メールマガジン第115号:南西諸島軍事強化トピック(3月20~26日)
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会メルマガ琉球・沖縄通信◇佐藤優のウチナー評論 国民保護図上訓練 戦争前提か、県の認識問う(琉球新報 2023.3.25)
図上訓練のツケ
元外務省主任分析官の佐藤優氏が琉球新報に寄稿する「ウチナー評論」で、県が実施した「国民保護図上訓練」を批判した。佐藤氏は母親が久米島の出身で沖縄への思いが強い。訓練は与那国、石垣、宮古の全島民避難を想定した。琉球新報が「台湾に近い離島から全島民を非難させる想定には『緊張をあおる』との見方もある」と指摘したのを引用。またノーモア沖縄戦の会の山城博治共同代表の「沖縄が戦争になる前提で、こういった訓練をやってはならない。戦争を避けるための努力をすべきだ」と述べたコメントことに全面的に賛同し、「今回の図上訓練は、県が中国による沖縄侵略の可能性があり、それに備えているというシグナルを発することになった。このツケは高くつく」と批判している。
「万一に備える」という意識が県当局にはあるのかもしれない。しかしそれは戦争準備に加担することになるという県民の批判は強い。同時に敵国と想定する中国に誤ったシグナルを発し、緊張を高めることになるというのが佐藤氏の指摘であろう。玉城デニー知事は「安全保障環境にこだわって図上訓練を計画したものではない」とコメントしているが誰もそうとは思わないだろう。台湾有事を想定する訓練であることは明白だからだ。先島住民の全島避難は非現実的で実効性があるとは思えない。国民保護計画は法律事項とはいえ、「緊張と戦争の懸念を高め、実効性のない避難計画、訓練は実施しない」と毅然とした判断があって当然ではないか。
◇石垣陸自 住民へ説明会 避難シェルター求める声(琉球新報 2023.3.23)
◇長射程ミサイルに懸念 開設後の説明会、批判も(琉球新報 2023.3.23)
◇陸自幹部「暮らし守る」石垣説明会 外交努力求める(沖縄タイムス 2023.3.23)
16日に基地を開設、18日にミサイル弾薬の搬入を強行した陸自石垣駐屯地は22日、住民説明会を開いた。有無を言わさぬ基地開設に反対する団体、市民は参加を拒否した。説明会で自衛隊配備に賛成する立場という男性は、長射程ミサイルに対しては「(配備に)賛成の人でも反対するのではないか」と疑問の声を上げた。長射程ミサイルについての質問に回答はなかった。駐屯地近くに住む具志堅正さんは「眠っている時以外、ずっと(駐屯地のことが)頭にある。台湾有事というが、小さな島はどこにも逃げようがない。丁寧に説明しないのか」と防衛省側のはっきりしない説明に怒りをぶつけた(新報)。
ミサイル配備に関し防衛省側は「射程が分かると相手から対策を取られることが容易になる。防衛省として明らかにしたことはない」と答えたとされる。敵基地攻撃に転用される長射程ミサイルは攻撃を受ける危険性を高める。市民が最も知りたい事実に防衛省は口を閉ざしている。
2千人のシェルターで足りるか
中山義隆石垣市長も出席し、避難シェルターに踏み込んだ。「全市民約5万人や観光客含めた7万人を収容するものは『厳しい』とした上で、台湾有事を想定し1千~2千人が入れるシェルター設置を『国や県と連携し進めていきたい』と述べた」という。「7万人収容は厳しいが2千人規模なら」ということだ。厳しいとはどういうことか。シェルターが必要なミサイル等の飛来する事態を予想しながら予算がないから厳しいということだろうか。ミサイルが飛んで来る事態に、7万人の島外避難が間に合わず、2千人を超えてシェルター外にあふれた住民の安全はどうなるのか。早い者勝ち、くじ引きでとでも言うのだろうか。あやふやな説明で市民が納得、安心できるわけがない。
◇比ルソン島2基地利用へ 米、台湾有事備え要請か(沖縄タイムス 2023.3.24)
◇駐日中国大使面会 断る 岸田首相 世論硬化に配慮(琉球新報 2023.3.26)
共同配信で注目される記事が載った。台湾有事に備えて米国がフィリピンの基地使用を計画しているとの報道がある。これに関連し、「フィリピン北端」カガヤン州のマンバ知事が、共同通信に対して「同州に米軍が使用する2基地がある」と明かしたという。以下に共同の記事を示す。
戦火に巻き込まれる
「米がカガヤン州の2基地を利用すれば、中国が猛反発するのは必至。マンバ氏は戦火に巻き込まれかねないとして反対した」。マンバ知事は政府から州内2基地が使用対象であることを公表しないよう指示されたが、あえて共同通信に明らかにしたという。
マンバ知事は「太平洋戦時に米軍が基地を置くフィリピンが日本に攻め込まれたことを挙げ、『外国軍がいると戦争勃発時に攻撃を受けやすくなる』として米軍の拠点化に反対した。『中国は隣国で、友好国で、未来があり、市場でもある』とも強調した」という。
いくつも教訓を得ることができる。
マンバ知事は沖縄であれば玉城知事、中山石垣市長の立場であろう。政権から「あなたのところの基地を米軍が使用する」と内々告げられ、「黙っているように」とくぎを刺されながら、共同通信に明かした。同様のことがあれば玉城知事、中山市長もマンバ市長を見習うべきだ。
