反WHOデモの呼び掛け人、佐藤和夫さんへのインタビュー:ウクライナ問題等国際情勢にも通じ、「大同団結」と日本の真の独立を目指す行動の人

嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

 

5・31デモの成功

今年5月31日に東京・日比谷から銀座にかけて開催され、2万人規模ともいわれた反WHOデモ。潜在的に主権を脅かしかねない、WHOのいわゆるパンデミック条約、国際保健規則(IHR)改定に反対し、コロナワクチンのリスクや被害救済を訴える、という趣旨でした。パンデミック条約の採択が延期され、極めて異例な形で可決されたIHRの改定版が、極端な当初案からはだいぶ後退したことも、こういった世界規模の抵抗運動の成果であるとみることもできるでしょう。パンデミック条約もIHRも、―コロナ対策で失敗し続けてきたと非難される―WHOの権限強化や「偽情報対策」と称した言論統制を狙っていたことが、危惧されていました。
主要メディアの反応の鈍さはいつも通りですが、ISFでは、この稀に見る大規模な行動について、私のものも含め、2件の記事が掲載されています。

嶋崎史崇:「【寄稿】:5月31日の反WHO巨大デモを振り返る ―左派・リベラルは右派・保守主導の反グローバリズム運動にどう向き合うのか?」、2024年6月18・19日(2回連載)。
https://isfweb.org/post-38874/
https://isfweb.org/post-38878/

この記事のチラシは、佐藤和夫さん提供です。
高橋清隆さん:「【高橋清隆の文書館】2024年05月31日 高橋清隆の文書館『武見大臣と厚労省職員はここに降りて来て我々の話を聞け』、WHOから命を守る 5.31決起集会で1万人以上が気勢」
https://isfweb.org/post-38127/

私自身も現場に居合わせましたが、全国から結集した多数の人々による大変な熱気が巻き起こりながらも、大きな問題なく、整然と行進が行われました。主催者の方のご苦労はいかほどであろう、と思慮したところ、6月25日、ISFの寄稿者でもある浜地道雄さんの仲介で、一連の反WHOデモに関わってきた佐藤和夫さんにお話を伺うことができました(5月31日のデモについては、諸般の事情で、「主催者ではなかった」とのこと)。

佐藤さんのこれまでの歩みとコロナ・ワクチン・WHO問題

佐藤さんは1946年生まれで、石川県出身。慶応大学法学部を卒業後、石川の繊維商社に就職。当時の日米繊維交渉を目の当たりにし、日本が米国に従属しているさまを痛感していたとのこと。20代半ばごろ、大阪勤務時代に肺炎で2回入院し、生命の危機を体験しました。その後、三島由紀夫事件に衝撃を受けたことを契機として、陸上自衛隊に入隊しました。82~85年には、大使館警護の仕事のためアラブ首長国連邦で勤務し、やはり米国に扇動されていたイラン・イラク戦争を現地で目撃しました。最終的には一等陸佐まで昇進された上で、定年退官。2016年には、当時の「日本のこころを大切にする党」から、参院選にも出馬しました。現在は、年に50回ものイベントを企画する等、様々な市民運動に取り組んでおり、その中で最も重要なものがコロナとワクチン、そしてWHOを巡る問題です。

こういったご経歴から、いわゆる“強面”の方では、と身構えるかもしれません。しかし実際の佐藤さんは、柔和で物静かな紳士そのものでした。今年で78歳になられるとは信じられないほどかくしゃくとしており、忙しいながらも充実した生活を送っておられるからであろう、とお察しします。

コロナ禍の当初から、佐藤さんは、「治験の終わっていない実験的なワクチンを、コロナで重大な被害を受けにくい子供たちに接種すべきではない」、と慎重な見方をしていました。ISFにも登場した専門家である井上正康・大阪市立大学名誉教授らからも、最新の知見を得ていました。このように―国策推進一辺倒ではなく―批判的に考える専門家・有識者を早くから見極める力量が、様々な問題について、我々市民一人ひとりに求められている、といえるでしょう。

