【寄稿】:5月31日の反WHO巨大デモを振り返る ―左派・リベラルは右派・保守主導の反グローバリズム運動にどう向き合うのか?(下)
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日の丸と旭日旗はどこまで問題か?
集会とデモ現場で特徴的だったのは、日の丸が多く翻っていたことであり、旭日旗すら見られました―もちろん、そうでない梯団もありました。当日登壇したのも、チラシによると、「国民運動」代表の林千勝氏、作家の河添恵子氏、日本文化チャンネル桜社長の水島聡氏、参政党元代表の松田学氏ら、右派・保守系の方々が多かったようです。元自衛隊幹部の田母神俊雄氏も都知事選出馬会見の前後に姿を見せ、地上波テレビでこのデモに言及しました。保守系ジャーナリストとして知られる我那覇真子氏が、現地で詳しく取材していました。ネット上の反応等を見ていますと、こういった右派的傾向に眉を潜め、この運動を叩く人も少なくないと感じます。
日本テレビでの田母神氏の会見映像:https://x.com/i/status/1796711370320474299
我那覇氏の最新の関連業績としては、免疫学者で「WHOから命を守る国民運動」の関係者でもある村上康文博士への米国の有識者によるインタビューを企画したことが挙げられます。安倍晋三元首相暗殺事件とコロナ問題およびウクライナ問題の関係に迫る、非常に貴重な証言です。我那覇氏の沖縄や中国に関する言説に私が賛同するわけではありませんし、安倍氏の負の側面がなくなるわけでもありませんが、我那覇氏の真実探究に関するこうした実績を、正当に評価すべきでしょう。この動画の要約は以下の通りです。
・村上氏は安倍氏のアドバイザーを務めたことがあり、安倍氏はパンデミックの真相を理解していた
・安倍氏はイベルメクチンとアビガンをコロナ対策で導入しようと試みていたが、厚労省は反対
・安倍氏はmRNAワクチン接種を止めようとしていた
・安倍氏が暗殺される前日、村上氏は安倍事務所のスタッフと会談していた
・安倍氏はウクライナとロシアの平和会議を検討していたが、このことも彼が暗殺された原因の一つだと村上氏は分析
https://x.com/i/status/1798975827515932777
いずれも重大な証言であり、村上氏への詳しい取材が求められます。
私自身の考えとしては、WHOについて問題になっているのは、差別を伴う自民族中心主義のようなナショナリズムではなく、一律の基準を全世界に押し付けようとするグローバリズムです。そうである以上、国旗を掲げるのは、ごく自然であるように思われました。教育現場における国旗掲揚の強制には私は賛成しませんし、私自身が国旗に強い愛着があるわけでもありませんが、個人が自発的に掲げることに、そこまで大きな問題があるのでしょうか。過去の戦争との関連が想起されるのかも知れませんが、敗戦後に国旗が変更されなかったことが問題です。より軍事的な印象が強い旭日旗は、私から見ると場違いにも感じましたが、主催者が禁止するほどでもないのでしょう。田母神氏の持論である核武装論や教育勅語復活等に私が賛同するわけではありませんが、先に挙げたテレビ番組で今回のデモやワクチン薬害に言及したのは、見て見ぬふりをする傾向が強い現状において、画期的な貢献として理解しています。
左右を超えた「国民運動」を起こす
私自身は右派でも保守でもありませんが、今回のように、左右を超えて、心ある外国人も含め、日本に住む人々が集まれる空間を準備し、整然と行進する機会を作ってくださった主催者の方々の功績は、とても大きいと思います。本当の問題は、国民全体が被害者であるという事情に鑑み、主催者らが左右のイデオロギーの枠を超えた「国民運動」を呼び掛けたのにもかかわらず、左派・リベラル派からの反応があまりに鈍いことではないでしょうか。コロナワクチン薬害問題についても左派・リベラル派が弱いことは、拙著『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』への解説記事でも論じました。普遍を偽装しつつ個別利益に動かされる、という不条理な事態を看破することこそ重要です。なお、左派とリベラル派は本来的には異なる概念ですが、現状の日本では重なる場合が多いことから、便宜的に並列して使っています。なお、個人レベルでは、左派・リベラル派のデモ参加者も少なからずいた、と知人から報告を受けました。
