百々峰だより(2024/06/27) 「神に許された民」と「神に許された国」に未来はあるか、その5
国際国際教育(2024/06/27)
イラキ コバヒゼ(Irakli Kobakhidze、ジョージア=旧名グルジア大統領)
ジョン・ピルジャー(John Richard Pilger、オーストラリア国籍のジャーナリスト)
ジュリアン・アサンジ(Julian Assange、ウィキリークス創始者、オーストラリア国籍)
ウェズリー・クラーク(Wesley Clark、元NATO軍最高司令官)
マイケル・ハドソン(Michael Hudson,、ミズーリ大学カンザスシティ校の経済学教授)
司法取引(a plea agreement、a plea deal、plea-bargain、plea-bargaining)
全米民主主義基金(NED;National Endowment for Democracy)
チャーチ委員会(上チャーチ院議員を委員長とするCIA犯罪の調査委員会)
ムジャヒディーン(イスラム聖戦士、アメリカのいわゆる「自由の戦士」
バラ革命(ジョージア=旧名グルジアにおける「カラー革命」2003
オレンジ革命(ウクライナにおける「カラー革命」2004)
マイダン革命(ウクライナにおける「カラー革命」2014)
略称「イスラム国」(ISIS:Islamic State of Iraq and Syria)
初の先住民大統領モラレスを生み出したボリビアで
軍部(&CIA?) が画策した第2のクーデターを、民衆が阻止!!
The Bolivian People Defeated Another Coup
https://libya360.wordpress.com/2024/06/26/the-bolivian-people-defeated-another-coup/(June 26, 2024)
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ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジが遂に英国の最も過酷な監獄「ベルマーシュ刑務所」の独房から解放されました。
米国の戦争犯罪を告発したジャーナリストが、犯罪を犯した米国政府から処罰されるという前代未聞の事件でしたが、「司法取引」という妥協的手段で解放されたわけですが、とにかく「獄死」を免れたことを喜びたいと思います。
この事件を通じて(そして「イスラエル軍による大量虐殺・民族浄化作戦」の絶対的支持)と併せて)米国の言う「ルールに基づく政治・軍事」がいかなるものかが世界に周知されることになりました。米国の権威は完全に失墜しました。
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それはともかく、私はこれまで<「神に許された民」と「神に許された国」に未来はあるか>という題名で連載を書いてきたのですが、『寺島メソッド「魔法の英語成句」ワークブック』の出版、翻訳出版『反中国心理作戦を脱却せよ』第2巻の最終校正、『翻訳NEWS』素材情報の配信など、諸般の事情で中断してしまいました。
上記の状況が一段落したので、上記連載<「神に許された民と国」に未来はあるか>にやっと復帰できそうで、喜んでいます。
これまで米国は自分の意に沿わない国があれば情け容赦ない政権転覆作戦を展開してきました。その典型例がCIAによるチリのアジェンデ政権の残虐な軍事クーデターでした。
これはCIAの指導による軍事独裁政権を成立させ、チリ民衆は塗炭の苦しみを味わうことになりました。
そして、このような残虐な作戦が南米全体を覆い尽くしたことにより、ついに米国上院はチャーチ上院議員を委員長とする特別な調査委員会を立ち上げざるを得ない事態に陥りました。このいわゆる「チャーチ委員会」のおかげで、CIAの悪逆非道の行為は米国民だけでなく世界中の世論から非難の声をあびることになりました。
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そこで米国政府は「CIAが前面に乗り出した軍事クーデター」という作戦をやめ、イスラム原理主義勢力を使って政権転覆をはかることにしました。その典型例がアフガニスタンにおける「ムジャヒディーン(聖戦士)」を利用したアフガニスタン政権の転覆でした。
アフガンで1978年に王制独裁国家を倒す革命が起きました。
そのとき生まれた社会主義政権を嫌った米国が、「社会主義政権は宗教を弾圧する」という口実で、中東一円から集めたイスラム原理主義勢力=「ムジャヒディーン(聖戦士)」、に武器を始めとして様々な援助を与えて実現したクーデターでした。
(これを米国は何と「自由の戦士(Freedom Fiters)」という名前を付けたのです!!)