2024年1月14日に佐藤さんらが、ワクチン問題に詳しい池田利恵・日野市議会議員や作家の林千勝氏らと日比谷で開催した最初の反WHOデモは、数百人程度の参加者数でしたが、この運動に関する大きな一歩を踏み出しました。
画期的な出来事となったのは、佐藤さんが主催者となって東京・池袋で4月13日に開催されたデモ。林千勝氏、免疫学者で東京理科大学名誉教授の村上康文氏、日本文化チャンネル桜の水島総社長ら著名人を迎え、1万人とも目される人々が繁華街を練り歩きました。
高橋清隆氏:「【高橋清隆の文書館】(2024年04月13日)『WHOの横暴を許すな!』、パンデミック条約反対デモに1万2000人[東京・池袋]」
https://isfweb.org/post-36189/

5月31日の行動はその続編といえるものであり、夜の部ではWHO本部のあるスイス・ジュネーヴの会場とも中継されるなど、世界からも注目を浴びました。

日本人への「戦争」としてのワクチン禍

長年自衛官として、正に日本人を守ることを仕事としてきた佐藤さんにとっては、莫大な種類と数の有害事象と接種後死亡数が報告されるコロナワクチン禍も、日本人に対して仕掛けられた「戦争」として感じられる、と言います。自衛官らは、警察官等と並んで、ワクチン接種が特に強く推奨され、しかもいわゆる大規模接種の打ち手にまでさせられてきた、という事情もあります。佐藤さんが、厚生労働省と防衛省に、自衛隊員の後遺症数・接種後死者数を問い合わせたところ、回答はなかった、といいます。

私自身、遺伝子型ワクチンの大量接種を、自国民に対して仕掛けられた一種の「戦争」行為として、受け取ってきました。オリヴァー・ストーン氏がインタビュアーを務めた映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』でのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ元ウクライナ大統領の“名言”、「内戦とは自国民への戦争」に関連付けたものです。いわゆる裏金が問題となる中での度重なる増税、水道等の重要インフラ民営化の動き、食料自給率を益々下げる農業政策等に鑑み、日本政府は、もはや日本国民のための組織ではないのでは、といった批判的視点が必要だと思います。

パンデミック条約・IHRだけでなく、地方自治法、新型インフルエンザ等対策政府行動計画等、国内法と合わせて考える必要性

なお、パンデミック条約草案にも、IHR改定案にも、ワクチン強制や主権侵害といった文言はない、といった反論がよく見られます。しかし佐藤さんは、物事の本質を見るためには、「ワンワールド」「ワンヘルス」「平等なワクチン配布」といった表向きの美辞麗句に隠された意図を推察せねばならず、実質的な強制性が高まりかねない、と懸念を示します。5月31日のデモでは、パンデミック条約とIHRだけではなく、感染症等の緊急時に国の地方自治体への指示権を拡大する改正地方自治法(24年6月成立)や、偽情報・誤情報対策としての言論統制が懸念される、新型インフルエンザ等対策政府行動計画案への反対も掲げられていました。高橋清隆氏が、特にSNS企業と連携した偽情報・誤情報・「インフォデミック」対策に関して、同行動計画案が、パンデミック条約とIHRへの国内法整備に当たるのではないかという鋭い質問を、新藤義孝・感染症危機管理担当大臣にしていました。
高橋清隆氏:「感染症対策を口実にした『新型インフルエンザ対策行動計画』という新たな言論統制」、『紙の爆弾』2024年7月号、20-25頁。

佐藤さんも同計画案には警戒しており、6月11日には、閣議決定を阻止するための抗議デモを、国会正門前で行いました。佐藤さんは、その前後から発生していたニコニコ動画への大規模サイバー攻撃と機能停止も、4月・5月の巨大反WHOデモと無関係ではないのでは、と疑っています。周知の通り、ニコニコ動画は、いまだにWHOの公式見解に反する動画を排除・削除し続けているグローバル資本、グーグル傘下のユーチューブと違って、コロナとワクチン関連の言論統制を行わない日本製プラットフォームとして知られています。5月22・23日に佐藤さんが主催者となり、須藤元気・元参院議員、ワクチン問題追及で知られる藤江成光氏、林千勝氏、ITビジネスアナリストの深田萌絵氏ら有識者を招き、星陵会館で反WHO関連の集会を開いた時にも、ニコニコ動画の不具合で配信ができなかった時間帯があった等、確かに不可解です。「ファシズム的言論統制は既に起きている」のでは、という佐藤さんの問い掛けは、重く受け止める必要があります。