なぜ取材に〝防衛秘密〟を明かしたか。フィリピン政府側は、岸田首相や浜田防衛大臣のように「敵に手の内を明かすわけにはいかない」と秘匿を命じたことだろう。それでもマンバ知事は「戦火に巻き込まれかねないと反対した」のだ。フィリピンの政府当局は浜田防衛大臣のように「抑止力があるから巻き込まれることはない」と説得したに違いない。マンバ知事が「基地を利用すれば、中国が猛反発するのは必至」と反論したと想像する。沖縄県民が「基地を置けば軍事緊張を高め、事あれば攻撃対象になる」と声を上げているのと一緒だ。
戦争の教訓
フィリピンと沖縄は同じような歴史体験がある。
マンバ知事は太平洋戦時に「米軍基地があったがためにフィリピンが日本に攻め込まれた」歴史の教訓を大事に引き継いでいるのだ。その記憶を「軍隊がいると戦争勃発時に攻撃をうけやすくなる」という至極当たり前な現実認識に生かしている。「軍隊は住民を守らない」。「軍民混在が沖縄戦の悲劇を招いた」という沖縄戦の教訓と軌を一にする。
中国は隣国で友好国
「中国は隣国で、友好国で、未来があり、市場でもある」。マンバ知事の言葉をそのまま、岸田首相、浜田防衛相、高市経済安保相に聞かせたい。中国は一衣帯水の隣国、不戦を誓った友好国であり、今や米国を上回る貿易相手国である。日中平和条約を破棄する如くに敵視し戦争準備を進め、有事(戦争)に至れば「日本が火だるまになり、経済も火だるまになる」(海渡雄一弁護士、沖縄での講演)。そのような愚を犯すべきではない。
まして沖縄は中国と、台湾とも友好親善の良好な関係を繋いできた間柄だ。それを台無しに日米政府の中国脅威論に踊らされ、ミサイル配備を容認し、全島避難計画を真に受け、2千人収容の避難シェルターの妄言に惑わされるべきではない。事あれば沖縄が犠牲になる。そうならないための戦争回避に知事、首長は動くべきだ。
マンバ知事のカガヤン州は「フィリピン北端」にあって台湾に近く、台湾有事では沖縄と同様の米軍重要拠点と見られている。沖縄と全く同じ立場だ。玉城知事はフィリピンを訪ねマンバ知事と意見交換してはいかがか。
◇長射程弾 配備は未定 安保3文書 防衛局長、県に説明(沖縄タイムス 2023.3.21)
◇市長発言に抗議否決 石垣議会 ミサイル「容認」巡り(沖縄タイムス 2023.3.22)
◇日台の与党会合 安保で意見交換 国場氏も出席(沖縄タイムス 2023.3.22)
◇「台湾有事は沖縄有事」 斉藤法相 パーティーで発言(琉球新報 2023.3.24)
◇輸送•避難先の生活課題 先島首長ら、図上訓練報告(琉球新報 2023.3.26)
フィリピンのマリンバ知事は「戦争に巻き込まれる」ことを恐れ、米軍の基地使用に反対する意思を示した。翻って沖縄はどうだろうか。
石垣市議会は長射程ミサイル配備に容認する見解をマスコミに述べた中山石垣市長に対する抗議決議を与党多数で否決した。多数与党が市長の容認姿勢の支持に回った形だ。
県の池田副知事が敵基地攻撃に転用可能な長射程ミサイルの県内配備について質したのに対し、沖縄防衛局長は「具体的な配備先は決まっていない」と相変わらず説明拒否の姿勢だ。
台湾有事は沖縄有事
斉藤法相は、沖縄選出の西銘恒三郎衆院議員が都内で開いた選挙資金パーティーで、「台湾有事は日本有事だが、台湾有事は沖縄有事だ」と発言した。この発言で思い出すことがある。
麻生太郎自民党副総理は2021年7月、都内で開かれた自民党沖縄選出国会議員の選挙資金パーティーで、台湾有事は「日本の存立危機事態に関係する」「日米で台湾を防衛しなければならない」と述べていた。麻生氏は「(台湾の)次は沖縄」とも述べたと琉球新報は報じていた。昨年8月に麻生氏は福岡での講演で「台湾有事で沖縄県の与那国島など台湾に近い日本の領土に戦火が及ぶのは当然」、派閥研修会でも「与那国島や与論島(鹿児島県)は戦闘区域外と言い切れない」との発言が報じられている。安倍元首相も台湾のシンポジウムで「台湾有事は日米同盟の有事であり、日本有事」と述べている。
存立危機事態にらむ
安倍氏、麻生氏、今回は斉藤法相と自民党の中枢、閣僚が「台湾有事は日本有事、沖縄有事」と言い放ち続けている。麻生氏の2年前の発言で特に注目されるのは「日本の存立危機事態に関係する」と述べたことだ。「存立危機事態」は米軍の戦闘に自衛隊が参戦する集団的自衛権行使、敵基地攻撃(反撃)発動に直結する。麻生氏は与那国、与論が「戦闘区域」との見解も示している。
麻生氏らは「台湾有事が起きれば与那国、沖縄が戦場になる」と当然視している。そうであるなら敵基地攻撃に必要な長射程ミサイルを沖縄の島々に配備することは自明のはずだが、岸田首相、防衛相(省)は言を左右に「沖縄配備」を明言しない。
選挙資金パーティー
沖縄選出自民党議員の選挙資金パーティーで「台湾有事は沖縄有事」などと託宣され、選出議員は「その通り」と拍手を送ったのだろうか。選挙で自民党の支援を受ける沖縄の自治体首長、議員は「台湾有事は沖縄有事」の認識で、自衛隊のミサイル部隊、長射程ミサイル配備、ミサイル弾薬庫の建設を受け入れるのだろうか。
