【連載】知られざる真実/2024年7月14日 (日)非常識トランプ狙撃論の流布
映画・書籍の紹介・批評メディア批評&事件検証国際政治トランプ米元大統領が狙撃された。
トランプ大統領は右耳を負傷したが、幸い、命に別状はなかった。
警戒されたことが現実化した。
私はトランプ氏が巨大資本にとって極めて「望ましくない人物」であると認識されていることを強調してきた。
「ペルソナ・ノン・グラータ」
である。
米国巨大資本のなかで最大の影響力を有するのが軍事資本。
トランプ氏は大統領時代に軍事緊張を低下させることに尽力した。
北朝鮮との和解を真剣に考えたと見られる。
しかし、北朝鮮との和解は米国軍産複合体にとっての「死」を意味する。
極東が不安定であることは米国軍産複合体の繁栄に必要不可欠な事象。
平和の構築者は彼らにとっての天敵でしかない。
北朝鮮との和解は軍産複合体によって破壊された。
2020年大統領選では、あらゆる手段を用いて、力づくでトランプ大統領を引きずり下ろした。
大統領の座を射止めたのは軍産複合体直結のバイデンだった。
しかし、そのバイデンが陥落寸前である。
高齢による衰えが鮮明であり、2025年からの4年間の大統領職を全うできると考える米国民は皆無に近い状況に転じている。
共和党指名候補であるトランプ氏の大統領選勝利確率が急激に高まった。
しかし、トランプ氏は米国を支配する巨大資本=ディープ・ステイトに服従する人物でない。
このことが、トランプ氏の命の危険を生み出している。
7月13日のトランプ氏狙撃はその証左である。
この重大事件について日本のメディアから不適切な情報発信が相次いだ。
テレビ朝日が放映した7月14日の情報番組「サンデーLIVE!」に出演した政治学者の中林美恵子氏が
「この犯人がどういう動機だったのか、どちらの陣営の人間なのか、あるいは全く関係のない人なのか、それによっても、選挙に与える影響は全く違ってくるという風に考えられます」
と発言した。
「犯人はどちらの陣営の人間なのか」
発言の意味は何なのか。
犯人がトランプ陣営の人間であったら「自作自演」になる。
中林氏発言は「事件がトランプ陣営の自作自演の可能性あり」との見解を示唆するもの。
少なくとも、その可能性があるとの意味に受け取られる。
同日朝放送のTBS『サンデーモーニング』MCを務める膳場貴子氏は、銃撃された後にトランプ氏が立ち上がり拳を突き上げたことについて、
「プラスのアピールになりかねない、という感じもしますね」、
「共和党、トランプ陣営が結束していくきっかけになるかもしれない」
と述べた。
狙撃した犯人は100メートル以上離れたビル屋上から犯行に及んだとされる。
その銃弾がトランプ氏の右耳を直撃した。
100メートル以上離れた場所から重大事態を引き起こさずに、耳だけをかすめる狙撃を実行できるスナイパーが存在すると言うのか。
2年前の7月8日に安倍首相が狙撃されたときに、メディアが
「自作自演の可能性」を示唆し、
「選挙に向けて自民党のアピールになるかも知れない」
とコメントしたら大炎上しただろう。
銃弾が数センチずれていればトランプ氏は帰らぬ人となっていた。
この事態を目前にして「どちらの陣営の犯行か」や「これで共和党のアピールになる」との発言は非常識極まる。
背後にあるのは、グローバル巨大資本がトランプ氏を敵視していることである。
ウクライナの問題についてトランプ氏は6月28日のテレビ討論で
「自分が大統領だったらウクライナ戦乱は発生していない」
「自分が大統領に選出されれば、就任前にウクライナ戦乱を収束させる」
と述べた。
発言は正鵠を射るものだが、日本のメディアはトランプ氏を一方的に批判した。
AとBの二つの見解が存在し、主張が分かれるときに、メディアが取るべき姿勢は両者の主張を公正に過不足なく取り上げること。
ところが、この対応がまったく取られていない。
日本のメディアはグローバル巨大資本の主張を垂れ流すだけの「大本営」と化している。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050