【連載】知られざる真実/2024年7月22日 (月)既成政治勢力への不満が爆発
映画・書籍の紹介・批評政治NNNと読売新聞が7月19日から21日まで行った世論調査での政党支持率調査で「支持する政党はない」が最大の54%になったと報じられた。
前回6月調査よりも7ポイント上昇。
2012年12月の自民党政権復帰以来の最高値だという。
自民党支持率は6月調査比横ばいの24%。
自民党支持は低下傾向をたどってきたが、それでも政党のなかでは最高値。
他の政党は
立憲民主 5%
維新 5%
公明 3%
共産 2%
れいわ 1%
国民 1%
社民 1%
となった。
読売系列の調査であるから著しい歪みがあることを念頭に置く必要があるが、いま総選挙を実施すれば、この調査結果に近い投票行動が示される可能性は高い。
昨年秋以来、自民党の裏金不正犯罪が明るみに出た。
政治資金規正法の根幹は政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置くために政治資金の収支を公開することにある。
その政治資金収支を自民党は意図的に、かつ組織的に隠蔽して巨大な裏金をねん出した。
裏金について適正な納税手続きを取っていなければ所得税法違反にも該当する。
自民党所属議員85名がこの犯罪行為に手を染めたことが明らかにされた。
史上空前の巨大組織犯罪である。
自民党自体が巨大犯罪組織と化していることが明らかになった。
問題が矮小化されたのは、日本の警察、検察組織が権力側の犯罪を適正に手取り締まらないからだ。
小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑を厳しく追及したつばさの党幹部は選挙の立候補者を含めて「選挙の自由妨害」の疑いで逮捕を繰り返されて東京都知事選での学歴詐称疑惑追及が封殺された。
選挙の立候補者の街頭での演説について規制をかけることには慎重であるべきだが、警視庁は東京都知事選の全期間にわたり、つばさの党幹部の身柄を拘束し続けた。
警視庁は現代版の特高警察と化している。
その一方で自民党巨大犯罪に対しては、ほとんど何もしない対応に終始した。
摘発ラインを1000万円の高額に定めても21名が検挙される必要があったが、わずか3名の立件で終止符を打つ不正対応だった。
この事件を契機に政治資金規正法改正が審議されたが、自公と維新は完全なザル法を国会に提出して制定を強行した。
維新は参議院で反対に回ったが、見え透いた芝居であると理解されている。
政治とカネの不正で最大の焦点になったのは政策活動費。
自民党では党から幹事長に年間10億円もの政治資金が寄附され、その使途が一切公開されていない。
10億円が蓄財に回ってもわからないという惨状だ。
政治資金規正法の根幹が政治資金収支の公開にあることに鑑みれば、使途不明となる政治家個人への寄附について、政党も禁止に対象に含める必要がある。
政治資金規正法第21条の2は政治家個人への寄附を禁止しているが、第2項で政党から政治家個人への寄附を例外としている。
この第2項を削除する必要がある。
そもそも、この規定は巨額の使途不明金を生み出す目的で同条文に付加されたもの。
法律に「巨大な抜け穴」を意図的に盛り込んだもの。
21条の2の2項を削除することが法改正の最低ラインだったが、自公維案はこれを葬り去った。
巨大犯罪が明るみに出ながら、最低限の法改正も行わない。
この政治姿勢に主権者の怒りが爆発した。
自民党は国政選挙だけでなく地方自治体首長選挙でも連戦連敗を続けてきた。
本来は、この状況下で政権交代の気運が一気に高まる局面だが、その空気が広がっていない。
上記調査で立憲民主党支持率が5%にとどまっている。
重要なことは「支持政党なし」が54%にも膨張していること。
日本政治刷新可否のカギを握るのが、この「支持政党なし」54%の人々である。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050