木村朗監修『終わらない占領との決別 目を覚ませ 日本!!』かもがわ出版、2022年の書評
映画・書籍の紹介・批評ウクライナ戦争で他国の「軍事占領」を目の当たりにした日本国民ではあるが、その一方で自分たちが「軍事占領」されていることを忘れている。それはダメ、目を覚ませ!!というのをタイトルにまで入れた本がそうそうたる有名人を並べて出版された。
鳩山元首相から東京新聞の望月衣塑子氏、一水会の木村三浩代表、新外交イニシアチブの猿田佐世代表などを執筆者とし、協会参与(???)の末浪靖司氏、協会になじみの国際アジア共同体学会進藤栄一会長も執筆者に加わっている。
これだけの執筆陣が集まれば、論点も多岐にわたる。特に興味深いものに、一水会木村代表の主張する第2次世界大戦論(日中戦争と日米戦争の性格の相違を主張)、転換期には前に転換させようとする動きと逆行させようとする動きがせめぎあうとする進藤栄一氏の議論がある。
また、「対米従属」といっても、日本の政界・官界・財界の側が「自主的」に従属しているというメカニズムを解明した猿田佐世氏の実証的議論も興味深いものとなっている。「対ソ」重視のアメリカに対し、「対中」重視の日本政府筋の戦略のおかげであり、その背景には国民自身の「自主的従属」があるということとなろうか。一読を勧める。
(※本書評は、「日中友好新聞」2022年6月1日号からの転載記事です。)
1956年京都府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了。立命館大学経済学部助教授、京都大学経済学研究科助教授、教授、慶應義塾大学経済学部教授を経て、現在、京都大学・慶應義塾大学名誉教授。経済学博士。数理マルクス経済学を主な研究テーマとしつつ、中国の少数民族問題、政治システムなども研究。主な著書・編著に、『資本主義以前の「社会主義」と資本主義後の社会主義』大月書店、『中国の少数民族問題と経済格差』京都大学学術出版会、『マルクス経済学(第3版)』慶應義塾大学出版会、『マルクス派数理政治経済学』慶應義塾大学出版会などがある。