【連載】紙の爆弾

被害額は昨年から倍増! オンライン詐欺の実態と〝野放し〞の理由◉片岡亮(紙の爆弾2024年8・9月号掲載)

片岡亮

#フェイスブック #LINE #ベトナム #カンボジア #AI #ディープフェイクボイス #週刊文春の偽アルバイト募集 #ダークウェブ #マッチングアプリ利用者リストが流出

「人を騙しやすい」現代社会

 インターネットを悪用した詐欺被害の総額は昨年1年間で772億円。
前年から倍増で、全国の居酒屋の売上合計にも等しい額だ。
同じデジタル業界では、音楽や演劇などのライブ配信の市場規模にも匹敵する。

すでにインターネットは普及しているのに、ここに来て急増するのはなぜか。
少なくとも「騙す連中」と「騙される人々」が増えたことは間違いない。
それでも、これほどまでに人々が詐欺に遭う理由のひとつに、「ネットの情報を無防備に信頼している」ことが挙げられる。昨今のフェイクニュースの横行も、その一つだ。
あげく、政権すら政策への批判に対し、ネット工作員を配置して世論誘導を行なっている現実すら明らかになっている。

この状況は詐欺師にすれば好都合で、他者に自身を信用させることが手軽になった。
最も手っ取り早い手法が「社会的証明」だ。社会心理学の用語で、「自分の判断よりも“社会の多数である他人”の判断を信じ、それに従った行動をしてしまう心理のこと」などと説明される。
たとえば「著名な学者が賛同している」「多くの人がこの方法で成功」などと煽れば、人々は信じやすくなる。

ちなみに、恋愛感情を餌にした“ロマンス詐欺”の標的として、日本はアメリカに次いで二位の規模、という米メディアの調査結果がある。
日米がトップ2となった理由については、「人の意見に左右されやすいのは、社会的に孤立しやすい環境から、仲間を求める気持ちの強さと比例する」と結論付けた。被害者に高齢者が多いのも、孤独を感じやすいからだと指摘した。

実は国・地域別のネット利用者数でも日米が上位だ。加えて日本の場合、ラジオ体操のように、「みんな同じ」の教育が推奨されてきた。
人々が別々に、それぞれの運動をしてもいいはずだが、日本ではその自由を許さない。

東京・千代田区の麹町中学校ダンス部に「ヒップホップ禁止令」が出されて物議を醸したように、言葉の上では“多様性”が推される現在でも、一定の価値観からはみ出すことを許さないのが日本だ。
これが、先述の「社会的証明」をますます有利にしている。

この統一された価値観の中で、多くの人が自身を「平凡な人間」と定義するようになる。
そこで騙す側は、「私もあなたと同じように普通の人だったけど成功した」と共感を誘う。
そして「あなただけに特別な情報を教えます。チャンスは今しかない」と言って、詐欺に誘うわけだ。

こうして日本を襲っているのが、まさに「社会的証明」に弱い人々を狙った、著名人の名を騙る詐欺だ。
池上彰氏や堀江貴文氏、森永卓郎氏など、経済の見識がありそうな人々がネット広告に登場し、「これで成功した」と語る。
しかし、これら著名人たちは名前や写真を勝手に使われている。
「儲かる話を、なぜわざわざ広告にするのか?」という疑問が湧いて当然だが、多くの人々が信じてしまう。

詐欺被害者が語る手口

「私も自分の判断力のなさには情けなくなった」こう語ったのは、67歳の小山幹雄さん(仮名)。千葉市内で30年以上、文具店を経営していたが、建物の老朽化もあって4年前に廃業を決断。
建物と土地を売却したお金で少額の株式投資を始めるも、詐欺に遭って700万円を失った。

「5年前までスマホを持っていなかったんですが、店を閉めたらやることがなくなって、頭が鈍くなると思って使うようになりました。友人に勧められたのがフェイスブックとLINEで、みんなと簡単にやりとりができるので、夢中になりました。

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片岡亮 片岡亮

米商社マン、スポーツ紙記者を経てジャーナリストに。K‐1に出た元格闘家でもあり、マレーシアにも活動拠点を持つ。野良猫の保護活動も行う。

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