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【高橋清隆の文書館】(2024年02月02日) 日米合同委員会廃止を求め、ニュー山王ホテル前で50人が気勢

高橋清隆

日米合同委員会(※)の廃止を求める集会が2月1日、東京都港区にあるニュー山王ホテル前で開かれ、市民約50人が「日米合同委員会をやめろ!」などと気勢を上げた。国の重要政策を事実上、米軍に指示されるこの秘密会議を糾弾し、同委員会の廃止などを求める要求文書を米側代表である在日米軍副司令官、ジョージB.ラウル4世に手渡そうとしたが、受け取りを拒否された。


動画URL: https://www.bitchute.com/video/86I5XyHFECSU/

日米合同委員会は隔週木曜午前11時から、外務省とニュー山王ホテルで交互に開かれている。ただし、具体的な開催日と場所は公表されていない。「国会や憲法より上にある秘密会議」とやゆされる同委員会に一人で抗議した勇者はいるが、これだけの大人数で声を上げたのは初めてではないだろうか。

抗議集会を主催したのは、市民団体「#みちばた」所属のトラック運転手、甲斐正康さんと同ラッパーの「YouTuber.JT3 Reloaded」こと川口智也さん。動機について甲斐さんは、「外国の軍隊が日本にいて、国民の頭越しに決めているのが許せない。政府のことは誰でも批判するが、この最大の問題に向き合おうとしない。だったら、自分がやるしかないと思った」と話す。

午前10時半、会場となるニュー山王ホテルの反対側に市民が集まった。ホテル脇の歩道は、麻布警察署に規制された。同ホテルは米軍人関係者専用の宿泊・娯楽施設で、一般の日本人は入ることができない。「独立国」にある租界だ。

初めに甲斐さんがビールケースの上に立ち「今日は日本にとって、とてもとても大事な抗議街宣。日本の未来を憂いて、この場所にお集まりくださいました。普段は長距離トラックのドライバーをやっている労働者ですが、本日は有休を使って来た。集まられた皆さまには、右翼や左翼など政治思想は一旦横に置いて、この対米従属、米国支配のこの日本を独立に向け、本気で団結するときが今です」とあいさつした。

TPP(環太平洋連携協定)や日米貿易協定、種子法廃止や種苗法改正、水道民営化、貧困、能登半島地震などを挙げ、「さまざまな問題があるこの現実を支配しているのは米軍、米国政府。戦後79年たっていまだに右や左で争っていたらいつまでたっても言いなりですよ。それを画策しているのが彼らCIAじゃないですか」と提起。「右翼に対しての批判、左翼に対しての批判を口にした方は、すぐに退場してもらいます」とくぎを刺し、「一致団結して日本のために声を上げましょう」と呼び掛けた。

同じく主催者の川口さんは、「日米合同委員会は米国の民主主義の基準にも違反している。ここで密約が行われ、米軍の意向に沿った日本の国益を損なう決定が行われている。米国にも名誉や騎士道のような愛国心なりがあるなら、このような非民主主義的な会合を許していいのか」と糾弾した。

「米軍が駐留している表向きの理由は第二次大戦終了後、共産主義の脅威と戦うためとしている。それに逆らう者には共産主義者みたいなレッテルが貼られるが、ちょっと待て。冷戦時代、核弾頭技術をソ連に流したのは誰だったっけ」と問い掛ける。ヘンリー・キッシンジャー国務長官やゼネラル・エレクトリック社が共産主義国に軍事技術を横流し、90年代からはインテルやマイクロソフトなどが民主・共和の両政権下で中国に技術供与していた実態を挙げ、「中国やロシアの脅威を拡大して思いやり予算よこせというのは、みかじめ料を取るやくざと飲食店の関係だ」とやゆ。「この悪習をやめない限り、私たちは抗議し続ける」とけん制した。

再び甲斐さんが、後で手渡す予定の要求文書を読み上げた。要求項目として①日米合同委員会を廃止すること②過去行われた日米合同委員会の議事録をすべて開示し、広く日本国民に公表すること③国民不在の中取り決められた日米合同委員会での密約を日本国民に広く公表した上で、その全ての密約を白紙とすること――が盛り込まれている。

