ヴィクトリア・ヌーランドとは何者なのか① ―人物像とウクライナ戦争のキーパーソンとしての揺らぎ―
国際写真説明:国務省内でウクライナ戦争に最も影響力を発揮しているとされる、国務次官のヴィクトリア・ヌーランド。外交官らしからぬ「下品」さと強面で知られている。
米国の国務省内で、「異変」が起きた。7月末の副長官ウェンディ・シャーマンの引退に伴い、大統領のジョー・バイデンが国務次官のヴィクトリア・ヌーランドを副長官代理に指名したのが同月の24日。当初の大方の予想ではヌーランドがそのまま正式に副長官に昇進すると思われていたが、11月1日になってバイデンが副長官に任命したのは、国家安全保障会議(NSC)のインド太平洋調整官兼大統領副補佐官のカート・キャンベルだった。
数々の歴史的スクープで名高いジャーナリストのセイモア・ハーシュによると、ヌーランドの副長官代理指名にあたっては、シャーマンの引退が報じられた5月に「多くの人たちが後任に選ばれるのではないかと懸念する人物のヌーランドに関して、省内でパニックに近い状態を引き起こした」(注1)とされる。それでもバイデンは、「国務省内の多くの激しい反対を押し切って」(注2)副長官代理に昇格させたという。
ヌーランドは毀誉褒貶の激しさで知られているが、クリントンとブッシュ(子)、オバマ、バイデンという共和党と民主党の四つの政権に仕え、影響力を発揮して現在も存在感の衰えを知らないキャリア官僚としての経歴は、世間的には申し分がないはずだ。
「ヌーランドは、多くのアメリカ外交官の羨望の的となるキャリアを築いてきた。彼女は 2005 年から初の女性 のNATO 大使を務め、2013 年にはヨーロッパおよびユーラシア問題担当の国務次官補に就任した。彼女の同僚のほとんどは大使になれることはなく、ましてや次官補になれることもない。彼女は(トランプ政権の発足に伴い)2017年に公務員を引退したが、バイデン大統領はヌーランドを国務省の最高位のキャリア官僚である政務担当国務次官に指名した」(注3)
その一方で、副長官代理への昇格に伴って生み出された「パニックに近い状態」は、ヌーランドの省内の評判がいかほどであるのかを容易に想像させる。だがこの人事にあたっては、バイデンが政権内で最も信頼する側近中の側近でヌーランドとは「長年にわたって非常に緊密に協力してきた」国務長官アントニー・ブリンケンの「圧力」(注4)もあったとされる。対抗馬として大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)のジョン・ファイナーの名前も挙がっていたが、ヌーランドはそのまま「代理」が取れてシャーマンの後継者に正式に就任してもおかしくはなかったはずだった。
ところが9月になってキャンベルの名が浮上し、番狂わせ人事となったが、その背景には何があったのか。現在まで内部の子細な情報は伝わってはいないが、考えられる要因としてウクライナの情勢を無視することはできないだろう。
ウクライナ戦争の流れが変わってきた
現在、イスラエルによるガザ大虐殺が大きく報じられ、欧米の「ウクライナ支援」熱も以前ほどではないためウクライナに関する情報は以前と比べ減少しているが、同時に米国には極めて不利なウクライナ軍の劣勢も伝えられている。それは即、ウクライナにおける内乱と戦争に最も国務省の実務者として関与し続けてきたヌーランド個人を取り巻く環境、そして本人に向けられている評価の悪化をもたらさずにはおれないはずだ。今回のヌーランドの副長官就任が拒まれた人事は、そうした事情と無縁ではないだろう。
すでにこれまでのような「ロシア=悪、ウクライナ=善」という二項対立の図式に基づく米国とNATOの広報機関の役割を演じてきた「報道」も、軌道修正を余儀なくされている。ようやく「冷静さ」がわずかながらでも戻ってきた感があるが、その典型が『ニューヨーク・タイムズ』と並んでそうした論調が際立っていた『ウォールストリート・ジャーナル』が、11月16日付で掲載した「ロシアの敗北について魔法のような考えを終わらせる時だ」という記事だ。
著者は、ホワイトハウスに直属して中・長期予測を行う諮問機関「国家情報会議」(NIC)の元ロシア担当者や米国防大学国家戦略研究所(INSS)の研究員等を歴任したユージン・ルーマーと、カーネギー研究所の副所長アンドリュー・ワイスの両名だが、そこには以下のように米国が認めたくない冷厳な事実が列挙されている。
「最前線では消耗戦となったロシアに敗北の兆しはない。(制裁で)ロシア経済は打撃を受けているが、深刻ではない。逆説的だが、6月のプリゴージンの反乱失敗後、プーチン大統領の権力掌握は強化された。戦争に対する国民の支持は依然として堅固であり、大統領に対するエリート層の支持も崩壊していない」
