【特集】イスラエル・パレスチナ問題の背景と本質

ガザでの新停戦案は実現するか?山橋宏和(日中友好ネット) (働き人のいいぶん6/4号より)

日中友好ネット

5月31日、アメリカのバイデン大統領はイスラエルが提案したとする3部構成の停戦案を発表した。

バイデンによると、まず6週間の停戦期間を設け「全面的かつ完全な停戦」を実現する。
この期間はイスラエル軍がガザ地区の人口の多い地域から撤退し、同時に人道援助物資が一斉に大量投入される。「援助物資を載せたトラックが毎日600台、ガザに入り」、これまでより多くの援助物資がガザに届くようになる。高齢者や女性を含む人質と、数百人のパレスチナ囚人とが交換される。

第2段階では、ハマスが人質にしている生存者全員を解放することになり、これには男性兵士も含まれるという。第3段階では、死亡したイスラエル人人質の遺体をハマスが返還するほか、アメリカをはじめとする国際社会の支援を得て、ガザで住宅や学校や病院を再建する「大規模な再建計画」が実施される。

しかしその一方で、イスラエルのネタニヤフ首相は翌日の6月1日、イスラム組織「ハマス」壊滅の前に恒久的停戦に同意することはできないとする声明を出した。

「イスラエルが戦争を終わらせるための条件は変わっていない」 ハマスの軍事力と統治能力の破壊、人質全員の解放、ガザがイスラエルの脅威でなくなることを挙げ、「これらの条件が満たされる前にイスラエルが恒久停戦に同意するという考えは、あり得ない」と強調した。

バイデン大統領は「イスラエルの提案」という言葉を使ったが、ネタニヤフ自身は異なる話をしている。「ハマス壊滅」を前提としてハマスと交渉などできるのか?

バイデンはこの間、口先では「ネタニヤフ首相がガザ最南部のラファへの本格的な地上侵攻を決行するなら、武器の供与を停止する」と述べるなど、和平的な姿勢を演出しているが、その一方で、その1週間後の5月14日、議会に対し10億ドル(約1560億円)のイスラエル向け軍事支援を通告した。
支援は国内軍需産業から買い付けた約10億ドル分の兵器をイスラエルに供与する形になるという。

この支援は、すでに議会を通過している「イスラエル、ウクライナ、台湾などへの総額950億ドル(約14兆9000億円)の支援」の一環となる。ネタニヤフは、バイデンはイスラエルを絶対に見放さないと考えている。

(・・・話は横にそれるが、イスラエル、ウクライナ、台湾という全く異なる国と地域に対する軍事支援が、一括して討議されるというのは全くもって驚きだ。
しかしこれは、アメリカの考えていることを理解するにはわかりやすい。アメリカにとっては、どこで戦争が起きようが、どこが勝とうが敗けようが、そんなことはどうでもよいのだ。
アメリカの軍需産業がもうけることが重要なのだ。アメリカのほとんどの議員は軍事企業、そしてユダヤ資本から巨額の資金援助を受けている。
彼らにとって重要なのは、世界のどこかで戦争が日常的に続くことだ。

ウクライナにはすでに戦争を続ける力が無くなりつつあり、イスラエルのガザへの侵攻は、国際的にも国内的にも猛烈な批判にさらされている。

次の戦争を準備する必要がある。どこかに戦争の火種はないか?なければ作り出さねばならない。
今のところターゲットは東アジアだ。台湾当局や日本、韓国、フイリピンなどをそそのかして中国や朝鮮との対立を煽っている。アメリカは戦争でもうけたいが自分自身は火の粉をかぶりたくない。
東アジアはヨーロッパからもアメリカからも遠く離れている。欧米への被害は少ない。アメリカに中国を直接攻撃する力はない。日本を前面に押し立てて、すなわち日本にはヨーロッパにおけるウクライナ、中東におけるイスラエルの役目を担ってもらって、アメリカは日本を裏から軍事支援する。

中国とは対話を継続して直接的な衝突は回避する一方、日本や韓国、フイリピンに対してはあらゆる策略を駆使して、中国や朝鮮との衝突をけしかける。アメリカ人は死なせてはならないが、アジア人には犠牲になってもらう。ここで戦争になればウクライナ、ガザで大幅に拡大した武器製造ラインを持続的に稼働させることができる。これが今、アメリカの軍産複合体がやろうとしていることだ。)

話をもとに戻すと、今度のガザ停戦への動きは大いに支持したい。そもそもこれはバイデンではなく、国際世論が作り出したものだ。世界中の平和を願う人々が街頭にくりだした。この力がバイデンに圧力をかけた。一刻も早くパレスチナに平和が訪れることを願う。

しかしアメリカやイスラエルの「善意」に頼っていては、恒久的なパレスチナの平和は不可能だ。国連が停戦に立ち会い、パレスチナ国家を承認、保障する必要がある。アメリカに頼らない国際的な安全保障体制を作る必要がある。
(写真は6月2日のラファ)   (山橋宏和)

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