「自著解説と補足:『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(下)―闇・絶望と光・希望、左派・リベラルと右派・保守のはざまで闘う書」、2023年8月7日、『ISF独立言論フォーラム』。https://isfweb.org/post-25441/
WHOの主要資金源は私的なワクチン推進組織
WHO主導のコロナワクチン問題に対して見て見ぬふりをしてしまったため、そのWHOが主導するパンデミック条約やIHR改定に対しても、反応が鈍いのではないでしょうか。WHOというと、各国の個別利益を超越した正義の国際機関である、といったイメージを抱く人が、特にリベラル派の中にはいるのかもしれません。しかし、WHOの主要な資金源は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団や、GAVI(旧称Global Alliance for Vaccine and Immunisation)といったワクチンを一方的に推進してきた私的組織であり、決して民主的・学術的正統性があるわけではありません。もちろん、WHOの現場の職員が地道な努力により優れた成果を出す、といった場合があることは否定しませんが、組織の基本的性格を知ることこそ大切です。
https://www.who.int/about/funding/contributors
WHOの2020~21年の収入では、ゲイツ財団単独でも米国を凌駕し、GAVIと合わせると最大拠出国のドイツに迫っています。
ワクチン問題に詳しい社会学系研究者・野口友康博士は、WHOの戦略的諮問グループ(SAGE)の報告書を分析し、ワクチン接種を忌避する権利がないことを問題視しました(『犠牲のシステムとしての予防接種施策 日本における予防接種・ワクチン禍の歴史的変遷』、明石書店、2022年、238頁以下)。つまりWHOは人々の接種に関する人権の一つである自己決定権を認めず、犠牲を厭わずワクチン接種を推進する機関ではないか、という疑いが掛けられているのです。こうした現状のWHOが孕む極めて危うい側面について、一般メディアの報道や日本政府の発表だけを見ている限り、ほとんど知ることはできないでしょう。
「部屋の中のゾウ」としてのコロナワクチン薬禍と反WHO巨大デモ
このデモに対して反応が鈍かったのは、左派・リベラル派だけではなく、主要メディアも同様です。コロナワクチン薬禍やWHOの問題点を訴える今回の巨大集会は、まさに「部屋の中のゾウ」なのでしょう。
「大手メディアはこのデモを報道しろ」という横断幕の言葉は、悲痛な叫びのように
感じられました。
私が六大紙の紙面閲覧や一般的なネット検索で見つけたのは、日本を代表するリベラル系メディアの一つと目される『毎日新聞』の以下のデジタル版有料記事くらいでした。「24色のペン パンデミック条約に反対する理由」、2024年6月2日。
https://mainichi.jp/articles/20240601/k00/00m/040/089000c
この記事の記者にとって、WHOによる主権侵害やコロナワクチン強制を懸念するデモ参加者の人々は「現状とかけはなれた異世界、パラレルワールドに住んでいる」と感じられたそうです。私は拙著『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年)200頁で、巨大メディア群がつくる「mRNAワクチンはコロナに対して極めて有効であり、副反応はあったとしても大したことはない」と信じられている「疑似環境」に言及しました。その上で、「こうした疑似環境が醸し出す権威は強力なものであり、それに対する異論を真っ向から唱える人は、どれだけ客観的な根拠を持っていても、まるでパラレルワールドから来た人、もしくは異常者のように見えるのであろう」と指摘しました。図らずもこの度、WHOの危険性についても、正にその通りだったことが判明しました。『毎日新聞』は、新型コロナ5類化指定から1年の今年5月8日付朝刊で、「ワクチン接種 帰らぬ夫 新型コロナ 医師、死亡との関係否定」「ワクチン安全性評価 課題」「99%『因果は分からず』」という大きな検証記事を1面と3面で掲載しました。これは他のメディアが(ワクチン後遺症を読み替えた可能性もある)コロナ後遺症を一方的に強調する中、大きな業績でしたので、今回の揶揄するような記事を尚更残念に感じました。
国際保健規則等の国際協定に対応するために整備される国内法は法的拘束力を持つ
