都知事選への違和感:石丸フィーバーとは何だったのか

市民記者:黒岩佐和子

「恥を知れ!恥を!」マイケル・ムーアは「華氏9.11」のアカデミー賞授賞式で、時の大統領ブッシュに向かって叫んだ。噓八百で戦争に突き進もうとする時の権力者に、市民が叫ぶその言葉は重い。「恥を知れ!恥を!」広島県の安芸高田市長時代の石丸氏は、議会中に病気のため居眠りをした議員に向かって叫んだ。そしてその部分を切り取りSNSに上げ、拡散させた。何の為に?これってパワハラじゃないの?その言葉はあまりにも軽く、違和感があった。

自由度が世界70位に下がった日本のマスメディアの中にいると、息苦しく「真実はどこにあるんだ!」と叫びたくなる時がある。要介護5の夫と日常を生きながら、軍備が増強され、国民を統制する法律が作られ、刻一刻と戦争の方に歩んでいく世の中に、不安と苛立ちを覚える。そして、この日本の危うさには戦前同様、マスメディアが大きな負の役割を果たしているのだ。今日私たち日本の市民は、マスメディアへの違和感を頼りに、自分で調べていかなければ真実にたどり着けず、戦争に呑み込まれてしまう時代を生きている。

東京都知事選があった。この都知事選に今までと違う違和感を感じたのは私だけだろうか?立候補者の乱立、モラル無きポスターの掲示、そして当初は自民党などが支援した小池知事と元立憲民主党の蓮舫氏の与野党対決と思われていたこの選挙、そこになぜか石丸伸二という人物が登場してきた。結果は現職小池知事が291万8015票で当選、そして数か月前まではほとんど無名だったと言ってもいい石丸伸二氏が165万8363票の2位、若者支援を訴えていた蓮舫氏は128万3262票で3位となった。いったい何があったのだろう?

選挙中、若い石丸氏は爽やかな笑顔できっぱりと「政治屋を一掃します!」「完全無所属、無党派です!」と叫んでいた。そして政策よりも多くの切り抜き動画がアップされ、拡散され再生回数は1億回を超えた。そして10代から30代の多くの若者が彼に希望を託して投票した。

しかし調べていくととんでもないことが分かってきた。石丸氏を担ぎ上げそのバックにいたのは、小田全宏氏(TOKYO自民政経塾:塾長は萩生田光一 塾長代行)・田村重信氏(パトリオットTV:統一教会 メインキャスター)・藤川晋之介氏(藤川選挙戦略研究所所長 維新の東京進出をサポート)そして週刊新潮でインタビューに答えているドトール会長鳥羽氏、鳥羽氏は安倍首相と生前かなり親交のあった人物だ。そして石丸氏に150万円の献金と5000万円の貸付を(鳥羽氏の仲間と)している。自民・統一教会・維新・親安倍派関係者、なんと政治屋を支え続けている重鎮たちが揃って石丸氏を担ぎ支援していたのだ。小田全宏氏が選対本部長、藤川氏が選対事務局長である。第一声の選挙カーの上には田村重信氏も乗っている。集まった聴衆にはどのような人たちがいたのだろうか。4月、衆院議員補欠選挙で3連敗した自民党は危機感を募らせていた。5月16日に「CLIMBERS」というイベントで石丸氏が出馬を表明したが、以前から鳥羽氏とは東京ニュービジネス協議会を通じて関係があった。そして、6月14日の都自連向けの萩生田メモには「1,共産蓮舫の革新都政を再来させてはならない」と檄文がしるされている。小池都知事は学歴詐称問題や築地や外苑をめぐる業者との癒着がささやかれていた。万が一のことがあってはと、自民党都連会長萩生田氏等自民党は、重鎮を使って石丸氏を担ぎ出し、反小池氏の票割れを狙ったのではないだろうか。小田全宏氏が選対本部長をやっているのだから、小池氏を落とそうなどとは毛頭考えていないだろう。選挙期間中、テレビに映る小池氏の余裕の笑顔の訳が、やっとわかった。爽やかな笑顔で「政治屋の一掃!」「完全無党派!」を叫んでいた石丸氏、しかしその実態は真逆のものであったのだ。そして石丸氏自身がどういう考えの持ち主かは、選挙後のテレビ出演などで知られることとなり、批判の声も上がっている。裏切られた思いの有権者も多いことだろう。

東京の10代から30代の若者の死因の第一位は「自殺」(令和4年)である。非正規労働者として働き、消費税に物価高、生活苦と先行きの見えない時代の中で、若者たちはどんな思いで石丸氏に投票したのだろうか。いやいや、エンタメ的な政治で関心を呼んだという意見もあるが、終わってみればより一層の政治不信と荒涼とした霧が立ち込めているような気がする。もちろん人それぞれ違うだろう。それでも信じて希望を託して投票し、嘘をつかれ裏切られた若者達はいるのだ。意見や政策的な違いはあってもいいのだ、しかし政治はもっと真面目に正直にやるものだ、みんなの税金を使って、人の人生や命さえ左右するのだから。マスメディアだって、もっと初めから報道すべきことを報道すべきなのだ。

今ほど社会のいや大人たちのモラルが問われている時代はないような気がする。劣化しているのだ。自分だってその中の一員だが、それでもやっぱり私は、今回の石丸氏とその黒幕たちに、そしてマスメディアに、最初のマイケル・ムーアの言葉を捧げたい、「恥を知れ!恥を!」と。

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市民記者:黒岩佐和子 市民記者:黒岩佐和子

心底戦争はゴメンダ!と思っている孫が4人いる高齢者。 生まれも育ちも東京だったのですが、畑がやりたくて8年ほど前に千葉に引っ越してきました。 しかし今は要介護5の夫とともに、探求と発見の日々を送っています。 その合間に地域で平和活動や合唱団に参加したり、団地の小さな庭でバラやハーブを育てています。 戦前にはさせない!戦争屋とは手を切り、みんなで語り合い、学び合い、つながり合って、平和を守っていきたいですね。

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