項目を読み終わる度、「そうだ」と歓声と拍手が湧いた。

要求文書には賛同人名簿も添付され、鈴木宣弘東大教授や政治経済学者の植草一秀氏、小林興起元衆院議員、池田利恵日野市議などのほか、愛国団体「一水会」の木村三浩代表や新社会党委員長の岡﨑ひろみ元衆院議員も名を連ね、左右を超えて民族自決を目指す姿勢が表れている。

学者で米国大統領にも立候補した経験のあるエマニュエル・パストリッチさんはもう一通、独自の要求文書(本記事の最下段に日本語版を掲載)を持参した。ユダヤ系米国人の立場から現在の米国の姿勢を叱咤(しった)したものだ。

登壇したパストリッチさんは日米合同委員会が続いていることを参加者らに謝罪した後、「米国にはいいところがあったが、戦争中毒になり帝国に変身し、大変危険な国になってしまった。だから皆さんと力を合わせ、この秘密主義の行政運営をやめさせるしかない」と訴えた。

その上で、「日本の軍隊と米国の軍隊がイランとの戦争を準備している。戦争が始まったら、日本の経済は崩壊してしまうし、世界大戦になりかねない」と危機感を表明。「秘密主義をやめ、日米の対等な関係を持って、市民を中心とした健全な社会を一緒につくりましょう。皆さんとの協力を約束する」と宣言した。

ここから、希望した参加者によるマイクリレーが行われた。

池田利恵日野市議はリンカーン大統領の「人民の人民による人民のための政治」を引き合いに、民主主義の本来の在り方に言及。「これをないがしろにしているのが日米合同委員会」と切り出した。「私たちの先人たちは、落とさなくていい原爆を2発も落とされながら、これだけ豊かな日々を築いてくださった。私たちの最も重要な使命は、真の自立を確立すること」と主張。

日米安保条約第6条と日米地位協定による「全土基地方式」は1950年の朝鮮戦争でわが国を擁壁として使ったことに由来するとして、「だから北方領土は返って来ないんだ。今日2月1日を、真の自立に向けて歩みを進める記念日にしなければ」と訴えた。

元海上自衛隊パイロットで「日防隊」を主宰する石濱哲信氏は開口一番、「日米地位協定に反対の声を上げた人は過去、全員抹殺されている」と警告した。その上で、「米国は理想のキリスト教国家を造ろうと独立したが、最初から金融ユダヤが入り込んでいる」と指摘。イスラエルによるパレスチナ人虐殺を南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことについて、「暫定の中止も、やめろとも言わない。日本の上川陽子外相はイスラエルを全面支援しているが、イスラエルのバックは米国」と斬った。

「1960年の日米安保条約が結ばれたが、一番重要なのが日米地位協定に基づく日米合同委員会。ここで日本の戦後の全ての政治は決められてきた」と述べ、種子法廃止や食品の安全基準などを挙げた。「トルーマンが言ったように、サルである日本人をできるだけいたぶって薬漬けにしてもうけて殺していくのが戦勝国の特権であると。これは善良な米国人の言うことではない」と指弾した。

この日、同委員会が開かれたかどうかは分からない。後で外務省に問い合わせても教えてくれなかった。ただし、正午過ぎに黒塗りの背の高い車が数台出て来たほか、背広姿の日本人が固まって出てくるのが見えた。

抗議集会は2時間40分ほど続いた。終盤、甲斐さんが代表してジョージB.ラウル4世に要求文書を渡そうと、ニュー山王ホテルに入ろうとする。パストリッチさんの要求書と共に、日本語版と英語版を用意した。途中、警察官が「あそこの中は、治外法権だから」と漏らした。筆者が「えっ、治外法権?」とただすと、「いや、われわれも入れないんだ」と訂正した。

ホテル側の歩道からは、甲斐さんとカメラマンの2人だけが通行を認められる。しかし、日本人と思われる風貌のホテル従業員に敷地内への侵入を制止された。

「何で駄目なのか」
「われわれは何も言える立場にない。受け取れない」
「じゃあ、ここに置いていく」
「それは困る」

押し問答が15分ほど続く。「中に聞きに行く」と言った男性従業員が奥へ消え、戻らない。警官が「ここはアメリカだから、下手なことはできない。アメリカ大使館と一緒」と忠告したという。カメラマンを務めた河中葉さんは「イスラエル大使館でさえ、『ここに置いといてください』と対応してくれた」と米軍の異常さに驚いていた。