結局、現在の力関係では「プーチン大統領に戦争放棄を強制する」のは「幻想」である以上、「戦争を終わらせ、(そのために)キエフと真剣な交渉に取り組まなければならない」(注5)と結論付けるが、恐らく数カ月前にこのような言説を掲載したら、『ウォールストリート・ジャーナル』は「親露派」のレッテルを貼られるのは避けられなかったはずだ。それだけ時代の動きを感じるが、より現状に即した表現を使うのであれば、「ロシアに敗北の兆しはない」というよりは「ウクライナの敗北が迫っている」という方がふさわしいだろう。
実際、ロシア国防大臣のセルゲイ・ショイグが11月21日に発表した数字では、同月初め以降「ウクライナ軍は1万3,700人以上の兵士と約1,800種類の様々な武器・装備品を失った」(注6)という。1カ月未満でこれだけの戦死者の数は壊滅的に思えるが、現在のザポリージャやヘルソン、ドネツク、アヴデエフカ等の方面での戦況をうかがうにつけ、あながち過大ではないだろう。すでにウクライナ軍は6月に開始した「反転攻勢」が決定的に失敗し、今後の軍事的好転が望み薄となっているのは疑いない。
しかもゼレンスキーと軍司令官のヴァレリー・ザリジニーら軍幹部との対立激化すら報じられているが、ようやく交渉の動きも始まったようだ。全米テレビネットワークNBCが11月4日に「現職と元の政府高官の情報」として伝えたところでは、「米国と欧州の当局者らが、戦争終結に向けてロシアとの和平交渉の可能性についてどのようなことが必要になるかに関し、ウクライナ政府と密かに話し合いを始めた」とされる。そこでは、「合意に達するためにウクライナが何を放棄する必要があるかについての、非常に大まかな概要が含まれている」 (注7)という。
ヌーランドの関与なくしてウクライナ戦争は語れない
これが事実であれば、極めて大きな変化だ。米国は従来、ブリンケンが6月1日にフィンランドのヘルシンキで演説したように「今後のロシアとの和平交渉はウクライナの条件に沿った」ものでなければならず、「キエフが力をつけて独自の条件で交渉できるようになるまで、米国とその同盟国はウクライナ戦争を終わらせるための停戦や和平交渉を支持すべきではない」という方針で臨んできた。そして停戦は「占領した(ウクライナの5分の1の)領土の支配を強化」するという理由からも、拒否すべきだという姿勢だった。(注8)
だがNBCの報道は、米国やNATO加盟諸国がロシアの「領土の支配」に関し明らかに譲歩の方向で見直し始めたということを示唆している。そして交渉路線への変更は、バイデン政権の対ロシア戦略の根本的な破綻が避けられなくなってきた現状も物語っている。なぜならば「ヴィクトリア・ヌーランドと彼女の上司アントニー・ブリンケン、そしてその上司ジョー・バイデンは……ロシア経済を破滅させ、プーチンを退陣させ、ロシアを完膚なきまでに叩き潰すことができると本気で信じていた」(注9)という形跡が濃厚に認められるからで、彼らの構想がもはや現実になる可能性はほぼ潰えたといえる。
そしてウクライナの戦争とは、まさにそのようなロシア連邦の解体まで狙った戦略の一環として米国により誘導されてきた。そしてそこでは「ヌーランドがこれまでも、そして今も米国のウクライナ戦争への継続的な関与と拡大のホワイトハウスにおけるもっとも強硬な推進者である」(注10)という、動かし難い事実が存在する。だからこそ現在は、ヌーランドに花を持たせるような人事には手が付け難い雰囲気になっているのではないか。
米国のウクライナへの関与については、ヌーランドを除いて語れない状況が長らく続いてきた。例えばこの4月にマサチューセッツ州空軍州兵の第 102 諜報部門に所属する空軍士官ジャック・テシェイラが軍事・外交の機密情報をメッセージアプリ「ディスコード」に投稿した事件では、ヌーランドが登場する文書が含まれている。国防次官(政策担当)だったコリン・カール(この7月に退任)が、今年2月22日付で米国国際開発庁(USAID)長官のサマンサ・パワーに出した公的な書簡であり、内容は以下だ。
「国防総省はウクライナの現大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーに関して、国務次官のヴィクトリア・ヌーランドに同意する。ヌーランド国務次官は、ゼレンスキー大統領が現在のポジションに適合せず、米国政府との約束を破り、政治的力量を急速に使い果たしていると評価し、極めて正確だ。
国防総省の上級担当官とヌーランド国務次官は、ゼレンスキー大統領が2024年中に辞職し、ヴィターリ・クリチコ現キエフ市長が大統領に選ばれるための条件が作られる必要があると提言する。
国防総省はこの問題に関し、貴下に情報を提供していく。貴下の引き続きのウクライナの同盟諸国とパートナー諸国に対する支援に感謝する」
