与那覇けい子さん詩集:安和(注)にて
琉球・沖縄通信あの山に
もう
木々の緑は 無い
ギザギザの白い傷口を
青空にさらして
えぐられた
傷だらけの身をさらして
立っている
恥をこらえて
立っている
台風から人を守るため だった
百年かけて身を削るつもり だった
でも
友を埋めるため
それだけのために
ただ それだけのために
削られ続ける日々
人の欲は 日に日に
スピードを増し
その身は
みるみる細く
尖っていく
何台も 何台も
黒いトラックは列をなして
今日も 並ぶ
「いただきものをいただいたら おさらばさ」
言い捨てては 砂塵をまきあげ
山の肌を 白く切り取り
海の青を 赤く染めて
走り去る
誇りある歴史が
目の前で 削られていく
削られる歴史の上に
重ねられる
琉球が琉球を売る 歴史
黒い巨体が連なる列の 最前線には
今日も 小さな人間たち
円陣を張って 何度も何度も
小さな声を はりあげている
山が 泣いている
海が 悲鳴をあげている
山から
海から
命が 削られていく
トラックは 走り去る
太った図体を揺らして 走り去る
「いただきものを いただいたら
山にも 海にも ちっぽけな人間たちにも 用はない」
山を崩し 海を埋め
刻々と形作られる
人の命を削り続ける 基地という人災
山を 削るのは 誰?
海を 埋めるのは 誰?
誇りある歴史を 削るのは
歴史の恥を 上塗りするのは 誰?
日本という名の下で 歴史を作るというあの人たち
琉球という名の下で 歴史に目をつぶるこの人たち
琉球という名の下で 共に罪を背負う わたしたち
琉球が 琉球を売った・・・・
報いを受けるのは
悲しいけれど
わたしたちだ
注:新基地建設のため辺野古の海が埋め立てられているが(工事費9300億円)そのための土砂が沖縄県名護市安和区にある琉球セメントの桟橋から積み込まれ運ばれている。
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独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。