小池都知事が税金を使って事前選挙活動

横田一

 5月27日の蓮舫参院議員の“電撃出馬会見”で出鼻をくじかれた小池百合子東京都知事が、有力視された都議会初日(29日)に出馬表明をせず、現職の立場を利用したメディア露出(PR)に励んでいる。まるで税金を使って実質的な事前選挙活動をしているかのようにみえる。

30日午後2時時すぎには、都庁内の保育園を視察、囲み取材では都内の待機児童数が激減したと実績をアピール。
三選出馬については「現職なので、日々公務があります。それに集中していきたい」と明言を避けた。
民放各局のワイドショーが放送されている時間帯に視察、囲み取材を含めた映像がそのまま流れる宣伝効果抜群の仕掛けだった。

現職と新人が公平に扱われる公開討論会回避の魂胆も透けてみえる。
5月末に小池知事が出馬表明をしていれば、「反自民・非小池都政」を掲げる蓮舫氏ら出馬予定候補も参加する公開討論会で、待機児童問題を含む重要課題について論戦が交わされたに違いない。
しかし小池知事が出馬表明を遅らせたことで、告示前の公開討論会開催は困難となり、現職知事だけが特権的にメディア露出が可能な状態が続くことになったのだ。

翌31日には、さらに露骨で姑息な事前選挙運動が行われた。
小池知事の広報宣伝役を買って出たのがテレビ朝日。
6月3日のサタデーステーションは「東京スカイツリーがイエローグリーンにライトアップされたこの日…都知事選への対応が注目される小池都知事は、世界禁煙デー関連の公務に出席しました」と切り出し、同席した東京都医師会の尾崎治夫会長の“三選支援宣言”を以下のように紹介したのだ。

「医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、そうした医療関係団体すべて、あるいは介護の団体、私は小池知事に引き続きやってもらいたいと、皆さんそう思っていると思う」

テレ朝が「世界禁煙デー関連の公務」と紹介したのは、5月31日に始まった「禁煙週間」に合わせて都内の複数の施設を受動喫煙防止のシンボルカラーのイエローグリーンにライトアップするイベントであったためだが、実際は医療関係者の“プレ決起大会”の様相を呈し、「都知事選向けの政務(政治活動)」が主目的に見えたのだ。何しろ点灯式が行われたスカイツリー10階のイベント会場は一般客の入場が不可で、関係者しか入ることができなかったのだ。

「世界禁煙デー関連」のイベントなら、会場を一般公開して小池知事や尾崎会長の話を聞いてもらい、受動喫煙防止の取り組みを都民に広く知ってもらうのが普通だが、不可解なことに関係者限定だった。
税金(都税)を使って小池知事は、医療・介護関係者の票固めを始めたとしか見えなかったのだ。
それに呼応するかたちで尾崎会長は、知事続投(三選)に向けて医療・介護業界をあげて支援すると宣言、告示前に事前選挙活動をスタートさせたようにも見えたのだ。

サタデーステーションでは一部しか放送されなかったが、小池知事が大喜びしそうな質疑応答が行われていた。
テレビ朝日の記者が「自民党から候補が出ないかたちになっていて(小池知事は)出馬表明をしていないが、どのような支援をしてきたいと思うのか」と聞いたのに対して、尾崎会長はこう答えていたからだ。

「医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護師協会、そうした医療関係団体すべてですね。あるいは、介護だったり、いろいろなところがあるから、そういった医療・介護のいろいろな団体が一緒になって、私は小池知事に引き続きやっていただきたい。皆さん、そう思っていると思うので、応援していきたいと思っている」

都税を使ったイベント会場が医療関係者限定のプレ決起大会のような様相を呈していたことに驚いた私は、三選支援宣言をした尾崎会長を直撃、疑問をぶつけてみた。

──「知事を続けてほしい」というのは(都知事選の)事前運動になりませんか。投票を呼び掛けたのに等しいですよね。今の挨拶。

 尾崎 なんで、それがいけないのか。

──告示前に投票を呼び掛けるのは(問題ではないか)。

 尾崎 投票ではないじゃない。「続けてほしい」と(言っただけ)。

──「続けてほしい」というのは「投票してほしい」に等しいではないか。

 尾崎 違いますよ、全然。おかしいでしょう。「投票してくれ」ということは何も言っていない。

──「続けてほしい」というのは、「(医療)関係者に働きかけて(三選をして知事を)続けてほしい」ということではないか。

 尾崎 個人的な感想ですよ。

──医師会の関係者を前に挨拶をしたわけではないか。

 尾崎 「続けてほしい」というのは別に、何が悪いのですか。

──「続けてほしい」イコール「再選してほしい」「知事選で投票しましょう」ということにならないか。

 尾崎 なりません。それは、あなたの勘ぐりではないか。

──違いますか。

 尾崎 そういうことを考えるから世の中、おかしくなるのです。

ここで学歴詐称報道についても聞いてみた。

──小池さんの学歴詐称報道についてはどう思うか。学歴詐称報道。

 尾崎 それはカイロ大学がどう言っているのかによるのではないか。小島さんが言っていることはそれなりに正しいのかもしれないが、ただ彼はいろいろなことがあって、都民ファーストとこうなって(袂を分かって)しまったわけでしょう。
そういうなかでああいう発言をされるのは、そこに1つの思惑があるのではないかと思う。

──政治的な発言ということか。

 尾崎 うん。だから、あなたがいま仰ったように、みんな、そういう何でもない発言でも、みんなあなた方みたいにそういうふうに取るのであれば、そうなってしまう。

小池知事の姑息な都知事選対応が浮き彫りになっていくそれは、出馬表明を遅らせて告示前の公開討論会開催を回避する一方、現職知事の立場を利用してイベント出席などでメディア露出を増やし、企業団体への働き掛けも強めていくというものだ。

都知事選は女性対決の構図となりそうだが、新人と現職の姿勢は対照的。「反自民党・非小池都政」を掲げて真っ向勝負を挑む「攻め」の蓮舫氏に対して、新人と現職が公平に扱われる土俵に上がることを避ける「逃げ」の小池知事と見えるからだ。

守勢に回った小池知事はいつ出馬表明をするのか。都知事選から目が離せない。

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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