なおNHKは、5月31日のデモを無視しつつ、翌6月1日付で「“強制接種進む”など パンデミック条約に関する誤情報が拡散」という記事を掲載しました。この記事に登場する慶応大学の詫摩佳代教授は「WHOが強い権限を持つとか、誰かに対して何かを強制するということはそもそもあり得ないことで、条文のどこにも書かれてない。国際法は基本的に、国と国が合意して初めて成立するものであって、それをどのように運用するのかは国家の裁量にかかっている」とコメントしています。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240601/k10014468551000.html
デモの主催者らは、5月末の採択が延期されたパンデミック条約および、それと連動し、当初の草稿よりも「薄められた」とも評される改定案が採択された国際保健規則(IHR)に反対してきました。「薄められた」(watered down)は元WHO職員でもあるデイヴィッド・ベル博士による表現です。次の記事で同氏は、恐怖の誇張や抑圧、強制といった基調は変わっていない、と警戒を促しています。
従来の主な反対理由は、IHRのかつての条文案に次のような問題が見られたことでした。
・WHOの指示に事実上の法的拘束力を持たせる
・「インフォデミック」対策として、WHOが「偽情報」「誤情報」とみなす情報への対策強化を行う(実質的な検閲の可能性)
・事務局長が恣意的に「潜在的」なものを含む「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言できる
・人権尊重条項が削除される
そもそもパンデミック条約の採択が見送られ、当初の危険なIHR改定案の内容が後退したこと自体、世界中の抵抗運動の賜物ではないでしょうか。
WCH「WHOの国際保健規則IHR(2005)の書き換えおよび”パンデミック条約” CA+の内容」、2023年1月3日版。
高橋清隆氏は、2024年1月の『紙の爆弾』記事で、当時のパンデミック条約とIHR草案を読み解き、WHOの「テクノクラート独裁化を各国のマスコミが促進し、官僚たちが手伝っている」と告発しています。
「条文解説 国家の主権を奪うWHOの医療独裁『パンデミック条約』『IHR改定』の危険な中身」、『紙の爆弾』2024年1月号、鹿砦社、10-15頁。
現状においても、WHOの権限強化や、「ワンヘルス」という美名の下、事実上の言論統制を志向しつつ、一律の基準を全世界に押し付けようとする大まかな方向性に変わりはありません。当然ながら、国際条約または協定に、個人に対する直接的強制力があるわけではありません。けれども、締約国が国内法を国際条約・協定に合わせて書き換える条文の内容次第では、ワクチン接種や「偽情報」「誤情報」対策がより強硬な仕方で行われる恐れは十分にあります。国の指示権限を強化し、コロナワクチンへの慎重な姿勢を見せた大阪府泉大津市の南出賢一市長のような、自治体独自の対応を不可能にしうる地方自治法改正案は、その典型例です。言論統制につながりかねない偽・誤情報対策が盛り込まれた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」案も、有識者の間で強い懸念を招いています。従来でさえコロナワクチンの半強制接種の傾向が見られた日本がこれまで、副議長を出してパンデミック条約の交渉を推進し、ワクチン政策をはじめ、WHOの方針に非常に忠実な国であったことも、念頭に置く必要があります。現状でも、動画配信の世界で絶大な力を持っているユーチューブは、WHOの政策と矛盾する情報を一律に排除・削除するという方針を取っていることにも、注意を払う必要があります。
在ジュネーブ国際機関日本政府代表部:「パンデミック条約政府間交渉会議(INB)及び副議長の業務について」、令和5年7月18日。
https://www.geneve-mission.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shigoto_kazuho_taguchi_3.html
楊井人文弁護士:「政府が『誤情報』常時監視 6月にも閣議決定へ 感染症対策の一環で 言論統制の恐れも」、2024年4月26日、『ヤフーニュース』。
YouTubeヘルプ:「医学的に誤った情報に関するポリシー」
https://support.google.com/youtube/answer/13813322?hl=ja
「パラレルワールド」の住人はどちらか?
