「袴田事件」の再審始まる
メディア批評&事件検証■袴田さんは心神喪失で出廷免除 姉の秀子さんが「補佐人」として出廷
1966年に今の静岡市清水区のみそ製造会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」で強盗殺人罪などで死刑が確定していた袴田巌さん(87)の再審が27日、静岡地方裁判所(国井恒志裁判長)で始まった。
袴田さんは無実を訴え続け、2014年3月、地裁の再審決定で48年ぶりに釈放されたが、。最高裁の差し戻しを経て再審開始が確定するまで、9年の歳月を要した。再審公判では検察側は改めて有罪を立証する方針で、無罪を主張する弁護団との全面対決となる様相だ。
いつでも二人三脚で裁判を戦ってきた袴田巌さんと姉の秀子さん。
この日午前11時から始まった再審の法廷では、袴田さんに代わって姉の秀子さん(90)が「補佐人」として出廷。起訴された内容について「57年間、紆余曲折でありましたが無実を主張します。どうぞ弟に真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」と訴えた。袴田さんと秀子さんがこれまでの苦難を乗り越え、その思いを託した言葉が法廷に響いた。
袴田さんは、長年にわたり拘置されたことで、精神的に不安定な状況か続き、現在も十分に会話ができいことから24日、同地裁で裁判所、検察、弁護団による非公開の3者協議が行われ、国井裁判長が「心神喪失の状態にあると判断した」として袴田さんの出廷を強制しないと述べたからだ。
この再審公判では、袴田さんの勤務先だったみそ工場のタンク内から見つかった5点の衣類が最大の争点になる見込みだ。確定判決では、衣類は袴田さんが犯行時に着用し、逮捕前にタンクに隠したものと認定した。
弁護側は第2次再審請求審で、衣類についた血痕の「赤み」に着目。人血を付着させた衣類を味噌に漬ける実験を行い、「1年以上漬けると血痕は黒褐色になる」とする結果を新証拠として裁判所に提出した。
再審開始を認めた今年3月の東京高裁決定は、衣類は袴田さんの逮捕後、第三者がタンクに隠した可能性が否定できないとして「捜査機関による証拠の捏造」にも言及した。
死刑が確定した事件で再審が開かれるのは、36年ぶりで、戦後5例目だ。
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独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。