その結果、せっかく誕生した新しい政権で自由を得ていた女性たちは、米国が支援する反革命でタリバンが勝利すると、次のような暗い過去に追い戻されたのでした。
それを私は、つい最近亡くなったばかりの有名なジャーナリストの著書(ジョン・ピルジャー『世界の新しい支配者たち』岩波書店2004)を引用しながら、次のように書きました。
しかし、できたばかりの新政権は、「男女平等、宗教の自由、少数民族への権利、農村における封建制の廃止など、これまでは認められていなかった諸権利の承認を含む新しい改革計画」を発表したのでした。
その結果として現出したのが冒頭で紹介したような明るい光景でした。
「女子でも皆、高校にも大学にも行けた。どこにでも行きたいところに行き、着たいものを着ることができた……。喫茶店にでも行けたし、金曜日には最新のインド映画を見に映画館に行くことも、最新のヒンドゥー語の音楽を聴くこともできた。」
(中略)
ところが、アメリカが育てあげたムジャヒディン(聖戦士)と呼ばれるイスラム原理主義集団が、新政権と戦って勝利し始めると、一転して次のような暗い光景が広がり始めたのでした。
「ムジャヒディーンが勝利し始めると、こうしたことすべてが悪いことになった……。教師を殺し、学校を燃やした……。私たちは怯えた。こうした人たちのことを西欧が支援していたのは滑稽だし、悲しいことだった。」*ジョン・ピルジャー「タリバンを育てたアメリカ」その2
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-272.html(『百々峰だより』2016/09/30)
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このようにして米国は、直接CIAが乗り出す代わりにイスラム原理主義集団を組織して政権転覆を企てるようになりました。
しかしタリバンやアルカイダと呼ばれる勢力の人権侵害ぶりが広く知られるようになると、このような勢力を使ったクーデターは段々と評判が悪くなってきます。そこで新たに企てられたのが、NGOという民間組織を使って民衆革命の様相をこらしたクーデターでした。その典型例がウクライナでした。
いわゆる「独立広場(マイダン)革命2014」でヤヌコビッチ政権が倒されたとき欧米のメディアはこれを激賞しました。
しかし、これが実は、「全米民主主義基金NED」を通路にして、裏でCIAが資金援助したNGOを使ったクーデターであったことは、今では徐々に知られるようになってきました。
さらに言えば、ウクライナ紛争はロシア軍が2022年2月にウクライナに進攻したから始まったかのように言われていますが、実は「マイダン革命」の直後からウクライナ軍がドンバス地方に激しい攻撃を開始し、その後、8年間で(2002年の時点で)国連の調査でも、すでに1万4000人の死傷者を出しています。
ですから、元アメリカ財務次官ポール・クレイグ・ロバーツも、この間、「プーチン大統領は2014年の時点で行動を起こすべきだった。そうすれば今頃は、戦いは終わっていたはずだし、犠牲者もはるかに少なかったはずだ」と怒り続けてきました。
「プーチン大統領はお人好しだ」「だからナメラレているのだ」「このままだと核戦争になってしまう」というのが氏の言い分でした。
この「20014年からウクライナ戦争が始まっていたこと」も今では広く知られるようになってきた事実です。
しかし、それについては『ウクライナ問題の正体』全3巻や『コロナとウクライナをむすぶ黒い太縄』全4巻で詳述しましたし、これまでの連載でも詳しく書きました。だから、その説明はここでは割愛させていただきます。
<註> 有名な医学誌LANCETから依頼されて「新型コロナウイルス」が自然発生ではなくて米国の研究所由来ではないかと調査委員会委員長をつとめた高名なジェフリー・サックス教授(コロンビア大学)も、最近の論文でロバーツ氏と同じような見解を発表しました。
*Why Won’t the US Help Negotiate a Peaceful End to the War in Ukraine?(米国はウクライナにおける戦争に終止符を打つ手助けをしたらどうか))
https://libya360.wordpress.com/2024/06/20/why-wont-the-us-help-negotiate-a-peaceful-end-to-the-war-in-ukraine/
June 20, 2024、Jeffrey Sachs
「第2のカラー革命は許さない」と宣言するジョージア大統領コバヒゼ
