【連載】人権破壊メカニズム“知られざる核戦争”(矢ヶ﨑克馬)

矢ヶ﨑克馬:第144号通信 *ゆんたく学習会 7/20(土)*そろそろ、ICRP/国際原子力ロビーの支配に終止を打ちませんか?(2)

矢ヶ﨑克馬

1、第63回つなごう命の会・ゆんたく学習会
話題:命と道理を守る本当の『被曝評価』体系を確立するために
新評価体系  リスク係数と吸収線量

日時 7月20日 (土) 16:00~
*記事公開時にイベントは終了しておりますが原文をそのまま載せております。

ZOOM URL パスワード等
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ミーティングID: 771 881 3361
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ご参加予定の方は事前に<phoenix.pmyⒶgmail.com>
までご連絡ください。(Ⓐを@にご変更ください)

 

2、そろそろ、ICRP/国際原子力ロビーの支配に終止を打ちませんか?

ICRPを「科学的かつ人権的」な目できちんと批判することをしたいと先ず思います。
その上で、住民の被爆被害を実際に食い止めることができるように、各国政府が「ICRP勧告」を国内法として取り入れることを検討するように「(仮称)JCRR勧告」を発して、ICRP基準に取って代わる基準作成をしたいと思います。その様な位置づけでまずは「(仮称)JCRR準備会」を呼びかけたいと思っております。

課題は次のようなものと考えます。

(1)科学的にICRP体系を批判する

ICRP体系は内部被曝が見えないように工夫されています。内部被曝の害があからさまに見える科学を構築しましょう。
ICRP体系は被曝被害のごく一部のがんなどしか認めません。被害対象を事実上DNAだけに限定しています。実際上のリスクをありのままにカウントする体系を作りましょう。

量的に健康被害をもたらす要因は二つあります。

その一つは被曝線量、もう一つは放射線電離の密集度(電離された損傷の「修復困難度」)です。
ICRPは2要因を被曝線量だけに限定することにより、内部被曝を見えなくする体系・膨大な被害をがんに限定するような過小評価体系を作りました。
架空の単位「シーベルト」を設定してハチャメチャな体系を作りました。この害悪は巨大です。

(2) 哲学的(人権的)にICRPの功利主義を批判する。

中川保雄さんの批判でICRPの功利主義があからさまに暴露されましたが、その後「永久に汚染された地域に住民を居住し続けさせる」ことを目指した「事故の時には100mSv迄OK」という開き直りを、国際原子力ロビーは致しました。それが国内法を超えて東電原発事故に適用されました。日本が世界で初めて「外部被曝だけで20mSv」規制が国内法を超えて適用されました。個々に貫かれている生存権・人格権破壊の哲学を喝破致しましょう。

(3)内部被曝隠しでどのような悲劇(住民の健康被害・不当差別)が生まれたか(代表例)

①東電原発事故
粗死亡率、年令調整死亡率、性別年令別死亡率全てで、2011年以降それ以前のトレンドに比較して死亡者の異常増加が認められました。特に性別年齢別死亡率では以上死亡増加が9年間で63万人、異常死亡者減少が57万人という恐ろしい結果を得ています。

②原爆被爆者・被災者
原爆被爆者支援法に内部被曝が排除されて外部被曝だけの基準が設定されました。それが故に原爆被災に激烈な差別と偏見が押しつけられ79年に及びます。内部被曝を厚労省に認めさせ事実に即した支援が行われるように致しましょう。

(4)どのような表現で真のリスクを体系化できるか、科学の目で体系を作ります。

(5)(仮称)JCRRをどのような組織と位置づけるか?

科学と人権に立つ、力を合わせられるような組織を作ることを願っています。
どうぞよろしくお願い致します。

3 厚労省は被爆体験者への偏見と差別をやめてくださ

(1)被爆被害者の記述は「黒い雨の証拠にならない」のか?

「被爆体験者」を巡り、厚生労働省は当時の被爆体験記を調べた結果を公表した。国立長崎原爆死没者追悼平和記念館資料から、被爆地外3744件を抽出し、雨に関する記述41件、飛散物に関する記述が159件あった。それを統計学や放射線疫学などの専門家3人に評価を求めた結果は「思いを記述したもので、降雨などを明らかにするデータとしては信頼性に乏しい」「天候の記述を網羅的に確認せず調査として不十分」「体験から執筆までに記憶が修飾された可能性がある」という意見が出され、厚労省は「降雨などを客観的事実として捉えることができない」と結論づけた(JIJI.COM、2024/7/8))。

雨域などの指定が困難だというのとは違い、「降雨」自体を否定しているのだ。
専門家の先生や厚労省は人権に基づく人道の心と科学の誠実さを失っている!被爆被災者に対する人間としての尊厳が無いのである。原爆被災者差別に対する謝罪など毛頭ないのである。

