【連載】知られざる真実/2024年7月29日 (月)日本経済低迷と株価乱高下
映画・書籍の紹介・批評社会・経済国際政治ウクライナやパレスチナで戦乱が続き、日本では酷暑と水災害が国土を覆い尽くすなかでパリ五輪が開催されている。
パレスチナのみならずイスラエルやウクライナも五輪に招待されているのにロシアだけが排除されている。
平和の祭典と言いながら政治と打算の産物でしかない側面が浮かび上がる。
柔道の角田夏実さんが日本人として夏季五輪500個目のメダルを金メダルで獲得すると、岸田首相が祝福の電話をかけ、これをNHKが報道する。
五輪の政治利用そのもの。
スポーツの醍醐味を損ねる興醒めな演出。
五輪は平和の祭典、スポーツの祭典で国威発揚の場でも政治利用の場でもない。
国ごとの獲得メダル数競争は五輪精神に反するもの。
五輪に力を注ぐ前に戦争を終結することに力を注ぐべきだ。
JTB調査によると本年の夏の旅行者数は昨年比減少の見込みだという。
コロナ統制が解除されて2年目の夏。
観光が活発化しておかしくない状況だが、活発なのは外国人の訪日だけで日本国民の消費活動は振るわない。
史上空前の日本円暴落で海外旅行は高嶺の花になった。
各地は訪日観光客で溢れ返るが訪日の最大の原因は日本円暴落である。
観光業者は潤うが一般市民は過剰な訪日観光客の影響で生活に支障を来している。
岸田内閣は年初の能登半島地震後に「北陸応援割」と銘打った旅行への利益供与策を実施したが、もっとも被害を受けた能登半島の観光地は除外されたまま。
倒壊家屋は放置され、いまだに水道すら復旧していない家庭が多数存在する。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」さえ守られていない。
水族館を再開するよりも被災地住民の生活を回復させることが優先されるべきである。
酪農などの一次産業が崩壊することに対する公的支援も十分に施されているとは言えない。
こうしたなかで株式市場で株価乱高下が観察されている。
私は、昨年初に
『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社)
https://x.gd/8MnQp
本年初に
『資本主義の断末魔』(ビジネス社)
https://x.gd/xIij4
を上梓した。
昨年年初、日経平均株価は2万5000円台だったが、金融波乱を乗り越えて3万6000円に上昇するとの予測を表紙に明記した。
予測通り、日経平均株価は本年1月に3万6000円に到達した。
本年初の『資本主義の断末魔』では、日経平均株価の史上最高値更新、4万円達成を予測したが、あっさり3月に実現した。
経済金融市場分析レポートである会員制レポート
『金利・為替・株価特報』=TRIレポート
https://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
を月に2回発行して金融市場変動予測を提示しているが、このレポートでは3月以降、日経平均株価が38000円から41000円のボックス相場を軸とする変動に移行するとの予測を示してきた。
このなかで、日経平均は5月30日37617円から7月11日42426円まで1ヵ月強で4809円の急騰。
この点について7月16日発行のレポートで、
「日経平均は5月30日37617円から7月11日42426円まで1ヵ月強で4809円の急騰を演じたため、スピードに対する調整が入る
可能性を否定できない。7月中旬以降の株価調整圧力に警戒が求められる。」
と記述した。
7月30-31日に日銀政策決定会合が開かれ、ここで日銀政策の修正が決定される可能性があり、その思惑が広がるために7月後半に日本株価が下落する可能性が高いことを予測したものだった。
このことは6月25日開催のTRI政経塾でも明言した。
「日銀は政策修正すべきでない」
「日本株価は暴落する」
との主張が散見されるが、いずれも妥当でないと思われる。
日銀の最大責務は物価安定。
そのために、適切な政策修正を断行するべきである。
株価の行き過ぎたスピードでの上昇には当然のことながら自律修正が生じるが、この変化は想定の範囲内のもの。
企業集積動向から得られる主要株価指標において日本株価が理論値からかけ離れた高値を形成しているとは言えない。
冷静に金融市場変動を解析する必要がある。
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スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050