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さて、このようにNGOを使った政権転覆活動、いわゆる「カラー革命」も、だんだんと本性が暴露されてきたので、最近ではなかなか成功しなくなってきました。その典型例がジョージア(旧名グルジア)です。
ここでは2003年に「カラー革命(「バラ革命2003)」を成功させ、政権転覆作戦の成功例として東欧各国に輸出されて、2004年ウクライナの「オレンジ革命」、2014年の「マイダン革命2014」につながりました。
同じことを、もういちどジョージアで実現しようとしましたが、今度は成功しませんでした。ここでは、親米政権を選挙で倒したコバヒゼ首相が、「第2のカラー革命」を阻止するためのNGO規制法案を、親米の女性大統領の拒否権をくつがえして成立させたからです。
この規制法案を阻止するためのNGOを使った暴力的大衆運動が、CIAの指導の下に展開されたのですが、前回の「オレンジ革命」で欺されたことに気づいた多くの議員が、大統領の拒否権にNOを突きつけ、無事にこの法案を成立させたのでした。これを報じたのが次の記事です。
* Ukrainization of Georgia will not happen prime minister(ジョージアでは「ウクライナ化」は起こさせない、と現在のコバヒゼ首相が断言)
https://www.rt.com/russia/599699-georgia-ukraine-foreign-agents/
21 Jun, 2024
そもそもこの法案は、ロシアRT放送局の活動を米国が規制するためにつくられた法律でしたが、その内容は米国案よりもはるかに規制のゆるいものでした。それをバイデン政権は「民主義を破壊するもの」と声高に非難し、制裁を武器に「成立させるな」と脅迫していました。
次の論考はNGOが「人権」を口実に、米国が「外国の政権をいかに不安定化させてきたか」を自分の体験もふまえて書かれた論考です。
*How the US government uses NGOs to corrupt ‘civil society’ around the world(米国政府はNGOを利用し、いかにして世界中の「市民社会」を腐敗させるのか?)
https://www.rt.com/news/599262-us-government-uses-ngos/
14 Jun, 2024、 Glenn Diesen
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さて、このようにNGOを使った政権転覆がうまく行かないとなると、次はどんな手段が考えられるでしょうか。
それには二つの方法が考えられます。ひとつは戦前の日本が満州国という国をつくりあげ、それを拠点にして中国への支配を広げようとしたしたように、傀儡(かいらい)国家をつくるという方法です。
こうすれば現地政府の軍部を抱き込んでクーデターを起こす必要もありませんし、政権転覆したい国に巨額の資金を流し込んでNGOを育て上げ、「人権」を口実にした「カラー革命」を仕組む必要もありません。
イスラム原理主義集団によって2014年に建国を宣言した「イラクとシリアのイスラム国」 (ISIS;Islamic State of Iraq and Syria)は、ラッカを首都とし、シリア北東部の砂の平原にある町々においては、電気や水の供給、銀行・学校・裁判所などだけでなく、礼拝所、パン屋にいたるまでがISISによって運営されていたと言われています。
このISISについて櫻井ジャーナル(2015.02.22)は次のように書いています。
このところ「テロ」の象徴に祭り上げられているIS(イスラム国、ISIS、ISILとも表記)を作り上げたのはアメリカの友好国と同盟国だとCNNの番組でウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は語った。
ISを作り上げたのはアメリカ/NATOやペルシャ湾岸の産油国であり、イスラエルも支援しているということは本ブログで何度も書いてきた。つまり、内容自体は驚きでも何でもないが、その発言をした人物がアメリカ陸軍の大将だということは興味深い。
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、ニューヨーカー誌の2007年3月5日号で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアは、シリアとイランの2カ国とレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始したと書いた。
