【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年3月14日 (木) 血税投入のロケットが爆発

植草一秀

スギ花粉の飛散が本格化して大変つらい。

多数の国民が花粉症に苦しんでおり、抜本的対策が求められる。

民間宇宙事業会社スペースワンのロケット発射が失敗した。

ロケット開発に失敗はつきもの。

失敗を糧に次の成功を目指すべきだとの論評が流布される。

これらの事業を民間の力だけで実施しているならその通りだ。

しかし、そうでない。

民間事業会社のロケット発射だが政府の補助金が投下されている。

そうなると、「失敗はつきもの」、「次の成功を目指せばよい」とだけ言ってはいられなくなる。

これが日本財政の根本問題。

日本国民は財政の中身に関心を持たない。

政府が財政危機を叫ぶと鵜吞みにしてしまう。

財政危機だから国民に税金の負担増加をお願いしなければならない。

こう言われると素直に応じてしまう人が多い。

第2次安倍内閣が発足したのは2012年12月。

この安倍内閣が消費税率を二度引き上げ、税率は5%から10%へと倍になった。

巨大増税が実行された。

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税率引き上げは2014年4月と2019年10月に実施された。

消費税が導入されたのは1989年度のこと。

1989年度から2023年度までに消費税で国民は約510兆円を徴収された。

しかし、この期間に個人の所得税・住民税負担が290兆円、法人の法人税、法人住民税等が320兆円も軽減された。

庶民に過酷な増税を行い、大企業と富裕層に大規模な減税が行われた。

この事実を知る市民は極めて少ない。

政府の財政支出は何に使われているのか。

これが大事だ。

政府支出を大きく三つに区分できる。

第一は、社会保障支出。

医療費、年金、介護の費用が政府から支払われる。

その財源の中心は保険料収入だ。

国民が支払う健康保険料、年金保険料、介護保険料が社会保障支出に使われる。

これ以外に政府が社会保障の支出を負担する。

第二は、公務員の人件費。

行政サービスを行うのは公務員だ。

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政府は公務員に給与等を支払う。

このことによって行政サービスが実現する。

第三は、政府の補助金。

さまざまな施策の実現を名目に巨大な補助金が支払われている。

これ以外に、国債費の支出、政府が行う投資事業(公共事業等)の支払いがある。

近年の財政運営の特徴は、第一の社会保障支出を切り刻む一方で、第三の補助金を拡大するものになっている。

財政運営のあり方として、これでよいのかを考える必要がある。

これが最大の論点だ。

財務省は国の財政支出を総括した数値を公表している。

「一般会計・特別会計歳出純計」である。

当初予算における政策支出は「社会保障と防衛費を除くと」1年間で23兆円。

この23兆円のなかに、ありとあらゆる政策支出が含まれる。

この本予算の運営は相対的には厳格なものと言える。

ところが、この外側で巨大な財政支出が実行されている。

補正予算での財政支出だ。

その大半が得体の知れない「補助金」の塊なのだ。

すべての市民にあまねく行き渡る政策支出を徹底的に切り刻み、巨大な補助金を血税を注ぐことが正当であるのか。

この点を徹底論議する必要がある。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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