通行人の反応は千差万別だった。気になって近付いて来て、しばらくして立ち去る人が多い。沿道の店舗の前に動画撮影機材を置いて数人が立っていたら、店主が出勤してきた。「すいません」とすぐさま撤去しようとすると、「頑張って」と声を掛けてくれた。

一方、70代と思われる男性が人だかりの歩道を迷惑そうに歩きながら、「売国奴」「売国奴」とつぶやいていた。現状に何か異を唱えていると、全てが反日左翼に見えるのだろう。占領国による思想工作がここまで深く浸透した証しである。

横浜市内に住む30歳の男性会社員は、一人で参加した。「米国の内政干渉にむかつき、黙っていられなかった」と動機を吐露。居眠り運転により静岡県内で3人を死傷させた米兵が米国に移送後仮釈放された報に触れ、「不平等すぎるし、妻の居直った発言に腹が立つ。『日本は謝罪すべき』と発言したマイク・リーという共和党議員にも」と非難。「米国と敵対しろとか、中国に迎合するというわけでなく、独立した真の主権国家になることを望む。日米合同委員会はさっさとなくすべき」と主張する。

主催者の川口さんは「密室政治を葬り、真の民主主義を取り戻さないと。この問題意識を広めるべき」と展望。「ただ、ネットやSNS(交流サイト)は拡散されないように操作されてるので、リアルな活動が必要」と強調する。独立運動に対する抹殺を「陰謀論」と切り捨て、「CIAもモサドも人員不足でそんなことできない。孫崎享さんも言っているが、正当な理由を理路整然と主張すれば向こうも聞くはず。自己抑制が一番の敵だ」と訴えた。

要求文書は結局、配達証明付き書留郵便で同日、発送された。

※日米合同委員会……1952年の旧日米安保条約と日米行政協定の発効に伴って発足。表向きは米軍の待遇や施設の提供・返還について協議する委員会だが、財務や民事裁判、車両通行、環境など35の部会を擁し、さまざまな問題を協議する。議題や議事録は一切公開されていない。

外務省のホームページによれば、同委員会の日本側代表は外務省北米局長、米側は在日米軍司令部副司令官。代表理事は日本側が高級官僚、米側が全員米軍関係者。ただし、内容は非公開のため、密約の温床になっている。

戦争になったら自衛隊は米軍の指揮下に入る「統一指揮権密約」や米軍関係者による犯罪に関して日本にとって著しく重要な事件以外は裁判権を行使しない「裁判権放棄密約」などが、これまで交わされてきた。いずれも米側の公開文書で明らかになったもので、氷山の一角にすぎないと思われる。

高度2450キロメートルから最高7000メートルまでの空域を米軍が独占管理する「横田進入管制空域」、通称「横田ラプコン」もこの委員会で決まった。日本側の筆頭代表代理に法務省大臣官房長が据えられていることから、重要な裁判の方針もここで決められていると考えられる。

【エマニュエル・パストリッチさんの要求文書】

 

ジョージ・B・ロウェル4世准将
在日米軍副司令官
親愛なるローウェル将軍

私たちは、日米間の建設的、積極的かつ透明性のある協力に献身する米国市民として、貴殿に手紙を差し上げました。私たちは、今日の日米関係を支配している違憲の日米合同委員会(日本語では「日米合同委員会」)について懸念しています。

この書簡は、思慮深い日本の市民グループによって起草された、同じ日米合同委員会に関する別の書簡に添えられたもので、その問題点を詳しく述べている。

秘密の日米合同委員会は近年、悪質な傾向を帯びてきており、選挙で選ばれた議員や日本国民、あるいは米国市民に対する説明責任を果たすことなく、秘密裏に政策を決定するためのプラットフォームとして機能している。

