【高橋清隆の文書館】2024年06月18日 WHOの不正議事運営めぐり「国際保健規則はコンセンサスで採択された」と上川外相、定足数に触れず

高橋清隆

 

写真:記者会見に臨む上川外相(2024.6.18筆者撮影)

世界保健機関(WHO)総会での国際保健規則(IHR)改正案の採択をめぐる不正な議事運営への疑惑について上川陽子外相は18日の記者会見で筆者の質問に対し、「慣行に従い、 コンセンサスで採択されたと承知している」との見解を示すにとどめ、定足数の問題に触れなかった。

IHR改正案はWHO年次総会最終日の6月1日午後9時すぎ(日本時間の6月2日午前3時すぎ)に突如開かれたA委員会(Committee A)で、パンデミック条約案とともに本会議に移管が決定され、直後の本会議で採択された。しかし、いずれも世界保健総会手続規則が定める定足数を満たしていない。

そこで筆者は次の質問をした。

 WHO総会A委員会の最終会の議場は空席だらけでしたが、議長は定足数を数えず、審議はなく、議決もありませんでした。
直後に開かれた本会議では、議長がIHR改正の成案を10分ほど読み上げ、『決議案の採択に異義はありますか?』と向けた後、『異義は見受けられません』と一方的に可決しました。
委員会で採決する場合と総会の定足数は過半数とすることが『世界保健総会手続規則』で定められていますが、ここでも出席数は数えず、審議も議決もありませんでした。
しかも、IHR55条は、総会の最低4カ月前までの参加国への提案提示を義務付けています。
日本政府として、改正IHRの採択が有効であると認める根拠をお教えください。

これに対する上川氏の答弁は、次のものだった。

 ご指摘の国際保健規則IHRにつきましては、ドラフティンググループでの議論を経て6月1日、WHO総会におきまして、慣行に従い、コンセンサスで採択されたと承知している。

筆者が追問しようとすると、司会の職員がこちらを向いて手のひらを広げ押し返すポーズを取りながら、制止。「会見は以上とさせていただきます。ありがとうございました」と終了した。

上川氏はコンセンサス方式による採択は国際会議で慣例であるとして、改正IHRの成立を正当化しようとした。デジタル大辞泉はコンセンサス方式を次のように定義する。

「会議の決定に際し、票決によらず、反対意思の表明がないことをもって決定成立とする方式。」

しかし、最大の問題は定足数を満たしたかである。近現代史研究家の林千勝氏らが14日開いた「救国記者会見」の動画(下掲)内に、WHO総会での一連の場面が確認できる。

動画URL: https://www.bitchute.com/video/U5HZZGiZv6Zp/

世界保健総会手続規則85条は、「委員会は委員の3分の1を定足数とする。ただし、採決に付すべき質問を行うには、委員会の過半数の出席を必要とする」と定めている。上掲の動画では、出席者が過半数はおろか、3分の1にも満たない光景が展開されている。

本会議(総会)について同規則52条は、「会議に出席する議員の過半数が、保健総会の全体会議における議事進行の定足数を構成するものとする」と定める。改正IHRの拒否または留保と発効までの期限を短縮した2022年総会でのIHR59条改正決議も、同様な規則違反が見られる。

定足数の問題を隠すために上川氏は「コンセンサス」という採択方式を提示し、問題をすり替えたように映る。

しかも、大辞泉の定義によれば「反対意思の表明がない」ことが成立の条件である。本会議で異議を唱える声が上がらなかったのは採択に対してであり、議案に対してはコスタリカやスロバキアなど5カ国が異議を申し立て、反対意思を表明している。

林氏は14日の会見でWHOを「いかさまファシズム組織」と形容したが、上川氏は採択のいかさまを黙認・擁護し、日本国民をファシズム組織下に強制連行している形だ。

6月4日の記者会見で上川氏はパンデミック条約について、「ワクチンの強制接種や国家主権の制限について懸念を生じさせる内容は含まれていない」と答弁しているが、それらの懸念があるのはIHR改正の方だ。

IHR改正案は当初、WHOからの勧告(recommendation)についての規定に「拘束力のない」の語句や「個人の尊厳、人権、基本的自由を十分尊重する」の語句が削除されたことから、国家と個人の主権制限が心配された。これらの語句は復活したが、成案にはなお、国と個人の主権を脅かす内容が含まれる。

例えば12条には「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC・フェイク)」をWHO事務局長の一存で決定できることが定められている。

同18条ではWHOが締約国に発する勧告を列挙。その中に「ワクチン接種またはその他の予防を義務付ける」をはじめ、「感染の疑いがある者の監視、隔離」「接触者の追跡、立ち入り拒否、入国の拒否」などが含まれる。

同35条では「デジタル形式の健康証明書」、付属書1には「誤・偽情報への対処」が残る。


6/18上川外相会見(外務省ホームページ、12:27~筆者の質問)

※なお、この記事は「高橋清隆の文書館」2024年6月18日のブログ記事がらの転載であることをお断りします。

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高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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