与那覇けい子さん詩集:立ち尽くす人

与那覇恵子

兵庫から 来たと言う
流浪の日々を終え
郷里で 静かな日々を

でも
立ち尽くすしかなかった
郷里の丘の 緑の連なりは
灰色の 鉄線の連なりに
懐かしいはずの人々からは
うちな~口が 消え
なじめなかった 日本語が
通じ合えなかった 言葉が
失望を噛みしめて
戻ったのだ
流浪の日々へ

ただ
立ち尽くすしかなかったのだろう
変わり果てた郷里に
遠くに行ってしまった
足早な人々の うしろ姿に
かみしめたものは
立ち尽くすしかない 時

「頑張ろう」
送ったメールに友はつぶやいた
「勝つまであきらめなきゃ、それゃ、負けるときは来ない」
辺野古に立つ人達の背中に
「勝つまでは あきらめない」
目前に そそり立つ
巨大な コンクリートの壁
空を刺し続ける 有刺鉄線

立ち尽くすしかない時 がある

街角には もうクリスマスソング
あなたは 何をしてきたの?
わたしは 何をしてきたのか?

強き者に破壊されていく海を見つめて
灰色に染め変えられる青を見つめて
恐怖と不条理の有刺鉄線に囲まれて

ただ
立ち尽くすしかない人達 がいる

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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