秘密の日米合同委員会という概念そのものが、最初から違憲で非倫理的なものだった。東京の繁華街で定期的に開かれ、選挙で選ばれたわけでもない米軍将校と日本政府高官が政策を決定するこの不透明な機関は、日米両国の熟議民主主義と法の支配のプロセスを台無しにする。その行動は、過去20年間にアメリカの連邦政府と軍に忍び寄った違憲の秘密統治への危険な傾向を助長し、幇助している。

このような秘密統治は、イギリス東インド会社として知られる、政府、民間銀行家、傭兵がグロテスクに入り混じった大英帝国に起源を持つ。ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンのような祖先たちが独立宣言に署名したとき、正当に拒否したのだ。

アメリカ合衆国は共和制国家であり、その政府は1776年の独立宣言と1787年の憲法によって定義されている。わが国は、裕福で影響力のある個人による秘密の統治や、大英帝国で行われたような軍の民営化を容認することはできない。悲しいことに、日米合同委員会はまさにそれを実践している。

この説明責任のない秘密機関を同盟国である日本に押し付けることは、日本の主権に対する侮辱的な侵害であるが、アメリカ側にとっても違憲であり、建国の背景にある法的・道徳的要請に違反している。
あなたが署名した軍人の入隊宣誓には、”内外のすべての敵に対して合衆国憲法を支持し擁護することを厳粛に誓います “という言葉がある。米国の市民として、私たちはこの憲法へのコミットメントを共有している。

言い換えれば、在日米軍の第一の任務は、憲法に従って米国民に奉仕することである。憲法を守るには、透明で説明責任を果たす政府が必要です。

私たちの尊敬すべき日本の同僚たちは、日本国の主権を擁護する書簡を提出しました。この書簡には、在日米軍(USFJ)、米軍全体、連邦政府に対する3つの要求が含まれている。私たちは、これらの要求が正当かつ適切であると感じています。

1. 日米合同委員会を廃止すること。
2. 日米合同委員会の設立以来のすべての議事録を公開し、すべての日本国民がアクセスできるようにすること。
3. 日米合同委員会が民主的手続きを経て日本国民の承認なしに決定したすべての密約を日本国民に公開するとともに、そのようなすべての密約が今日から無効であることを保証するための行動を直ちにとること。

日米合同委員会によって結ばれた密約が、日本の憲法と主権を侵害し、米国の憲法をも侵害していることが、機密解除された文書によってすでに明らかにされている。

日米同盟が日米両国民の間で維持され、両国の憲法に完全に合致していることは極めて重要である。

私たちの軍隊は憲法に従わなければならず、そのメンバーは、日米合同委員会やその他の場所で出された、憲法の文言や精神に反する秘密指令を拒否しなければならない。コンサルタント、企業、銀行、そしてそれらの代表者は、意思決定プロセスにおいていかなる役割も果たすことはできない。

最後に、私たちを透明で道徳的に健全な、生産的で持続可能な経済活動に基づく経済から引き離し、戦争、膨張、搾取、支配に基づく経済へと引きずり込もうとしている、軍や連邦政府全体に働く悪意ある力について考えることは、アメリカ人としての私たちの責任である。

武器製造会社(その多くは米国でほとんど税金を払っていない)の武器を売るために軍人が違法かつ違憲に使用されていることであれ、超富裕層を代表するコンサルティング会社やロビイストが軍に要求していることであれ、私たちはこのような説明責任のない統治と際限のない領土拡張を止めなければならない。過去5千年の歴史的記録は、際限のない軍拡がどのような悲劇的結末をもたらすかを正確に物語っている。

米国の統治は20世紀、国家安全保障という曖昧な概念によって憲法と連邦法が破壊され、危うくなった。 その結果、帝国主義の経済的・構造的要請に従いながら、憲法が定める共和制を守るふりをする国家安全保障国家が確立された。

日米合同委員会の存在は、米国が共和制国家ではないことを米国人と世界に宣言している。世界帝国のように振る舞い、同盟国であるはずの日本をクライアント国家として扱うことは恥ずべきことである。
私たちは今日、日米合同委員会に関して行動を起こすことを求めます。そして、この書簡へのご回答をお待ちしております。

敬具

※なお、この記事の原文は、コチラ→「高橋清隆の文書館」2024年02月18:10(livedoor.jp)

米合同委員会廃止を求め、ニュー山王ホテル前で50人が気勢、からの転載です。

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高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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