設を支持する」ことを約束した(「バルフォア宣言」)。
他方、オスマン帝国からの独立をめざすアラブ民族主義を利用するためにメッカの太守フセインに対して英国への協力の見返りとしての「アラブの独立支持」を約束した(「フセイン・マクマホン協定」)。
さらに、フランスと戦争終結後の中東分割協定(「サイクス・ピコ協定」)を締結した。
この三枚舌外交が第二次大戦後の中東混乱の原因になった。
パレスチナの土地をイスラエルは強奪した。
文字通りの「力による現状変更」だ。
パレスチナのアラブ人は70年以上にわたり辛酸をなめ尽くしてきた。
パレスチナが抵抗を示すのには理由がある。
ハマスが悪でイスラエルが善ではまったくない。
しかし、米国は常にイスラエルの側に立ち、武力に勝るイスラエルの軍事行動を支援する。
世界平和を破壊している最大の元凶は米国の横暴である。
米国は戦争立国である。
戦争を引き起こさなければ国が持たない構造になっている。
その米国への絶対服従は日本の戦争放棄原理、平和主義と根本的に矛盾する。
※なお、本記事は、植草一秀の『知られざる真実』2023年10月13日(金)
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050