(2)「知られざる核戦争」は今も続く
原爆被爆者援護法に基づく地域指定などは、外部被曝に限定し内部被曝が排除されている。現実の被災者は圧倒的多数が内部被曝により健康被害を受けたのである。
広島高裁判決は内部被曝を完璧に認めた。半径15km程度の水平原子雲の広がった地域には放射能環境が形成されたことを認定した。

しかし国は頑強に「内部被曝」認定を拒否し続ける。まさに米軍仕込みの「知られざる核戦争」が冷酷に継続している。専門家や厚労省は「知られざる核戦争」の執行将兵なのである。

原爆投下直後の米国資料(プルトニウムファイル)に次のようなものがある。
グローブス准将(マンハッタン計画指揮者)により広島長崎に派遣されたマンハッタンのウォーレン医師調査団の一員コリンズはこう語っている:「自分たちはグローブス准将の首席補佐官ファーレルから、『原子爆弾の放射能が残っていないと証明するよう』言いつかっていた。多分調査団は被爆地に行く必要さえ無かった。というのも一行が日本派遣の指令を待っていた頃「スターズアンドストライプス(星条旗新聞)」に我々の調査結果が載ったよ」

(3)広島高裁判決は「火球内放射能」が広域に分散した物理的メカニズムを認定した

「黒い雨」の広島地裁判決の精神は飽くまでも今までの「内部被曝排除」の範疇に入るものであったが、人道に貫かれる判決であった。しかし、広島高等裁判所の判決(最終判決)は、「内部被曝排除」を否定し、内部被曝を敢然と認定するものであった。

広島の法定では黒い雨の領域についての詳細な報告が提示された。増田善信氏、村上経行氏らによる2125点に及ぶ「増田雨域」と、広島市の調査1565点に付いてシミュレーション分析を行い雨の強度、時間経緯等を明らかにした「大瀧雨域」の二つの圧倒的調査結果である。

それに加えて科学的には、矢ヶ﨑による水平に広がる原子雲による放射の環境の証明が有効であった。矢ヶ﨑は、今まで無視されてきた高度4km以下に展開する円形水平原子雲の確認、今まで考慮されてこなかった放射能による「降雨メカニズム」、黒い雨に放射能が含まれる物理的メカニズム(必然性)、雨域の時間経過、雨の強弱等が、水平に広がる原子雲の形成/移動で説明できること、今まで原子雲の形成原理とされてきた物理的描像が根本的に誤りであること、等を証明した。

(4)逆転層に水平に広がる半径15kmほどの円形原子雲

およそ4kmほどの上空にあった逆転層に円形に広がる水平原子雲が生成した。気象学の経験論とは裏腹に(上昇による空気温度が露点を下回ること無しに)、猛烈な放射線(空間線量率でセシウム137の1千万倍)が水分子を電離することにより、雲を生成し水滴/雨滴を形成し黒い雨を降らせた。

水平に広がる円形原子雲こそ、放射能を半径15㎞ほどの広域に一挙に広げた科学的メカニズムである。
① (低空に広がる水平円形原子雲の存在)水平に広がる円形原子雲(以降水平原子雲)の存在が確認された。広島では全く無視されてきた。長崎では存在が確認はされていたが、大気圏と成層圏の境界の圏界面に展開したと理解されてきた。雲が生成した高さは高々4km程度であり、圏界面ではあり得ない。

(済みません。図はカットさせていただきます)
図1 長崎原子雲、投下後3分

② (水平原子雲上下で異なる風向き)水平原子雲(広島原子雲)の下側の風向きと上側の風向きが異なる事実から水平原子雲は逆転層であると判断した。高度は高々4km。

③ (中心軸太さの違い)図1(長崎原子雲、投下後約3分)に示すように、中心軸の太さは円形原子雲の下側で太く,上側で細い。これは、浮力で上昇するきのこ雲中心軸の外側部分の温度が低いために逆転層を突破できず、下方から次々と押し上がってくる雲のために水平に押し出されることを示唆する。まさに水平原子雲が形成され始める時点である。投下15分後の香焼町からの写真は水平原子雲が円形に広がることを明瞭に捉えている。約一時間後の温泉岳からのスケッチから水平原子雲の半径はおよそ15kmと判断できた。

④ (衝撃波反射波は広く、原子雲頭部全体に作用する)(動画による確認)―既存の説を完全否定
黒い雨に関する専門家会議(1988年~1991年 広島県・市設置)、および、Glasstone & Dolanら。衝撃波が地上にぶつかって反射波となりその反射波が針のように細くなり、原子雲内部を貫いたとする。現実は、原子雲頭部に達する時間はおよそ3秒である(衝撃波の初速度は約450m/s)。爆発から3秒後にはきのこの傘が横にずれ飛ぶ。波面は広域であることを示す。「原子雲は衝撃波の反射波により構造化された」説は荒唐無稽である。