イーロン・マスクのツイートの意味
この驚くべき書簡は、米国がウクライナの「攻勢」が開始される4カ月も前からすでにゼレンスキーに見切りをつけ、「2024年」にクリチコと交代させるという思惑がうかがえる。そのための意思一致を、各機関に伝えるために作成したようだ。特に、USAIDは実質的にCIAの合法活動を担う全米民主主義基金(NED)(注11 )への資金拠出機関であり、NEDが以前からウクライナで重点的に暗躍してきた事情もあって通知は欠かせなかったのだろう。そこでは国防総省がヌーランドの見解をまず求めた形跡がうかがえ、それだけ対ウクライナ政策に関してヌーランドが重きを置かれたキーパーソンであり続けてきたのは疑いない。
書簡の日付である2023年2月といえば、ドネツク州のウクライナ軍の拠点だったソレダルがその前月半ばにロシア軍によって攻略され、さらに要衝のバフムートに対するロシア軍の包囲戦が進展した時期だ。そのため、前年11月のロシア軍のウクライナ南部のへルソン撤退に伴って大々的に主流派メディアによって掻き立てられた「ウクライナ有利」の宣伝が陰りを見せ始め、ようやくわずかずつではあるが「ウクライナ=善、ロシア=悪」の図式も揺らぐようになっていた。そうした時代の雰囲気を反映したのが、実業家のイーロン・マスクが2月23日にX(旧ツイッター)にツイートした短い文章だったろう。そこでは、「ヌーランド以上にこの戦争を推進した者はいない(Nobody is pushing this war more than Nuland)」(注12)とあった。
おそらく当時(そして依然現在も)、米国内外でウクライナ戦争の責任をヌーランドに結び付けて理解できる層は限られていただろうが、少なからず注目を集めたマスクのツイートは明らかに主流派メディアの論調から解放されるにつれ、ヌーランドという存在に懐疑的な見方が出始めてきた趨勢を象徴していたと考えられる。
だが、当のヌーランドはいたって冷笑的な態度で応じた。マスクがツィートした2月23日の当日の『ワシントン・ポスト』電子版には、ヌーランドのインタビュー記事が掲載されており、同紙の最も強硬な米国の対外政策推進派であるデビッド・イグナチウスが「個人的な質問」として早くもマスクの文面に「どう応えるか」と切り出した。これに対しヌーランドは、次のように回答している。
「ここで基本的な事実から始めたいと思うが、これはよく知られていると確信している。それは、もしこの戦争が終わるとしたら、ウラジーミル・プーチンが戦争を終わらせて軍隊を撤退させることを選択すれば、明日終わる可能性があるということだ。したがって、これは私たちに関することではない(So this is not about us)」(注13)
言うまでもなく、ヌーランドのこのコメントは明らかに虚偽だ。イグナチウスがそれ以上触れようとしなかったのはいかにも『ワシントン・ポスト』らしいが、ウクライナ戦争を「プーチンが起こしたいわれなき戦争」と主張する主流派メディアとしては当然かもしれない。
「生意気」で「下品」で「非外交的」な人物像
ヌーランドの公的な活動について論評した記事は豊富だが、この人物の性格について論じたものは非常に少ない。そのうちの貴重なレポートが、『Foreign Policy』の2014年5月6日付電子版に掲載された「非外交的な外交官」と題した記事だ。そこではヌーランドが議会のタカ派内では高く評価されていると認めつつ、次のように描写されている。
弊誌のインタビューで、ヌーランドの欧州の同僚たちは彼女を『生意気』、『率直』、『ぶっきらぼう』、そして『非外交的』と表現した。しかし彼らは、政策の違いが彼女に対する彼らの不満を説明していると強調した」
「『彼女は大半の外交官のようには関与しない』と欧州jの当局者は述べた。『彼女はどちらかというとイデオロギー的だ』」
「ヌーランドの外交スタイルに対する欧州の不満は本物であり、いたるところにあるが」、「例えば(2014年)3月中旬、イタリアのマッテオ・レンツィ首相(注=当時)が、ロシアがクリミアを併合して以来、欧州の主要指導者による初のモスクワ公式訪問でプーチンと会談した後に、ヌーランドはローマを訪問した。イタリアは、プーチンを孤立させるという欧米の政策に逆らった。……ある外交筋によると、ローマでのヌーランドの𠮟責の激しさに、イタリアの対話者は気分を害して怒ったという」(注14)
これ以外にも2015年3月8日、ヌーランドはイラクの情勢についてロシア外相のセルゲイ・ラブロフと電話で会談した際、「非常に興奮し」、「『下品で犯罪的な』非外交的言葉」を1時間近く浴びせ、ロシア側を「唖然とさせた」(注15)という逸話が残っている。