クラーク将軍はISを創設した国の名前を具体的には書かなかったが、イスラエルとサウジアラビアが含まれている可能性は高いと言える。
ここで注目すべきは、ISISをつくりあげそれを支援しているのが、イスラエルとサウジアラビアだという事実です。これについては、後で再度ふれますので、記憶にとどめておいてください。
白昼堂々とトヨタ製の車を連ねて進軍する、イスラム原理主義集団「ISIS」
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このISISについて櫻井ジャーナルは、別の記事(2015.02.22)で次のようにも書いています。
本ブログでは、ISISに対して行っているというアメリカ軍の「有志連合」による空爆に疑惑があると何度も書いてきた。
昨年9月に最初の空爆があったが、最初に破壊されたビルは、その15日から20日前の段階で蛻の殻(もぬけのから)だったとCNNのアーワ・デイモンは翌朝の放送で伝えている。少なくとも情報が漏れていることは確かだろう。アメリカにはスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人的なスパイ網などがある。イラクのファルージャやモスルをISISが攻撃している状況、戦闘集団の動きを把握していたはず。にもかかわらず、傍観していた。
写真を見ると、ISISの戦闘集団はトヨタ製の車を連ねて進軍しているので、この時に空爆すれば壊滅的な打撃を与えることができたが、パレードをやらせている。「絵になる場面」を作ったとも言える。
つまり米軍はISISを攻撃しているように見せかけているだけで、実は守っていたのです。そしてアサド大統領のシリアを攻撃させ、石油地帯を確保する役割をさせました。
それに堪りかねてアサド大統領がロシアの支援を求め、プーチン大統領がその求めに応じてロシア軍がシリアに派遣した結果、ISISは徹底的に攻撃され、今はほとんど実態をとどめていません。
ところが米国はいまだにISISが占領した油田地帯に居座り続けて石油を盗掘しています。ロシアは、米国と直接の戦争になるのを怖れたのでしょうか、これは放置されたままです。
元アメリカ財務次官ポール・クレイグ・ロバーツが、「プーチン大統領のお人好し、彼の戦略戦術は生ぬるすぎる」と怒っている理由も、このあたりにもあるのかも知れません。それにしても、米国の元高官がこのような発言を続けていることは極めて興味深い事実です。
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先に私はアメリカがNGOを使って政権転覆をはかる際に利用する手段に二つあり、そのひとつが傀儡国家をつくりあげることだと述べました。それが、ISISというイスラム原理主義集団の国家だったわけです。
が、先述のとおり、これはシリア大統領アサドがロシアに援助を求めたことにより頓挫しました。そこで米国は中東支配のために次の手を打たねばなりません。その最も簡便な手段は、かつての大英帝国がつくりあげた傀儡国家イスラエルとサウジアラビアを利用することでした。
イスラエルは現在、ガザ地区で大虐殺を繰り広げ、それを米国政府も支持しているわけですが、あまりにも虐殺ぶりがひどいので、米国の権威=「世界の派遣者としての米国の地位」を引き下げる役割も果たしています。
それはともかくとして、米国が中東支配の道具としてイスラエルを利用してきたことは間違いない事実です。ときどきイスラエルがシリアをミサイル攻撃して世界を驚かせることがありますが、これも米国の命令によるものとしか考えられません。
というのは、シリアはイスラエルにたいして一度も攻撃したことがないのですから、イスラエルがシリアを攻撃する理由がありません。私はいつもこのことを不思議に思ってきたのですが、これは米国の戦略に従ったものだと考え、やっと納得できました。
つまり、「シリア転覆からイラン転覆へとつなげる」、つまり「米国の中東支配の大きな戦略のなかで動いている」と考えると、イスラエルのシリア攻撃が無理なく理解できるようになりました。
このことを私に確信させてくれたのは世界的に著名な経済学者マイケル・ハドソンにたいする次のインタビューでした。
*Israel as a Landed Aircraft Carrier
「イスラエルは中東に配備された航空母艦―米国の真の狙いはイランだ」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2169.html(『翻訳NEWS』2024-01-02 )