(5)科学的必然性の数々
残された証拠を分析して得られた科学的必然性を紹介する。

① (水平に広がる原子雲の生成原因:浮力で理解出来る)元火球の気塊は高温である故に膨張しつつ浮力で急上昇する。その運動の故に形成された中心軸はやはり高温で放射能に満ち、浮力を持つ。中心軸は半径方向に温度勾配を持つ。逆転層では上方の気団の方が気温の高いので、中心軸の外側部分の温度がそれ以下の場合に、浮力を失い水平方向に押し出され円形原子雲を生じる。中心軸には放射能が充満し水平に広がる原子雲は放射能を持つ。従って黒い雨は放射能を有する。

② (浮力が喪失する高度は2つある)原子雲の水平方向展開に関わるクリティカルな界面は、周囲の温度が高度と共に下降から上昇に逆転する高度であり、①逆転層と②圏界面(対流圏と成層圏界面)と2つがある。

③ (降雨メカニズム:放射線の電離が水滴/雨滴を形成し、雲を作り雨を降らせる)放射線のない通常の気象環境とは異なり、水平に広がる円形原子雲が形成された時点では、雲の放射能は極めて強く、空間線量率がセシウム137の1000万倍程度の強い放射能であった83)。気塊が放射能を含む場合、放射線は電離を行い,電離は電荷を生み出す。水分子は直線対称に原子が並んでいないが故に、電気力により電荷を担う水滴同士に電気的引力が生じる。水分子はいったん電離すれば次から次へと凝結(凝縮)し,水滴を作り雨滴へと成長する。従ってこの水平に広がる円形原子雲はきのこ雲中心軸に存在した放射能が雲に移り、強く電離を誘うので、雲として広がる範囲に降雨をもたらすと同時に、放射能空間を形成する。強烈な放射能を持つ水平原子雲では雲が厚くなくとも雨を降らせるのである。

「薄い雲からは雨は降らない」という気象学的な経験論が根強く、放射線の電離作用による水滴生成のメカニズムは長く無視された。そのために水平に広がる原子雲自体が存在を確認されながらも無視され続けた。

④ (湿度が低いと雨にならない)水平に広がる円形原子雲は周囲の湿度が高いと雨を降り続けさせることが出来る。しかし湿度が低いと水滴が降下途中で蒸発してしまい、黒い雨としての降雨は少なくなる。しかし、広島・長崎は放射能環境に覆われて、内部被曝を住民にもたらしたことには変わりは無い。

広島・長崎被爆地共に原爆が投下後約1時間で雨が降り出したが、投下直後の気象条件は如何だったか?
原爆投下直後での広島の気象は、気温27℃、湿度81%、雲の占める割合はかなり有り、黒い雨が降り出す1時間後はほぼ50%程自然雲で覆われていた。それに対し、長崎では、気温28~29℃、湿度~68% (推定)。測定された日照時数は投下時は0.69だったものが、約1時間後には1.0(遮る自然雲無し)で、快晴となっていた。
長崎の方が、気温が高く湿度が低いことが「黒い雨」降雨が少ない条件となった。

⑤ (原子雲の形成は浮力を中心事項とする)原子雲の成り立ち/構造は熱的起源を持ち、浮力、空気粘性が関与する。水平原子雲の移動しながらの生成・発展・消滅が現実の黒い雨降雨の時間経過および地域依存を概略に於いて説明出来るものである。

(6)特記事項

「旧優生保護法は憲法違反」との判決を最高裁が下した。
「国は長期間にわたり障害がある人などを差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた。責任は極めて重大だ」と指摘する。

被爆体験者は「内部被曝」を無視され差別され続けた上に、健康不良の原因を「精神的ストレス」と決めつけられる偏見を受け続けた。国はこの差別と偏見を直ちに止め被爆体験者に謝罪すべきである.

矢ヶ﨑克馬(2024/6/19)

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矢ヶ﨑克馬 矢ヶ﨑克馬

1943年出生、長野県松本育ち。祖国復帰運動に感銘を受け「教育研究の基盤整備で協力できるかもしれない」と琉球大学に職を求めた(1974年)。専門は物性物理学。連れ合いの沖本八重美は広島原爆の「胎内被爆者」であり、「一人一人が大切にされる社会」を目指して生涯奮闘したが、「NO MORE被爆者」が原点。沖本の生き様に共鳴し2003年以来「原爆症認定集団訴訟」支援等の放射線被曝分野の調査研究に当る。著書に「放射線被曝の隠蔽と科学」(緑風出版、2021)等。

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