こうしたヌーランドの人物像に関しては、「下品で」「非外交的」な要素のみならず、前出の『ワシントン・ポスト』のインタビューに示されているような虚言癖も付け加える必要がある。ヌーランドが2014年2月のウクライナにおけるネオナチ・極右主導のクーデター、及び以降の2022年2月24日のロシアの侵攻の火付け役として果たした役割については膨大な資料・記事が存在する。それらからは、売り返すように「ヌーランドの欧州担当国務次官補としての活動がなければ、(2014年の)ウクライナ危機は存在しなかった」(注16)という強い可能性を見出せる。加えてチリ系米国人ジャーナリストで、5月にハリコフでウクライナ治安当局に逮捕され、今日まで拘束されているゴンサロ・リラが述べるように「ヌーランドはウクライナで起きている現在の戦争に最も責任があり……彼女がこの戦争を直接導いたと主張する人もいる」(注17)という評価も誇張ではない。
こうした事実に照らせば、どう考えても「私たちに関することではない」などと言えるはずもない。ヌーランドは、これまでウクライナに関して何もしてこなかったとでも主張したいのだろうか。
虚言癖に加えた過度なイデオロギー体質
ヌーランドの虚言癖は少なからぬ実例があり、すべてを紹介する余裕はないが、ここではあまり知られていない2014年5月9日に開かれた米下院外交委員会欧州ユーラシア小委員会での、ヌーランドの発言を取り合上げたい。その場でヌーランドは、共和党議員のダナ・ローラバッカー(19年に引退)から厳しい質問を浴びせられた。ローラバッカーは共和党内でも珍しい「ハト派」として知られ、イラク戦争に賛成したのを「誤りだった」と認め、アフガニスタンからの即時撤兵を主張していた。以下は、両者のやり取りの一部だ。
「ローラバッカー:ウクライナでは正当な選挙が実施されたが、正当に選ばれた大統領が街頭での暴力で追放された。ネオナチと呼ばれているような人々が動き回っている写真がある。ネオナチが街頭での暴力に関わっていたのではないか。
ヌーランド:まず第一に、マイダンでの運動に参加したのは大半が平和的に抗議する人々だった。母親とか、おばあさんとか、退職者も」
ローラバッカー:ネオナチが写っている写真や、多くの人が警官隊に火炎瓶を投げつけている写真がある。そうした人たちが、警官を射撃している写真もだ。確かに花を持った母親もいたが、抗議行動に参加した街頭で暴れ回った極めて危険な人たちもいた。質問は、抗議行動にネオナチも含まれていたのではないのか、ということなのだが。
ヌーランド:大変好ましくない人たちも含め、いろいろなウクライナ人がいたから」(注18)
解説するまでもなく、ヌーランドはここでも見え透いた虚言を口にしている。「母親とか、おばあさんとか」が「火炎瓶を投げつけ」たり「警官を射撃」したりはしない。当時の大統領のヴィクトル・ヤヌコーヴィチが最終的に野党との間で状況収拾のための政治合意が成立したにもかかわらず、それを無視して大統領府に攻め込み、暴力でヤヌコーヴィチを追い落としたのは、まさにヌーランドが密に連絡を取っていた「ネオナチ」や極右だった。ヌーランドが「抗議行動」の実力部隊の正体を知り抜いていながら、ローラバッカーの追及に「いろいろなウクライナ人」などという虚言で逃げを打ったのは、言うまでもなく建前では米国政府が「ネオナチ」を許容してはいないという理由からだ。
ただ虚言癖はともかく、ヌーランドの活動については「型破りの国務省のキャリア官僚」という次元では説明しきれない背景が存在する。ヌーランドはレーガン、ブッシュ(父)、ブッシュ(子)の三代の共和党政権を通じて形成され、「対テロ戦争」に向かう過程で全面登場するに至ったネオコン(neo conservative)と呼ばれる極右政治潮流の中で自己形成を遂げた。この共和党を中心とする潮流が衰退を余儀なくされた後も、オバマ、バイデンの民主党政権で支配的となった「リベラル介入主義」(Liberal Interventionism、あるいは積極的介入主義)の旗手となることで、それと本質的な差異はないネオコンの路線を今日も継承する役割を果たしている。「イデオロギー的」性格が前面に出る所以であり、しかもその「イデオロギー」が発揮されている期間はワシントンでは異例の長きに及んでいる。
周知のように、ヌーランドのパートナーが「米国が現代に生み出した最も有害な影響力を持つ外交政策の知識人」(注19)と見なされ、「最も過激で戦争挑発的なネオコンの一人」(注20)との評価も固定しているロバート・ケーガンである点も、「イデオロギー的」背景を語る上で欠かせない。
