【連載】知られざる真実/2024年6月11日 (火) 検察立件の二階基準
メディア批評&事件検証政治2024年政治決戦の前半ハイライトが東京都知事選。
この結果によって今後の政治日程が決定されることになる。
最大の焦点は次の衆院総選挙。
小池百合子都知事が3選出馬の意向を固めた模様。
情勢調査に時間をかけたが、勝算ありとの調査結果を踏まえて出馬表明する見通し。
すでに立憲民主党の蓮舫参議院議員が名乗りを上げている。
事実上の与野党一騎打ち選挙になる。
既得権勢力はマスメディアを総動員して小池氏当選に全力を注ぐ。
小池氏は表面的に自民党の支援を受けない装いを凝らすが、実態として小池氏は自民推薦候補になる。
自民の支援を受けることが逆風として作用することを恐れて表面的に支援表明しないだけのこと。
公明は小池氏支持に動く。
自民別動隊の維新・国民も実態としては小池氏支持で動く可能性が高い。
小池氏の集票力が大幅に低下していると見られるが既得権勢力の総力戦を侮ることはできない。
自民党は4月28日の衆院3補選で全敗した。
のみならず、前橋市長選、静岡県知事選、小田原市長選、鹿沼市長選などの首長選挙で連戦連敗している。
「政治とカネ」問題で国民の怒りを招いているためだ。
「政治とカネ」問題を踏まえて法改正が審議されているが、もぬけの殻法改正が進行している。
改正法は「裏金維持法」そのもの。
しかし、既得権勢力と結託するマスメディアが自民擁護の言論誘導を展開している。
ホリエモンのような自民党と癒着するタレントに自民擁護の発言を展開させる。
「政治とカネ」問題を矮小化する悪質な情報誘導である。
主権者はメディア情報操作に惑わされず与党候補にNOを突き付ける必要がある。
今回明らかになった自民党の組織犯罪の悪質性は極めて高い。
政治資金規正法の根幹は「政治資金収支の公開」である。
公開があることによって政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置くことができる。
政治資金収支の公開はこの法律の一丁目一番地。
その収支公開を意図的に、かつ、組織的に踏みにじった。
ミステイクではなく意図的に犯罪を組織的に実行したもの。
完全な故意犯であり、悪質性が高い。
検察は摘発の基準を4000万円とした。
この基準が異常。
すでに紹介したが、2009年3月の西松事件を見るがよい。
検察は西松建設関連政治団体である「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」からの寄附を事実通りに記載して収支報告を提出した小沢氏資金管理団体会計責任者の大久保隆規氏を「虚偽記載」の容疑で逮捕・勾留した。
まったく同じ収支報告書を提出した団体が13あったが小沢氏資金管理団体だけが刑事罰の対象とされた。
小沢氏団体が受けた寄附金額は二団体合わせて1400万円で、これに対して二階俊博議員の二階派が受けた寄附金額が778万円だった。
1000万円で線を引いたと説明されたが、これも正当性に欠ける。
大久保氏は何の前触れもなく、いきなり逮捕・勾留された。
当時の漆間巌官房副長官は「この事案は自民党に波及しない」と述べた。
小沢氏だけを標的とした検察行動がそもそも不正そのものだった。
その点を捨象して、このときの線引き基準が1000万円を踏まえれば、今回の裏金事件における境界を少なくとも1000万円にするのが妥当。
ところが今回は線引きラインが4000万円にかさ上げされた。
無罪放免の最大金額は二階俊博議員の3526万円。
つまり、二階氏の立ち位置を「無罪放免ゾーン」とする検察内規があるように見える。
1000万円基準なら21人が刑事事件として立件されている。
ちなみに、2009年3月事件は、その後に驚くべき展開を示した。
西松建設元取締役総務部長の岡崎彰文氏が法廷で、二つの政治団体に実体があったことを証言した。
この瞬間に、小沢氏事務所の収支報告が「虚偽記載」でなく「適正記載」であったことが確定した。
検察が日本政治を転覆させる史上空前の誤認逮捕を実行したことが明らかになったのだ。
しかし、メディアがこの事実を一切報道しなかったため、検察史上最悪不祥事を知る国民がほとんど存在しない。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050