【特集】ウクライナ危機の本質と背景

真実はどこにあるのか? CIAが米国人の認識を形にはめるやり方

Ted Snider(テッド・スナイダー)

・ジャーナリストを工作員にしていたCIA

一方で米国の当局者は、偽情報がロシアの行動を思い止まらせ、プーチン大統領の頭の内部に入り込むことを意図していると言うが、同時に偽情報は米国民によって受け入れられ、米国民の頭の内部へ入り込み、プーチン大統領とロシア、そして戦争についての米国民の認識を形成しているのだ。

メディアによる米国人の意識形成について、CIAには長い歴史がある。ウォーターゲート事件を暴いた『ワシントン・ポスト』紙のカール・バーンスタイン氏によれば、CIAが誕生して最初の4半期に、「CIA本部のファイルに保管された資料によると、400人以上の米国人ジャーナリストらがCIAのために様々な任務を遂行した」 という。

時には、「専従のCIA職員が海外でジャーナリストを演じていた」。両者の協力には、CIAによってほとんど一語一語そのままに書かれたコラムニストの署名入りの記事や、「米国の政策に有利な偽情報を埋め込んでいる」 記事も含まれていた。

偽情報戦争は、報道機関に限定されてはいなかった。CIAやFBIの権力乱用を調査した上院外交委員会多国籍企業小委員会のチャーチ委員会は、1967年末までに、 CIAがすでに1000冊以上の出版に助成金を出していた事実を見出した。55年までに、 CIAはハリウッドと協力して、映画を通じ米国人の意識を形成していた。

調査ジャーナリストのジョエル・ウィットニーは、著書の『タレ込み屋;CIAがいかにして世界の最良の作家たちを罠に嵌めたか』(Finks: How the CIA Tricked the World’s Best Writers)」で、「目的は彼ら(作家たち)の原稿と行動に、適切な繊細さで正しい考えを注入することだった」と述べている。

統合参謀本部はそれらのアイデアをいかに注入するかについて構想し、実際にジョン・フォード監督のMGMスタジオでトップのハリウッドスターたちに会っていた。CIAは工作員をハリウッドのスタジオに潜入させることまでやっていた。パラマウントスタジオには、同社の映画が反米的内容や米国の外交政策の批判を削除しているのを確認するCIAの工作員の役員や、検閲担当官がいた。

では、どこに真実があるのか。大方の米国人たちにとって、国際事情に良く通じた市民であり、そして適切な情報を得ている民主主義の参加者であるということは、新聞やニュース媒体に目を向けるのを意味する。しかしそれらの新聞やニュース媒体は、米国人の認識とマインドを形成しているCIAや国務省、そしてホワイトハウスが出所である偽情報を報道しているのだ。

Antiwar.com提供

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Ted Snider(テッド・スナイダー) Ted Snider(テッド・スナイダー)

米国のジャーナリスト、コラムニスト。Antiwar.comやRESPONSIBLE STATECRAFT等のインターネットのオルターナティブメディアを中心に、国際問題を執筆。  

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