【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/9:両建構造という日本の政治の原理

秋嶋亮

自民党の国対委員長が「9月の総裁任期までの改憲は厳しい」と発言し、改憲発議が一旦見送られた格好となり、SNSでは安堵が広がっているが、僕は懐疑的に(むしろ悲観的に)見ているのだ。

なぜなら国民番号制(マイナンバー制)や安保関連法案(兵器の開発や輸出)などの成立過程を見れば分かる通り、国民の反発を招く法案を通す際には、提出→見送り→提出→見送りというループを幾度も繰り返すからだ。

こうして「ああまたか」と国民が刺激に鈍麻した頃合いを見計らい、警戒心が薄れた隙を突くことが彼らの常套手段であり、これは言わば、国民の健忘症的な性格を利用した政治戦略なのである。

ちなみに与党のパートナーである維新の代表は「自民党と組んで必ず改憲する!」、「国会の閉会後も憲法審査会を継続する!」などと息巻き、 改憲解散すら辞さないという前のめりぶりだ。

早ければ自民の総裁選が行われる9月以降に衆院の解散選挙が行われると見る向きもあるが、(統一教会や裏金問題などの不祥事が)有権者に忘却される来年の任期満了まで間を置く方が、彼らに圧倒的有利になるだろう。

このような中で、立憲民主党は改憲案の条文化作業をつっぱね、「強行するのなら全ての法案審議に応じない」と与党に啖呵を切ったが、彼らはその裏でひっそりと予算審議に応じていたのだ。

これがどういうことかと言うと、改憲案の条文化作業の拒否は、野党第一党のメンツを保つためのポーズに過ぎず、実際のところ立民と与党は緊密な協力関係にあるということだ。

ここ最近だけでも立民は、経済秘密保護法、NTT法改正、共同親権法改正、食料供給困難事態対策法、ライドシェア法を始め、明らかに国民に不利益となり人権を脅かす悪法の成立に加担しており、ブロック・パーティ(一党独裁の下で形式的に野党の看板を掲げる党)であることを自白的に示しているのだ。

だから彼らは今後の時局的な変化の中で(例えば偽旗作戦や偽装テロなどを機に、緊急事態条項の加憲が当然のような空気が醸されると)、あたかも民意を汲み上げるかのような素振りで、改憲発議をスンナリ受け入れるだろう。

ハイデガーは「真理」を現象の背後にある原理・本質と定義したが、この理説を持ち出すまでもなく、与野党が一つの権力の下で糾合される「権威主義体制」においては、与野党は改憲でも必ず一致協力するのだ。つまりこれは時代を予測する上で基礎となる「プロトコル言明(学問的に裏付けされる断言)」なのである。

「共産や、社民や、れいわなどは改憲に反対する」と反論されるかもしれない。しかし彼らのSNSや、機関誌や、国会での質疑を見ても、緊急事態条項がナチスの授権法と同定されることや、国民投票の重大な欠陥についての言及は皆無だ(組織票を持つ改憲派が絶対に勝つように設計されている件については全く触れていない)。

もっと分析的に言えば、彼らは改憲によって日本の体制が中国支配下の香港のような「リベラル・オートクラシー(民主制を建前とする独裁)」に変移することを周知しようとしないのだ。

つまり維新、国民、立民が「積極的協力」であるのに対し、彼らは「消極的協力」の立場であり、この二つが合わさり「構造的協力」を編成しており、このような陰陽的な両建構造が日本の政治の原理なのである。

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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