しかもオバマ政権時代はその主義主張とは別に、後述するように民主党と主流派メディアが総力を挙げて煽り立てた「ロシアゲート」事件に関与していた形跡があり、現大統領の息子のハンター・バイデンにまつわる一連のスキャンダルにも顔をのぞかせているなど、謀略的な体質も確認できる。こうした体質は、ウクライナのクーデターでも発揮されたのは疑いない。
ヌーランドはこれまでの軌跡から、「過去30年間、説明責任を逃れながら米国の外交政策を次から次へと大惨事に導いてきたネオコンの戦略的なプレーヤー」(注21 )という評価を免れるものではない。そして「大惨事」のリストに、いよいよウクライナでの「代理戦争」が加わりつつある。
(この項続く)
(注1)June 15,2023「PARTNERS IN DOOMSDAY」
(注2)August 21, 2023「Summer of the Hawks」
(注3)「The Unconventional Diplomatic Career of Victoria Nuland」
(注4)July 25,2023「Americanist Lozansky explained the increase of Victoria Nuland by pressure from Blinken」
(注5)「It’s Time to End Magical Thinking About Russia’s Defeat」
(注6)November 21,2023「Kiev Loses Over 13,700 Soldiers, About 1,800 Weapons, Equipment Units in November – Shoigu」
(注7)November. 4, 2023「U.S., European officials broach topic of peace negotiations with Ukraine, sources say」
(注8) June 3,2023「Blinken: any future peace talks with Russia must be on Ukraine’s terms」
(注9)February 1, 2023「The US Continues Escalating in Ukraine」
(注10)August 2,2023「The Most Dangerous Person on Earth」
(注11)NEDについては、成澤「CIAの公然部隊『全米民主主義基金』(NED)と『台湾独立派』」(上)
(注12)https://twitter.com/elonmusk/status/1628441775923949569
(注13)「Transcript: World Stage: Ukraine with Victoria Nuland 」
(注14)「The Undiplomatic Diplomat」
(注15)March 9, 2015「“Cheney Gives The Orders, Not Obama!” US Official Rages At Kremlin」
(注16)April 14, 2015「The ‘Nuland-Kagan Plan’ To Kill The Minsk-2 Peace Agreement」
(注17) https://www.youtube.com/watch?v=TzR—YDDIQ
(注18)「COMMITTEE ON FOREIGN AFFAIRS HOUSE OF REPRESENTATIVES ONE HUNDRED THIRTEENTH CONGRESS SECOND SESSION」
(注19)February 14, 2023「THE COMEBACK Robert Kagan and Interventionism’s Big Reboot」
(注20)January 31, 2022「Victoria Nuland, a shadowy character in the Ukraine crisis」
(注21)March 14, 2022「US & its Secret Biological Weapons Labs」
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1953年7月生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。政党機紙記者を経て、パリでジャーナリスト活動。帰国後、経済誌の副編集長等を歴任。著書に『統一協会の犯罪』(八月書館)、『ミッテランとロカール』(社会新報ブックレット)、『9・11の謎』(金曜日)、『オバマの危険』(同)など。共著に『見えざる日本の支配者フリーメーソン』(徳間書店)、『終わらない占領』(法律文化社)、『日本会議と神社本庁』(同)など多数。