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これを説明していると長くなりますので、以下、節を改めて説明します。
まず司会者のベン・ノートンは、インタビューに入る前の前提として中東の現状について次のように説明しています。
この分析において、私は経済学者マイケル・ハドソンがご一緒していただける光栄に浴しました。
後で彼にこのトピックに関する詳細を提供していただく予定ですが、最初にこの関係を理解するための非常に重要な基本的な内容を強調したいと思います。イスラエルが、世界で最も重要な地域のひとつにおける米国の地政学的力の延長であることを強調することは極めて重要です。
実際、ジョー・バイデン現米大統領が上院議員だった1986年当時、「イスラエルが存在していないかったなら、米国がそれを発明するしかなかっただろう」と発言したのは有名な話です。
御覧のとおり、バイデン大統領は上院議員だった1986年ですでに「イスラエルが存在していないかったなら、米国がそれを発明するしかなかっただろう」と言っているのです。
そしてバイデンは、2022年10月27日、ホワイトハウスでイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と会談した際も、また最近の2023年10月18日のイスラエルで行なった演説でも、この言葉を繰り返しました。
御覧のように、米国は傀儡国家ISISを設立・維持に失敗した結果、かつての大英帝国がつくりあげたイスラエルとサウジアラビアという国を借用して利用せざるをえなくなったわけです。
イスラエルが地政学的に見て極めて重要性を増してきた要因は、次のような事情にありました。そのひとつの事情は1979年のイラン革命でした。上のインタビュー記事から引用します。
歴史的に中東に関しては、アメリカはいわゆる「2つの柱」戦略に頼っていました。西の柱はサウジアラビアで、東の柱はイランです。
1979年のイラン革命まで、イランは独裁者である国王によって統治されていました。彼は米国の支援を受け、この地域における米国の利益に貢献していたのです。しかし、1979年の革命によって、アメリカは二本柱の戦略の柱のひとつを失い、イスラエルはアメリカにとって、この極めて戦略的な地域の支配を維持するためにますます重要になってきました。
この地域には膨大な埋蔵量の石油とガスがあるというだけではありません。世界有数の石油・ガス産出国の多くが西アジアにあるという事実だけではなく、地球上で最も重要な交易ルートのいくつかがこの地域を通過しているという事実もあるのです。
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しかし、イスラエルがさらにいっそうの重要性を増してきたのは、米国が大英帝国から引き継いだサウジアラビアの姿勢が変化し始めたからです。それを同記事は次のように説明しています。
歴史的に、サウジアラビアはアメリカの忠実な代理人でしたが、リヤド(サウジアラビアの首都、すなわちサウジ政府)はより非同盟的な外交政策を維持するようになっています。
その大きな理由は、中国がこの地域の多くの国にとって最大の貿易相手国となっていることです。この10年間、中国はペルシャ湾からの石油とガスの最大の輸入国です。さらに、中国は世界的な基盤整備プロジェクトである「一帯一路構想」を通じて、世界貿易の中心をアジアに戻そうとしています。
そして「一帯一路構想」において、特に「一路」とは新シルクロードを指しています。新シルクロードと一帯一路構想において、どの地域が絶対的に重要かおわかりになるでしょうか? もちろん、中東です。
繰り返しになりますが、「中東」よりも「西アジア」という用語の方がいいのです。アジアとヨーロッパを結ぶこの地域の地政学的重要性をよりよく説明するからです。アメリカが新たな貿易ルートを構築しようとする独自の試みをおこない、中国の「一帯一路政策」に挑もうと必死になっている理由も、これで理解できます。
特に、アメリカは、「インドからペルシャ湾に入り、イスラエルを経由する貿易ルート」を作ろうとしています。つまり、これらすべてのプロジェクトにおいて、イスラエルは、世界で最も重要な地域のひとつにおけるアメリカの帝国権力の延長として、重要な役割を果たしています。
だからこそバイデンは1986年当時、イスラエルが存在しなければ、アメリカが「イスラエル」を発明しなければならなかっただろう、と言ったのです。
つまり、今までは忠実な召使いとして米国に仕えてきたサウジが、今やBRICSや「一帯一路構想」に重心を変えようとしているのですから、米国は世界の覇権を維持するためには、イスラエルは絶対に失ってはならない重要国なのです。
