【連載】知られざる真実/2024年6月26日 (水) 二つの日本政治根本課題
政治6月20日に鳩山友紀夫元内閣総理大臣が理事長を務める一般財団法人東アジア共同体研究所主催の第57回世界友愛フォーラム勉強会で講演をさせていただいた。
演題は「いま日本政治をどう変えるべきか」。
日本政治は混迷の極みにある。
岸田文雄内閣が発足してこの秋で丸3年。
内閣支持率は3割を切り、2割を下回り、政権の危機が続いている。
昨年秋に自民党の巨大裏金不正事件が表面化した。
議員立法で制定した政治資金規正法の根幹は政治資金収支の公開。
ところが、自民党が組織ぐるみで政治資金収支を隠蔽して巨額の裏金を創出していた。
裏金議員は85人。
重大な犯罪である。
しかし、検察は巨大犯罪の氷山の一角しか摘発しない。
政治権力と癒着した刑事司法が歪んだ刑事司法の運用を行い、日本政治の堕落を助長している。
つばさの党の幹部3名に逮捕が繰り返され、身柄が勾留されたままになっている。
彼らの身体の自由、政治活動の自由を奪った理由は小池百合子氏の学歴詐称疑惑を厳しく追及したことにあると見られる。
学歴詐称も公選法違反。
選挙区の有権者への利益供与も公選法違反である。
安倍晋三元首相は桜を見る会前夜祭で選挙区の有権者に利益供与したと見られる。
しかし、これも無罪放免。
小池氏の学歴詐称疑惑についても十分な捜査が行われているとは言えない。
「政治とカネ」の問題に焦点が当てられ、政治資金規正法改正が審議された。
この過程で注目されたのが政策活動費。
政党から政治家個人に政治資金が流されて、その使途が一切明らかにされない。
自民党では幹事長に年間10億円もの政治資金が流されて、使途がまったく開示されていない。
野党でも億円単位の政治資金が幹部に流されて使途が公開されていない。
政治資金収支の公開は政治資金規正法の要。
政策活動費制度を廃止するか、使途の全面公開が必要不可欠だ。
しかし、岸田自民はもぬけの殻のザル法案を提出して制定を強行した。
自民党のザル法改正提案に乗ったのが維新。
維新も同じ穴のムジナであることが明らかになった。
「自公維ムジナ三兄弟」の呼称が定着することになる。
次の総選挙への悪影響を心配した維新は参院で反対に回ったが、見え透いた猿芝居。
日本の主権者は衆院補選や地方自治体の首長選挙で自民が支援する候補を落選させ続けてきた。
この流れを東京都知事選でも継続する必要がある。
そのために必要なことは投票率の引き上げ。
自公に投票する利権複合体の有権者が全体の25%程度存在する。
この勢力の投票に打ち勝つには投票率を高めて第2位候補に投票を集中させなければならない。
その対応を東京都の主権者7月7日の投票に際して示すことができるか。
重要な局面を迎えている。
世界友愛フォーラムの講演会で私は日本政治の根本課題が二つあると述べた。
第一は、米国からの自立、日本の独立だ。
第二は、一人も取り残さない政治の確立。
政治の目的はどこにあるか。
政治の目的は政府の支援が必要な個人に必要十分な支援を実現することにある。
強い者のための政治ではなく、弱い者のための政治だ。
現在の日本政治には、この二つが欠けている。
15年前に誕生した鳩山内閣が目指したものがこの政治だった。
この原点にいま、立ち返るべきだ。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050