麻生氏が「与那国島などに戦火が及ぶのは当然」と語った重大性を明確に認識する必要がある。「抑止」が破綻し「戦場」となることを想定していることは明らかだ。中国脅威論に煽られ「日米で台湾を守る」(麻生氏)と扇動され、ミサイル配備を受け入れた結果が米国が主導する台湾防衛戦争に自衛隊、日本が巻き込まれて「沖縄が戦場になる」事態は目に見えている。
日台2+2、国場国防部会長が出席
台湾与党・民進党と日本の自民党は「外務・防衛2プラス2」と銘打つ外交・国防相担当議員の会合を台北市で開いた(タイムス)。自民党の沖縄選出、国場幸之助国防部会長が出席したという。国場氏は「安保関連3文書を台湾側に説明」。民進党側は中国の軍事圧力強化を踏まえ「安全保障分野での日本との連携強化に積極的姿勢を見せている」という。いつのまにか自民党の国防部会長に据えられた沖縄選出の国場氏が「台湾有事」対処、南西諸島軍備強化の先頭に立っている。
17日に県が実施した住民避難「図上訓練」を受け、中山石垣市長、糸数与那国町長が自民党の会合に出席した。避難のための輸送手段確保、シェルター設置を求めたという。この記事の末尾に「一方、中山石垣市長はエマニュエル駐日米大使とも会談」とある。エマニュエル駐日米大使は先日、ミサイル配備など沖縄の負担強化を琉球新報記者に問われ「負担ではなくアジア太平洋を守るための責任」と言い放っている。「中山市長によると、台湾有事を想定して日米安全保障体制の重要性を確認した」(タイムス)とされる。
戦争準備を沖縄が担う
米国、政府自民党が台湾有事に備えて沖縄のミサイル軍事化を進め、「戦争に巻き込まれるから反対」と県民の危機感が高まる中で、政府に同調し防衛政策を積極推進する立場となった国会議員、保守系の首長、地方議員は日米の防衛強化を容認、支持に回っている。
日米政府の「戦争準備」を政府の側に立つ沖縄の保守側勢力が積極推進する構図が浮き彫りになりつつある。
戦争準備を進める日米の強大な力に抗うには、県民が一枚岩となって声を上げることが不可欠だ。県民の分断をどう乗り超えるか。沖縄の戦場化に反対する私たちの運動が問われる大きな課題だ。
3月20日(月)http://nomore-okinawasen.org/6555/
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3月21日(火) http://nomore-okinawasen.org/6583/
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3月22日(水)http://nomore-okinawasen.org/6615/
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盾から矛へ 安保激変@奄美 ⑦ 空白の徳之島 薄まる抵抗感、誘致に熱 自衛隊基地「うらやましい」(琉球新報 2023.3.22)
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3月23日(木)http://nomore-okinawasen.org/6638/
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3月24日(金)http://nomore-okinawasen.org/6653/
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比ルソン島2基地利用へ 米、台湾有事備え要請か(沖縄タイムス 2023.3.24)
◇「台湾有事は沖縄有事」 斉藤法相 パーティーで発言(琉球新報 2023.3.24)
3月25日(土)http://nomore-okinawasen.org/6675/
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3月26日(日)http://nomore-okinawasen.org/6694/
輸送•避難先の生活課題 先島首長ら、図上訓練報告(琉球新報 2023.3.26)
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「米国の戦争」加担恐れ 安保法施行7年 敵基地攻撃、線引き曖昧(琉球新報 2023.3.26)
沖縄の歴史認識し、負担軽減を 識者談話 野崎文彬(琉球新報 2023.3.26)
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)
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● ISF主催公開シンポジウム:WHOパンデミック条約の狙いと背景~差し迫る人類的危機~
● ISF主催トーク茶話会:小林興起さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
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「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。