それを、高名なハドソン教授は、巧みな比喩を使って次のように表現していました。
イスラエルは中近東の陸上に配備された空母です。イスラエルは、アメリカが中近東を支配するための発着地点なのです・・・
アメリカは常にイスラエルを単なる外国の軍事基地と見なしてきました・・・
イギリスが最初にイスラエルを設立すべきだと宣言したバルフォア宣言は、英国が中近東とその石油供給を支配したいと考えたためです・・・そしてその後、もちろんトルーマンが登場すると、軍部はすぐに自国アメリカが中近東の支配者としてイギリスに取って代わることになることを察知した・・・
ウクライナ人の最後の一人までロシアと戦い、イスラエル人の最後の一人までイランと戦うと脅してきたアメリカが、今度は台湾に武器を送り、台湾人の最後の一人まで中国と戦いませんか、と言おうとしているのです。
そしてそれがアメリカの世界戦略なのです。自国の支配のために他国を煽って戦争をさせようとしているのです。
マイケル・ハドソン教授 「イスラエルは中東に配備された航空母艦だ」
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櫻井ジャーナル(2014.06.23)は、「イラクの都市、ファルージャとモスルを制圧したISISの背後にアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの『3国同盟』が存在している」と書いていましたが、今やこの「3国同盟」の一角サウジが崩れようとしているのです。
だからイスラエルはなおさら米国にとって失ってはならない存在になりました。だからこそバイデン大統領の仇敵であるはずのトランプ元大統領さえも、イスラエル支持になります。
ガザ虐殺にたいする世界の世論、抗議の広がりを見て一時たじろぐいだバイデン氏に対して、トランプ氏は、「イスラエル見捨てた」と攻撃しているのです。ですから、大統領選挙でどちらが勝とうが基本的情勢に変化はありません。
したがって私たちにとって大切なのはパレスチナを真に解放する道は何なのかを問うことだと思います。それはパレスチナ民衆がハマスというイスラム原理主義集団の武力に頼ることなく、非暴力直接行動の戦術で闘うこと、それを世界中の民主が支えることではないでしょうか。
米国における黒人解放も南アにおけるアパルトヘイトの闘いも、このように勝利してきました。なぜならハマスはそもそもイスラエルがつくりだしたものでしたし、今回の「民族浄化作戦」もハマスの軍事行動を口実にしたイスラエル軍の反撃から始まったものでしたから。そのことを私はすでに次のブログで詳説しました。
*「神に許された民と神に許された国に未来はあるか」番外編――「非暴力直接抵抗運動」こそ彼らと闘う最も効果的戦術である
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-657.html(『百々峰だより』2024-05-08)
上でも詳説しましたが、米国における黒人解放も南アにおけるアパルトヘイトの闘いも、民衆にたいする眼を覆いたくなるような残虐行為が広く世界の眼にふれようになりました。それは民衆が、非暴力で闘ったからこそでした。
つまり、このような非暴力直接行動が、公民権運動の勝利とアパルトヘイト廃止に導いだのです。
同じことがいまパレスチナで起きているように思います。
もしガザ民衆がイスラエル軍の攻撃を怖れて国から脱出し、「イスラエルが裏でエジプト政府と交渉して脱出した民衆のためにエジプトにつくったアパート群」に入っていれば、確かにガザ民衆の命は救われたかも知れません。
が、それこそネタニヤフ首相の「思う壺」だったことでしょう。
そうすれば、ネタニヤフ首相は、狙いのガザ沖に眠っている豊富な資源を手に入れ、「大イスラエル構想」を実現する第一歩を踏み出すことが出来たでしょうから。
しかしガザ民衆は殺されても殺されても、ガザにとどまる道を選びました。この勇気ある行動が南ア政府のICJ(国際司法裁判所)提訴の道を切り拓くことになりましたし、世界各国の学生運動にも火を付けることになりました。まるでベトナム戦争反対運動の再来を見るようです。
したがって「『神に許された民』と『神に許された国』に未来はあるか」という問いに対して、現在の私は確信をもって、その答えを言うことができます。「ガザ民衆は必ずや勝利する」と。
☆寺島先生のブログ『百々峰だより』(2024/06/27)からの転載になります。
*「神に許された民」と「神に許された国」に未来はあるか、その5
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