ウクライナ紛争で即時停戦を訴え

コロナ以外で佐藤さんが力を入れてきた活動が、ウクライナでの戦争に関わるものです。昨年5月18日には、やはり日比谷公園から出発して、銀座に向けて行われた「ウクライナに平和を」デモの賛同者の一人となりました。池田利恵・日野市議や井上正康名誉教授が名前を連ねています。ネット上の情報を見ますと、「親ロシア的だ」などの非難があったようです。しかし、チラシに記載されている「G7サミットは戦争を煽る会議ではなく和平を模索する会議に」「広島の地で戦争を拡大させるような話し合いはしないで」「戦争で喜ぶのは産軍複合体だけ」「メディアのロシア一方的悪者論はフェイクニュース」「即時停戦こそ日本の国益」といった文言を見てみましょう。これらの文言を、約束に反したNATO東方拡大や、血塗られたマイダン革命の実態、そしてドンバスのロシア系住民への攻撃・迫害といった事実と照らし合わせますと、平和を求めるために真相を追求する内容になっているといえるでしょう。ウクライナ問題の真相については、ISF内の塩原俊彦氏や寺島隆吉氏の連載および一連のご著書をご参照ください。

日本では左右を問わず、米国とその同盟国による扇動・分断工作・停戦妨害工作といった一連の事実を無視した、一方的なロシア叩きと徹底的なウクライナ政府支援、即ち結果的に戦争継続を訴える傾向が見られました。こうした深刻な状況があるからこそ、佐藤さんの平和についてのご見識を、尚更高く見積もらなければならないでしょう。「和夫」の和はまさに平和の和であり、自衛隊を退職されてからも続くライフワークであると聞きます。

佐藤さんは、アラブ首長国連邦での大使館勤務時代に経験したイラン・イラク戦争の実態を、イスラム世界を弱体化させるために、武器支援も含め、米国や軍産複合体等により仕組まれた戦争と見ています。「2種類のアリを瓶に入れただけでは喧嘩しないが、瓶を振ると争い始める」という佐藤さんの言葉は、今日の状況にも見事に当てはまるように感じられました。当時日本で広まった「イライラ戦争」という言葉の大元が、佐藤さんの日本の新聞へのコメントだった、という話を聞きますと、歴史の重みが伝わってきます。

こういった欧米が世界各地で仕掛けてきた代理戦争への佐藤さんの問題意識は明治時代にまで遡り、日露戦争はその典型例だと論じます。私にとっても、林千勝氏や櫻井春彦氏の議論を通じて馴染みのある見方であり、今日の東アジアにおいても、こういった危機が迫っていると危惧しています。

日本の真の独立のために左右を超えた「大同団結」を

現在は「英霊の名誉を守り顕彰する会」会長も務められている佐藤さんのご関心、ご活動は多岐にわたります。例えば、安倍晋三元首相国葬の問題や、鳩山由紀夫元首相の評価を巡って、私と全て意見が一致するわけではありません。世代もこれまで生きてきた過程も違いますから、差異があるのは当然のことです。しかし、コロナとワクチンおよびWHOの問題と、ウクライナ問題、そして対米従属打破の問題等、現代の主要課題について、先駆的な批判精神を発揮し、左右を超えた大同団結を訴えつつ、矢面に立ちながら多様な活動を主催してきた行動力に対して、大変な敬意を持っております。

今後も多くのご活動の先頭に立っていかれるであろう佐藤さんに、これからもご注目ください。巨大な薬害の問題にしても、東アジアでも迫りくる戦争の影にしても、恐らくほとんどの人が気付かないうちに、日本は決定的な危機に立たされつつあると私は認識しています。佐藤さんの目指す大同団結の輪に加わる人が増え続け、いずれ日本が真の独立への道を歩んで行くことを、切望しております。

※この記事は6月28日に脱稿しました。なおこのインタビューを企画してくださった浜地道雄さんに感謝致します。
 浜地さんの次の記事をご参照下さい。https://isfweb.org/post-26614/

 

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嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員) 嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

しまざき・ふみたか 1984年生まれ。MLA+研究所研究員。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程(哲学専門分野)修了。ISF独立言論フォーラム会員。著書に『ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年6月)。記事内容は全て私個人の見解。主な論文は、以下を参照。https://researchmap.jp/fshimazaki 記事へのご意見、ご感想は、以下までお寄せください。 mla-fshimazaki@alumni.u-tokyo.ac.jp

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