上のNHKの記事で詫摩氏は、「条約の草案などが公開されているWHOのウェブサイトを確認してほしい」と求めていますが、主催者らは当然こうした文献を正確に読み解いています。それどころか林千勝氏は、IHR改定の交渉過程の公式動画に基づき、正式な定足数を満たさない疑いが濃厚である採決等、異例の運営が、なんと日本人議長(中谷比呂樹氏)の下で強行され、サウジアラビア、中国、エジプト等、非西側諸国から強い抗議があったことも、6回にわたるシリーズ動画で詳細に解説しています。こうした一次情報を吟味すると「途上国はワクチンの公平な配分を求め、WHOの改革に賛成している」といった“公式見解”とは、全く違う実情が見えてきます。
Channel Grand Strategy:「日本国民よ!怒っているなら行動を!デモにいたった経緯とは?|林千勝PART1」
https://www.youtube.com/watch?v=ECK8cyLLVc0&t=6s
同:「世界中、80億人に見てもらいたい A委員会の全貌|林千勝PART5」
https://www.youtube.com/watch?v=bpQl09nfPcA
なお最新のパンデミック条約草案と、採択された新IHR条文は、以下で確認できます。
Intergovernmental Negotiating Body to draft and negotiate a WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention,
preparedness and response.2024年5月27日版。
こちら
新IHR:https://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/WHA77/A77_ACONF14-en.pdf
新IHRには、誤情報(misinformation)、偽情報(disinformation)対策といった発想―つまり何が誤・偽情報かをWHOが決める―がまだ残っています(付属文書1A)。つまり、恣意的な検閲につながる恐れは消えていません。WHO事務総長が自己判断で「パンデミック緊急事態」(pandemic emergency)」を宣言できてしまう、という規定も残っています(第12条の1)。特に情報に関しては、そもそもWHO自体がコロナとワクチンについて誤情報を流したことはなかったのか、批判的な検証が必要です。
このような実態を踏まえて、はたして「パラレルワールド」の住人、もしくは「マトリックス」が作り出す幻想の世界の囚われ人はどちらなのでしょうか。また、これまでの過程も含めた調査が周到なのはどちらなのか、読者の皆さま一人ひとりに判断していただきたいです。
日本人同士で争わせて支配する分断統治戦略を看破して、広範な連帯を目指す
なお、ISFとIWJの他に、今回のデモを報道したメディアとして、スプートニク、エポックタイムズ、夕刊フジのウェブメディアzakzak等が挙げられます。ロシア国営メディア、中国の新興宗教である法輪功系のメディア、そして右派の産経新聞社系の夕刊紙による報道ですので、多くのリベラル派の方々には、忌み嫌うべき媒体ばかりかもしれません。しかし、(ほとんど)報道しなかった権威あるはずの媒体と比較してどちらが誠実なのかを再考し、記事の内容そのものの妥当性を判断すべきでしょう。
スプートニク「デモ隊が街頭行進 パンデミック条約の改定に反対」、2024年5月31日。
https://x.com/sputnik_jp/status/1796485393761608124
エポックタイムズ:「公衆衛生か全体主義か WHOと政府の対応に懸念【現場レポート随時更新】東京・日比谷で「WHOから命をまもる国民運動」開催 パンデミック条約にNO! 全国各地から参加者多数」、2024年5月31日。
https://www.epochtimes.jp/share/229730
zakzak:「WHOが採択を目指す『パンデミック条約』などへの反対デモ、1万2000人超 主催者発表 決起集会には田母神俊雄氏の姿も」、2024年6月1日。
ISFがシンポジウムを企画するほど重視する日米合同委員会に関しては、現在は新社会党の参院選予定候補者である甲斐正康氏が、定期的に抗議活動を実施しています。左右を超えて集まれる場所を、いわば左側からつくったといえます。
「属国政治から脱却!右でも左でもない、普通に働く労働者が#みちばたから声をあげる(市民記者記事・甲斐正康)」、2024年2月29日、『ISF独立言論フォーラム』。
https://isfweb.org/post-34120/
コロナワクチンとWHOの問題については、右派・保守系の方々が、そのような場所を創出してくれた、ということになるでしょう。もちろんデモに参加するかどうかは、個々人の判断です。しかし、いずれにせよ、左右の枠組みを超え、日本人同士で闘わせて分断統治を志向する戦略を見抜き、世界中の心ある人々と連帯しつつ、抵抗を続けていく必要があると私は考えています。
※この記事の原稿に対して、有意義なコメントをお寄せいただきました、池田空さんに感謝致します。なおこの記事は、2024年6月15日に脱稿し、リンクを含む記事内の情報も、当時のものです。
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☆ISF主催公開シンポジウム:日米合同委員会の存在と対米従属 からの脱却を問う
☆ISF主催トーク茶話会:エマニュエル・パストリッチさんを囲んでのトーク茶話会のご案内
☆ISF主催トーク茶話会:
☆ISF主催トーク茶話会:
★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内
しまざき・ふみたか 1984年生まれ。MLA+研究所研究員。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程(哲学専門分野)修了。ISF独立言論フォーラム会員。著書に『ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年6月)。記事内容は全て私個人の見解。主な論文は、以下を参照。https://researchmap.jp/fshimazaki 記事へのご意見、ご感想は、以下までお寄せください。 mla-fshimazaki@alumni.u-tokyo.ac.jp